32
「じゃあまずは自己紹介からするか?」
「あら。私、みんな知ってますよ?」
「ふむ。確かに俺も篠川さんのこと知ってるよ」
「俺もです」
高知の言葉に、篠川が答える。
そうすると、高知兄弟が頷く。
と、言うことは、顔合わせしておかなきゃならないのは―。
「珠姫」
「なあに?皇ちゃん」
「高知の弟の忍だ。覚えておけよ」
「分かった」
よし、これぐらいだな。
1人納得して、さすがにお腹がすいた俺は弁当を広げることにした。
珠姫も俺に続いてお弁当の包みを開く。
「まっ、待ってくださいっ!」
…ランチタイム突入はまだらしい。
視線を向けると、いやに楽しそうな高知と何故か焦る忍。
そして珠姫の隣でお弁当を広げながら口の端を上げる篠川。
「どうした?詳しい内容については食べた後にしようかと思ってたんだが」
「そ、そうじゃなくて…」
「いや~さすが皇!期待以上の反応だ」
「素敵です。宮ノ内先輩」
「?」
ワケが分からん。
「あのっ…自分でた…筒井さんに挨拶したいのですが」
「ああ…すまん、気が利かなくて」
そういうことか。
忍は礼儀正しいやつだったようだ。
それじゃあ、あんな一方的な紹介は気にして当然だよな。
納得がいって、珠姫に声をかけた。
「珠姫」
「?」
「挨拶」
「ん。筒井珠姫です」
「!高知し、忍ですっ。同い年なので、これからよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
ペコリ
小さく珠姫が頭を下げる。
それに忍も慌てて頭を下げる。
ん?顔が赤いな。この部屋暑いか?
ああ、窓開けてないな。
「皇ちゃん」
換気をしようと席を立とうとして、袖を引かれた。
見てみれば珠姫がジッと俺を見ている。
これはあれか。
「よく出来ました」
言葉と共に頭を撫でてやった。
嬉しそうに珠姫が口元に笑みを刻む。
キチンとできたら褒める。
これが子どもを育てるコツだ。
挨拶は基本だからな。
…なんか、俺って珠姫の親みたいだな。
年齢詐称はしてないぞ!
俺は正しく、高校2年在籍の男子だ!!
「なんていうか…」
「言ってやらないでくれ…後生だから」
「…」
篠川と高知の声。
俺と珠姫を残して話が進んでいる。
意味は分からなかったが。
もうランチタイム突入してもいいよな?