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食堂で休憩している間に他の生徒会員はやってこなかった。


どれだけ仕事溜めてんだよ…。


そろそろ戻って仕事を再開させるかという話になり、席を立つ。

紙コップを燃えるごみ指定のゴミ箱に放り込み、視線を向ければ、細川たちも各々に片付けて集まってきていた。

ソッと様子を窺えば、ありがたいことに、もう先ほどの生徒会室での出来事は忘れたように珠姫を囲んで楽しそうに話している。


珠姫も細川たち3人に気に入られた様だし、一安心だ。

これからも生徒会室で会うこともあるだろうし、仲良くなっておけば、何か珠姫がやらかしたときに助けに入ってくれることだろう。


救済者は多ければ多いほうがいい。


俺的に。


それに、変に欲望持った奴らに助けられた時が厄介であるからして、無償か、害がなさそうな願いで助けてくれる奴らのほうが断然いい。


打算ですまん。


しかし、これから何があるか未来予測が出来ない(出来たら凄い!)俺にとって、大切なことなんだ。


髪の毛を3人に弄られながらも気にせず俺を待っている珠姫を見ながら、俺は思うのだった。






さすがにそろそろ戻らないとやばい。

3人を促して学食の出入り口に移動する。


4人だって?

いや、珠姫は俺が動けばついてくるからな。


出入り口で、俺たちと反対に入ってきた人物とぶつかりそうになり、横に避ける。

相手が通り過ぎるのを待っていたが、待てど暮らせど通り過ぎないので、訝しげに視線をやる。



(げ…)



視線の先には、数日前に教室に乗り込んできた上級生がいた。

名前は確か…片畑。

空手部副部長だったな。


片畑は、数人を引き連れた形でその場に立っていた。


てか、こっちが避けて待ってんだから通り過ぎろよ。


ガタイがいいことから察するに、空手部の奴らだろう。

部活の休憩に残り物のパンでも買いに来たのだろう。


憎憎しげに俺を睨む片畑。


どっぷりとため息を心の中でつきながら、軽く頭を下げて横を通り過ぎようとした。

通り過ぎる寸前、横から言葉が落ちてきた。


「いい気なもんだな。女ばっかり侍らせてよ」

「…」


反応しそうになったのを辛うじて押しとどめ、その場を無言で去る。

俺と一緒にいた3人も同様だ。

何度も言うようだが、珠姫はこんな奴らを相手にしない。

てか、視界の隅にも入れてないかもな。


後ろからは盛大な舌打ちが聞こえてきたが、それも無視して食堂を後にした。





「何あれ」

「男の僻みって嫌ね」

「間違っても~あんな男の人には侍りたくないです~」


食堂から数メートル離れたところ、女性軍の口から視界の隅から片畑が消えるまで我慢されていた言葉が次々に紡ぎだされる。

これはあれだ。

女性軍をしっかりと敵に回したらしい。


同情なんてしないがな。


「珠姫」

「なあに」

「当分1人で歩き回らないようにしとけ」

「うん」


俺を憎憎しげに見ていたあの男。

珠姫を視界に入れたときにねっとりとした視線に変えたのだ。

あの視線を見たときに、まだ珠姫を諦めてないと確信した。


ああいう輩は気をつけないと危ない。

頭の隅で赤信号が点滅しているような気がした。

これは勘だが、警戒しておくに越したことはない。


(…高知にも言っておくか)


目まぐるしく今後の展開を考えながら、生徒会室に向かう。



ソッと手に差し込まれた珠姫の手を、無意識のうちにしっかりと手に握りながら歩いた。

生徒会室に入ったときに、それを嫉妬に荒れた高知に指摘されるまで、俺は珠姫の手をしっかり握り締めるのだった。







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