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通話を切って、携帯を仕舞う。
寄りかかっていた柱から身体を起こした。
「珠姫」
声をかければ素直に離れていく熱。
さすがに俺が疲れているのが分かっているらしく、押し問答を繰り広げるつもりは無かったようだ。
…ちょっとだけ、離れたことで寒さを感じたのは秘密だ。
言えばまた引っ付いてくるからな…。
宴?はもう終わりと言っていたから、部屋に移動するために絶対通る場所にある寛ぎのスペースにある竹で編まれた、これまた質のいい椅子に座って、澪さんたちを待つことにした。
「…疲れた」
部屋ではないと分かっていても、腰を落ち着けてしまえばどっとかかる疲れに椅子に身を任せてしまう。
隣にちょこんと座った珠姫がそんな俺を見ているが、煩わしいわけでもないので放っておく。
そうすれば、珠姫はだらっと椅子に身を任せた俺の頭を無言で撫で始めた。
「…」
珠姫なりの労わりなのだと思う。
いつもとは逆の行動に、フッと口元に笑みが上る。
頭をなでられて嬉しいというわけでは断じてないが、離れていた間に、珠姫も昔より人の機微を読むようになったのだと思うと何故かこみ上げるものがあったのだ。
昔はもっと欲望に忠実だったからな。
まあ、子どもなら当たり前なんだが。
「皇くん、珠姫、ここにいたのね」
頭を撫でられるままに、それなりの時間を消費していたらしい。
宴会があった大広間の方から澪さんと真さんがやってきた。
「母さんが“よろしく”と言っておいてくれって言ってました」
「…ちょっとそのよろしくが怖いなぁ…とか言ってみたり?」
「そうですか?」
「うぅ…想定外の方向へ進んでるから」
眉間に皺を寄せて唸る澪さんの真意が分からない。
ただ、愚息を頼むってことだと思うんだが、澪さんには違う風に聞こえるって事か?
…。
いや、考えるのはよそう。
これ以上の思考は疲労の素だ。
「さすがに今日は疲れました。ここのお風呂ってやっぱり凄いんでしょうね」
「だと思うよ。部屋ごとにお風呂完備だろうし、やっぱり露天だよね!」
澪さんをそのままに話を進めたら、真さんが食いついてきた。
やっぱり真さんも疲れているらしい。
お風呂に入って疲れを癒したいみたいだ。
でも、あれだけ飲んだんだから、今日の風呂はやめといたほうがいいような気もするが…。
「お風呂」
お。
珠姫の興味がお風呂に向いた。
こりゃあ、順番決めて入るしかないな。
「皆早くお風呂入りたいみたいですね。部屋に行きましょう」
「そうだね。澪、行くよ~」
真さんが、まだ唸っている澪さんの手を引いて歩き出す。
それに続こうとする俺の服の裾を引っ張って珠姫が注意を引く。
「皇ちゃん」
「ん?」
「お風呂一緒に入る」
…
……
………
疲労度MAXな俺に、前やった攻防を再現しろと?
毎度ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたらよいのですが。
さて、”攻防”とはかなり前の話です。覚えている方いらっしゃいますかね?そこまで壮大なものでも無いですが…。
慎みを持て!ってところですが、珠姫ですから(ヲイ
サクサクと更新していきたいのですが、3月はさすがに忙しい(苦)
なので、かなり更新したり間が空いたりすると思います。気長にお付き合いいただけたらと思います!!