こぼれ話06
携帯話はここまでです。
「♪」
今日の真は絶好調だった。
仕事の道具を操るその手も素晴らしい。
「筒井さん、なんか機嫌いいよね?」
「そうだな」
「最近そわそわしてたり、落ち込んだり多かったから、いいことじゃないですか?」
「「確かに」」
同僚達がコソコソと話をしている。
しかし、真はそれに気付かない。
「筒井が落ち込むと、何故か機械の調子とかが一気に悪くなるからなぁ…」
「本当に…」
数週間前の事を思い出して、彼らは一様にブルリと身体を震わした。
「…このまま機嫌がいいといいな」
「ですね…」
「だね」
彼らは知らない。
真が、愛娘からのメールに一喜一憂している事を。
そして、妻に送られてきたように、自分にも写メを送るように要求して、今日待望のメールが来ることを。
約束を取り付けられ、期待でいっぱいなのだ。
そりゃあ、機嫌もうなぎ上りだ。
「ふんふ~ん♪」
真の笑顔が眩しい。
そんな時だ。
ピロリロリ~ン♪
メールの着信音が聞こえてきたのは。
真の目の輝きが先ほどよりもっと眩しくなる。
仕事道具を放り出し、急いで携帯を開くその顔には喜びしかない。
現在、夕方を通り過ぎ、夜に向かう時間。
珠姫からのメールが来ておかしくない時間だった。
「珠姫からだ!」
『やくそく』という文字と、添付のマーク。
にまにまと笑いが止まらない。
周囲に自分がどう見えてるかなんて、真は全然気にしなかった。
添付マークを押す。
「っ!!…?―っっっ!!!!!?」
喜びの表情のまま、フリーズした。
画面の中には、愛娘の大好きな人。
そう、それは構わない。
しかし、最大の問題があった。
そう、珠姫の大好きな皇紀単体しか写ってなかったからだ。
携帯にまだ慣れていない珠姫が一生懸命取ったのであろうちょっとななめった皇紀の姿。
考えれば、微笑ましい状況が浮かびそうであるが、真が求めていたのはそんなものではなかった。
「なんでだぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
真の心の叫びがあがったのはそれからすぐのことだった。
そして、その後、周囲に置かれていた機械という機械が、変な機械音を残し電源を落とすことになる。
真の同僚達が、すきっ腹を抱えて復旧作業に追われることになるのだが、それはここで語ることではない。
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