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学校近くのコンビニから車に乗って出発した。
運転手はもちろん真さんだ。
助手席には澪さんで、後部座席に俺と珠姫という配置だった。
高速に乗り、信号のない道路をそれなりのスピードで進んでいく。
高速に乗って数分たった頃、右の肩にかかる重み。
珠姫が眠ってしまったようだった。
珠姫の寝息が聞こえた。
「珠姫、寝た?」
「はい」
前に座っているというのに、目敏く珠姫の様子に気付く澪さん。
どうして分かるんだ?
「皇くん」
「はい?」
「急にごめんね」
「…」
謝られた。
今頃謝る澪さんが分からない。
俺の母は人を驚かしたり、サプライズ系が大好きだ。
だから、実を言うと、こんなことはしょっちゅうなのだ。
…ええと、何が言いたいかというと-。
「慣れてますから、大丈夫ですよ」
そういうことだ。
そりゃあ、したいことはあった。
サッカー中継の貯めてあった録画を消化したり、だらだらと過ごしたりと。
しかし、絶対これをするんだというものはなかった。
さすがの俺もやりたいこと、やらなきゃいけないことがあれば無理だという。
過去に母相手に、きっぱり無理だと言ったこともあるしな。
なので、色々と抵抗しようとしていたが、嫌と言うほどの感情はなかったのである。
だから俺は、母と違って後々も気にしてしまいそうな澪さんにこう言う。
「貸しにしておきますよ」
俺の言葉に暗くなりかけた車内の雰囲気が明るくなる。
「了解。…貸しはちゃんと返すから何かあったら言ってね?」
「はい」
車の揺れにあわせて揺れる珠姫の身体を支えて頷いた。
「サービスエリア寄りましょうか」
「そうだね」
聞こえてきた声に瞼をあける。
どうやら珠姫につられたのか、眠ってしまっていたようだった。
「あら。皇くん起きた?」
「は、い…」
寝起きのせいか、声がかすれた。
「サービスエリア寄るわよ」
「分かりました」
「まだ時間がかかるから、軽食でも取りましょう」
言われて気付く。
かなりお腹が減っていることに。
何を食べるか考えている間に車はサービスエリアに入っていく。
珠姫を起こして寝ぼけてふらふらのところを手を引いて歩く。
真さんの視線を感じたが、無視した。
「皇くん」
「はい?」
何を食べようか簡易の食堂やお店を見回していると声をかけられる。
澪さんが手に持った封筒を俺に向かって差し出していた。
首を傾げて封筒を受け取って、中を見てみれば、結構な金額が入っており、目を見開く。
なんだこれ!
こんなもの受け取れないぞ!
慌てて返そうとすれば、首を振って拒否られた。
「澪さん、こんなものは-」
「亜紀ちゃんからよ。中に手紙入ってるって言ってたわ」
…。
母さんかよ!
いや、まあ、そっちの方がまだいいが。
母からと言われれば、受け取るしかない。
封筒の中から1枚の手紙が出てきた。
『軍資金。計画的に使うこと。追伸、お土産を忘れず買ってくること!美味しいものをよろしく!!』
我が母ながら、なんというか…。
うん。言わずが花か。
実際、助かった。
財布の中には千円数枚と少しの小銭しか入ってなかったのだ。
…少ないとか突っ込みいらないからな。
てか、予定のない日に、お金なんかそんなに持ち歩かないから。
これで悩まず買い食いできる。
きっとこれから行くであろうホテルなどの料金は澪さんたち持ちなのだ。
だからというわけではないが、ちょっとした買い物くらいは頼りたくなかった。
カツ丼の食券を買って列に並ぶ。
珠姫は天ぷらうどんだ。
カツ丼ののったトレイを手に空いた席に座る。
横に珠姫が当然のように座る。
いつものことなので、気にしない。
澪さんと真さんもそれぞれにトレイを持ってやってくる。
ピピピピ…。
真さんが俺と珠姫の前の席(澪の横)に席に座ろうとしたとき、携帯の着信音が響きわたった。
真さんがトレイをテーブルに置いて携帯を手に取る。
ディスプレーを見て、顔をしかめた。
何か問題か?




