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片畑の指示で、空手部員が舞台の中心地に瓦を設置する。


どうやら、やはり瓦を割らないといけないようだ。


しっかりと瓦が3枚…4枚積まれている?!

…何故だ?


視線を片畑にやれば、にやりと笑われる。


…お前の歪んだ笑顔なんて見たくないんだが。

よければ永遠にその笑みは封印してくれてもいい。



「俺は、4枚割れるぜ」


ああ…そういうことですか。


…OK、理解した。


自分の力を誇示したいらしい。

脳まで筋肉で出来ているらしい。


可哀相過ぎる。



「…分かりました。――…おい?」


神妙に頷けば、舞台袖のすぐ近くに居た珠姫が。


そして、やってくれた。



俺のために積まれた4枚の瓦の上に、プラス3枚置く珠姫の姿に、俺は苦笑も出なかった。

いや、口元は多少引きつっていたと思う。



「珠姫さん?」

「ん」

「これを割れと?」

「ん」


答えが分かっていても、人は問わなきゃいけない時がある。

それが今だ。


しかし、無常にも頷き返されてしまえばそれで終わりだ。


「…そうか」


珠姫が満足したように、俺がさっき居るように提示した場所に戻っていく。


ははは…賢いぞ、珠姫…。


そのまま何もせず、そこに居てくれればよかったのに。


盛大なため息をつこうとして――やめた。



いつのまにやら硬直から復活した生徒たちは、固唾を呑んで舞台の上の俺たちを見守っている。


見守っている?


いやいや、そんな易しい視線ではない。


ちらりと時計を見れば、あと少しで空手部の時間が終わる。

他より少し長めに時間をとっておいてよかった。


前日にきた時間延長の願いをうやむやにせず、調整していたおかげだった。









無言で見守る?周囲の視線を無視して瓦の前に立つ。


珠姫が先ほどして見せたのと同じように、足を軽く開き、腰を落とす動作をする。


息を深く、深く、吸って、吐く。


何度かそれを繰り返し、瓦の一番上に手を添える。



一瞬の間。



「せいっ!!」


ドゴッ!!?


…。


……。


………。


大きな歓声。


俺はやり遂げた。


良かった。

最近、道場に行く暇がなかったので、鈍っている。

なので、全て割れるか心配だったんだ。


当初の予定よりハードルを上げられて焦ったが、何とかなって良かった。

珠姫が置いたはいいが、割れなかったでは恥ずかしすぎた。





…よかったぜ。







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