02
「よっす」
人の通りもまばらな学校に続く桜並木の途中で、俺は聞きなれた声に呼び止められた。
今日は入学式しかないため、用のない生徒は休みだ。
うらやましいことだ。
ということで、人は数えられるくらいしか見受けられない。
「高知」
振り向いた先には、案の定というか、俺を生徒会に巻き込んだ張本人が、爽やかな笑顔を振りまいて立っていた。
こいつの名前は高知 奏。
今年度の生徒会長にしてかなりのワンマン…だと俺は思っている。
確実といわれていた生徒会長候補以下数名を蹴散らして、見事生徒会長になった男である。
「いや〜今日はいい天気に恵まれたものだよな〜」
爽やかに笑っている姿は、一見好青年に見える。
が、実際はかなり違うと俺は知っている。
「はよ…」
朝っぱらから無駄に体力を使う気も無かったので、無難に挨拶を返しておく。
「さてさて…桜も満開で、新しい門出にはもってこいの天気で喜ばしいこった」
俺の隣にやってきて横に並んできたので、一緒に学校に否応無しに向かう。
高知はよく喋る。
これぞ生徒会長たる能力の1つだと言わんばかりに喋る。
なので、適当に頷いてやっておけば、勝手に喋ってくれるので、ある意味助かったりする。
――たまに適当に返事しすぎて、変な事件や計画に巻き込まれるという失態を起こすこともあるが…。
一応、気を付けてはいるんだぞ!
…まぁ、それでもちょこちょこ巻き込まれたりするんだが。
「そうだな」
いつものように高知の話に相槌を打ちながら校舎へ続く道を進む。
「今年の新入生の中に、可愛い子たくさんいるといいな」
「知るか」
爽やかな笑顔を一転、含みのある笑みに変えた高知に賛同する必要性も感じず、そっけなく返す。
賛同した暁には何が起こるか予想がつくからな。
「おやおや。皇はこの重要かつ大切なことを知るかの一言で切って捨てるのか?」
「…」
始まった。
こいつは真剣そうな顔をして語りだす。
絶対に心の中で笑ったまま。
こいつはとても器用なのだ。
先生たちがこぞって騙されるほどに。
これに何度被害をこうむったか。
俺は高知の浪々とした声を右から左へと聞き流しながら、学校への道を黙々と歩くのだった。