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オリエンテーションから2日が経った。


今、俺は武道館の前に居る。


そう、空手部の活動場所だ。


俺の横には高知ともう1人。


高知と視線を合わせて頷きあう。

高知を先頭に、俺たちは武道館に足を踏み入れた。


練習に勤しむ空手部員たち。

オリエンテーションのおかげか、予想以上に入部希望者が入り、それなりに人数が揃っていた。

俺たちが入っていくと、武道館の中がざわつき、皆一様に練習を止める。


「高知?」


武道館に居た部員たちを代表する形で、本条先輩と菱目川先輩が寄ってきた。

今の状況が分からず戸惑っているのが分かる。

それも当たり前だ。


事前の取り次ぎなど誰にもしてもらっていないのだから。


「練習中に失礼します」


高知が頭を下げる。


…おっと、俺も下げねば。


「高知くん!宮ノ内くん!」


ここで、武道館の奥から新たな登場人物が。

顧問の内山先生だ。

笑顔で出迎えてくれる。


なんか、ほっとするのは何故だろう?


「わざわざすまないね」

「いえ。我々生徒会は、生徒たちのためにあるのですから、気にしないでください」

「でも、言わせてくれ。―ありがとう」

「…」


おっとりとした内山先生と高知の会話を聞いてたら和んでしまう。

さっさと本題に入らせてもらおう。


「内山先生、こちらが赤坂伸あかさかしんさんです」

「こんにちは」


俺の紹介と共にビシッと挨拶をする赤坂さん。

彼の名前を聞いて、本条先輩たちを含めた数人が驚いたように目を瞠る。


「こんにちは。今日はわざわざありがとうございます」

「いえ…これからよろしくお願いします」

「いやいや、それはこちらがお願いすることです!お忙しい身なのに、この度は引き受けてくださり、本当に助かりました」

「――何処までお手伝いできるか分かりませんが、精一杯務めさせていただきます」


内山先生と赤坂さんがお互いに深く頭を下げるのをオレと高知は見守り、本条先輩たちはワケが分からず困惑顔で見ていた。

2人の挨拶が終わり、赤坂さんが空手部のやつらに向き直った。

その瞳は静かだったが、何か相手を射抜くものがあった。

空手部員たちが一様に固まり、次いで姿勢を正す。


「赤坂伸だ。5年ほど前にこの空手部で主将をしていた。今は実家の道場で師範をしている。今回、縁あって君たちの指導にあたることになった。よろしく頼む」


彼の言葉に空手部員たちがざわついた。

内山先生が彼の横に並ぶ。


「この赤坂さんが主将を務めたとき、桜ヶ丘高校は全国に行き、ベスト4入りを果たした。大学に進学し、その間も多彩な戦績を残して卒業。社会人となった今、これからを期待された人物の1人だ」

「やはり…」

「すげ…」


内山先生の説明に皆が驚きに目を瞠っている横で、本条先輩が瞳を輝かせているのを発見した。

これも珍しいワンショットだ。

本条先輩のファンがいたら騒いで大変だろう。

俺は女たちのように騒ぐ気はせんがな。


「し、しかしっ!内山先生っ!!オレたちは自分たちで…」


慌てたように声をあげたのは片畑だ。

てか、懲りもせずいたのか。

それに馬鹿丸出しだ。


「今までは顧問としての私が不甲斐ないばかりに不自由をさせた。よく指導する者がいない中、頑張ってくれたね。ありがとう。しかし、やっと指導にあたってくれるという人物が見つかった今、自分たちを高めるために頑張って欲しいと思う」


…上手いな、内山先生。

横で高知も感心してる。

そして、片畑も反論する言葉も無いのか、口を閉じた。


内山先生も結構やる。

癒し系なだけじゃないってことか。

覚えておこう。







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