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言い捨てて、気付けば残り一枚となった書類の整理に戻る。
それもすぐ終わり、席を立つ。
いっちゃなんだけど、今、生徒会室はめっちゃ寒い。
温度的にじゃない。
精神的に、だ。
なんていうか…うん、心に優しい場所に移動したくなった。
いい考えだ。
そうしよう!
すぐにしよう!!
「細川、立木、島岡、休憩しないか?」
真面目にやっていた女子軍に声をかける。
俺の言葉に視線をくれる彼女たち。
視線は元に戻っていたが、周囲に漂う気配は半端無い。
どもりそうになるのを何食わぬ顔と長年の努力と精神力をもってして回避しつつ、口の端を上げる。
彼女たちもきりのいいところだったのか、各々持っていたペンなどを机に置いて席を立つ。
もしかしたら、もうやってられるかといった感じだったのかもしれないが…。
先ほどの彼女たちの目を思い出しそうになって、慌てて記憶を消去する。
あれは憶えていてはいけない記憶だ。
速やかに抹消しろ、俺。
俺は今後とも、彼女たちと円滑な関係を続けて行きたいと思っているのだから。
「学食で飲み物でもどうだ?」
「そうね」
「いいですね」
「そうしましょう」
3人はにっこりと笑って同意してくれる。
3人の笑みを見ていたら、やっぱりさっきの目は…―ゲフンッ!
オレハ、ナニモ、ミテナイヨ?
「…珠姫行くぞ」
「うん」
自分の思考に蓋をして、珠姫を促して生徒会室のドアを開ける。
その間、男共に口を挟む隙を許すことはしない。
女子軍を先に出して、出る前に中を見渡す。
無言でこちらを見てくる男共に、笑みを見せる。
どういう訳か、この笑みを見せると、大抵の男共が固まる。
星埜先輩いわく、『凄味がある笑み』だと、前に言われた。
そう言った星埜先輩自体は、楽しそうに笑っていたから、そこまでこの笑みに過大評価をするつもり無い。
しかし、実際に『凄味のある笑み(?)』を向けた先の男たちが少なくとも固まるのだから、効果があるのだろう。
なので、使い勝手がなかなか良くて、ついつい習慣的に使っている代物だったりする。
まあ、使いすぎると効力もなくなりそうなので、使いどころは考えていたりするが。
人ってもんは慣れる生きものだからな。
「俺らが帰ってくるまでに、そこにあるものは終わらせとけ」
「は、はい」
同い年のはずなのに、奴らが敬語になる。
こういう反応を得た時は、笑みの効果があったのだと思うようにしている。
過去の実績?を振り返ればその通りだからだ。
「おい、皇―」
「自分の分が終わった奴は、後から来てもいい」
高知の言葉を遮って、言うだけ言ってドアを閉めた。
「誰が会長だと思ってるんだよ…」
その後、情けない声が生徒会室に響いたようだが、それは俺のあずかり知らぬことである。