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05






ここは桜ヶ丘高校。


少々小高い場所に建っており、校舎に続く通学路には見事な桜並木が続いている。

桜が散った後が少々大変だったりするのだが、ここでは端折っておくことにする。

桜ヶ丘高校は在籍生徒人数600人くらいの中型高校で、共学である。

生徒の自主性を重んじているが、偏差値もそれなりに高いため、学生生活を快適に過ごすためには、よい成績を保つ必要があった。

しかし、それさえ保っておけば様々な行事をさせてくれたりと融通のきく、かなりのお祭り高校である。


高知が生徒会長に相応しい学校だ。

俺的には高校選びを間違えた感がややあったりする…。

桜ヶ丘高校を受けたのはただ自宅から通うのに楽だったのが理由だ。


俺の意見は置いておいて、桜ヶ丘高校は近年とても人気があり、年々倍率が高くなりつつある。

倍率がどうして年々上がっているかに関しては知らない。

…知らないから、聞かないように!





新たな出発に相応しい音楽に合わせて、Aクラスから順次入場してくる。

クラスは学年ごとにFクラスまである。


みな一様に幼さの残る顔つきで、やや緊張気味に歩いてくる。

入場してくる新入生の顔は、皆一様にこれからの学校生活への多大なる期待と少しの不安に輝いていた。

去年の自分もこんな表情をしていたのかと思うと感慨深いものがあった。


「俺たちもこんな顔してたのかねぇ…」


新入生の顔を眺めていたから、俺は隣の様子に気付かなかった。

次々に入場してくる新1年生を眺めながらあることに気付く。

高知のことだ。


きっとこんな時は冗談で(いや、本気なのか?)女子生徒のことを話題にしているはずだ。

教師に分からないように巧みに隠れて。

なのに、奴は何も言わず、新入生の列をくいいるように見つめているのに、俺は気付いてしまった。


体育館の中が少しざわついたのはそんな時だった。


入場行進も早いもので、今は最後のFクラスが入ってこようとしている最中だ。


その前に入場したEクラスに、周囲をざわつかせるほどの生徒がいたようだ。

なんとはなしにそちらに視線をやり、俺は目を瞠った。


視線の先に、今朝見かけた少女がいたからだ。


あの時遠くから見かけたのにもかかわらず、綺麗な少女だと思った。

しかし、今はあの時よりも近い分、その綺麗さは周囲の視線を釘付けにするほどだった。

遠くて判別するには難しかった瞳はヘーゼルナッツの色合いで、瑞々しさを湛えている。

つい周囲が見入ってしまうのも分かる気がした。



ハッと我にかえり、慌てて高知を見る。


朝と同様にまたしてもその少女に魅入られており、他に目がいかなくなっているようだった。

そんな中、ざわめきを残しながらも新入生たちは全員席に着いた。



「――これより、第●●期入学式を始めます」



高らかに始まりの言葉を体育館中に響かせる教頭の声を遠くで聞きながら、俺は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

悪い予感つきで。







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