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「では、まずそれぞれの強さを見たい。乱取りをしようと思う。準備をしてくるので、用意して待っていてくれ。主将は?」

「はい。本条といいます。よろしくお願いします」


折り目正しく頭を下げる本条先輩に、赤坂さんの印象もよかったようだ。

男らしい笑みに迎えられる。

武道館の隅に寄って、その様子を見ながら、俺は横で話している高知と内山先生のほうへ耳を傾けた。


「何とかなりそうですね」

「そうだね。」


嬉しそうな内山先生に、一仕事終えたような高知。

いつの間にやら、いつもどおりの内山先生に戻ってる。


「しかし、よく赤坂さんを引っ張ってこれたな、皇?」


おっと、話を振られたか。

…内山先生までそんな尊敬した眼差しはやめて欲しい。


「はあ…まあ…お世話になった道場の先生に頼んでみたら思った以上に人脈が広くて…な」


歯切れ悪く答える。


そう威張れるものじゃないんだ。


人の力を借りまくりだからな。


それも、最近ご無沙汰してたから、思った以上に搾られて大変だった…。

こっちの仕事が一段落したら、当分小まめに通うように命令されたし…。


…やべ、落ち込むわ。

思った以上の犠牲を払わされたことに気付いた。

これはなんとしても、片畑らをしっかり矯正してもらわねば!!


心で今後の予定を立ててれば、本条先輩と話し終った赤坂さんが近づいてきた。


「宮ノ内くん、どうだい、一緒に?」

「は…いぃ?!っいいえ!遠慮しておきます、はいっ」


笑顔でとんでもないこと言われた!

引きつりながらも断る。


冗談じゃない。


正直な思いだ。

何故にこんなところで汗など流さねばならんっ!


「そうか…残念だな」

「は…はは…」


そんな残念そうな顔はやめてくれ!

高知が何か言ってきたらどうしてくれるんだ!!


「おい、皇―」

「だが、断るっ!!」

「…何もまだ言ってないんだが」

「…」


タイムリーに高知に呼ばれて、つい力強く断ってしまった。


ははは、ドンマイ☆オレ!


「ははははは…すいませんね。会長」

「…分かった。俺が悪かったからその笑顔はやめてくれ」


よし!俺は勝ったぞ!!

何か勝負したつもりも無いがな。


…うん、壊れっぷりがひどくなる前に退散したほうがよさそうだ。


約束もあるし。


「内山先生、申し訳ありませんが、今日はこれから予定がありまして」

「え…ああ!うん。今日はありがとう!!」

「…赤坂さん、これからよろしくお願いします。色々と・・・

「おう。期待に添えると思う。任せてくれ」


内山先生に暇の言葉を向ければ、なんとも可愛らしい返事。

…オレより年上の男のクセに。

そしてそれが似合うから困る。

いや、そのほややんとした空気で生徒たちを癒してくれ!


赤坂さんもニッと笑って頷いてくれた。

話はどうやらちゃんと通っているようで何よりだ。

無視された形になった高知がブツブツ言っているのを無視…したいところではあるが、思い留まる。


「高知」

「なんだよ」

「話、聞いてただろ。今日はこれから用事があるから後は頼む」

「急だな。…分かった。こっちはまかせろ」

「おお。頼もしい」

「当然。で、何の用事だ?」

「あ?ああ…珠姫の携帯を購入することになったんでな。今から携帯ショップに行くんだ」


お許しも出たことだし、早く買いに行かないと真さんが怖いからな。

今か今かと待っているそうだ。

母親いわく。


ジリジリと携帯を目の前に佇む真さん。

うわ…想像出来るから余計怖い。


「んなっ!おいっ!俺も行くぞっ」


想像でブルっていれば、先ほどの発言を翻した高知が詰め寄ってくる。


近い。

男と接近なんて冗談ではない。


ぐいっと押しやる。


「阿呆。今さっき『まかせろ』と、頼もしい返事をしたくせに、何ふざけたこと言ってやがる」

「ずりいぞ!先に用事について言ってくれれば、言わなかった!」


生徒会長様が何言ってやがるんだ…。


「ともかく一緒に―」

「断る」


一言の下に切って捨ててやる。


「人でなし!鬼!冷血漢!!」

「ほお?」


嗤ってやる。

そうすると、途端に面白いくらいに固まる。

高知をそのまま放置して、俺は内山先生と赤坂さんに頭を下げて武道館を後にしたのだった。







「怖いな~」

「そうですねぇ。でも、この会長にして、あの副会長ありですよ?」

「ああ…確かに。ぜひともまた話をしたいですね」

「ええ。指導に来てくだされば、また機会もありますよ」


俺が去った後、ほのぼの(?)と話す内山先生と赤坂さんの姿と、未練がましく武道館入り口を見やる高知の姿が、武道館の中でみられたとか。






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