01
「皇紀~そろそろ下りてきてご飯食べないと間に合わないわよ〜」
清々とした青空の広がる空の下、青い屋根が目立つ一軒家で、ある日常が始まろうとしていた。
風薫る4月。
年度始まりである。
「分かった!」
俺、宮ノ内皇紀。
今年で17歳になる(まだ誕生日が来ていないので16歳だが)高校2年生だ。
入学したばっかりの時は四苦八苦したネクタイも今は軽々と結べる。
俺は部屋の窓から空を見上げていた。
「いい天気だな…入学式にはもってこいか」
高校2年の俺には特別という日ではないのに、身だしなみになぜか力が入る。
いれたくも無いのに。
どうしてかと言うと、友人が生徒会長に1年のとき立候補して確実といわれた奴を蹴落として当選したことによって、勝手に副会長に任命させられたせいなのである。
会長以下は全て指名制だ。
さすがに副会長が、新入生の前でだらける訳にもいかず、しっかりと第一ボタンまで留めてネクタイを締めているわけであった。
「よし、完璧」
姿見でチェックを入れて出来栄えに満足し、俺は階下に降りていった。
鞄を忘れることもなく完璧だ。
「母さん、ご飯」
鞄を居間のソファーに置き、テーブルの席に着く。
待っていましたといわんばかりのタイミングで目の前に置かれる朝食の数々。
うちは父親の希望で毎朝和食。
ご飯、味噌汁、焼き魚、卵に海苔。そして漬物といった定番メニューがテーブルに並ぶ。
「いただきます」
手を合わせて挨拶。
これを言わないと母さんがうるさい。
きちんと挨拶しないで食べようとしたら、即座に朝食がなくなるだろう。
まぁ、もう昔からの習慣で忘れることは無いけれど。
「はい、どうぞ」
母さんの声を待たずして朝食にありつくのは許されているので、早々にありつく。
そんな俺の行動に被さるように母さんの応えがかえってくるのだ。
「今日は遅いのかしら?」
「今日は入学式だけだから早く帰れると思う。少しだけ生徒会の方で会議があるかもだけれど」
ずずーっと味噌汁を飲んで答える。
これといって誘われているわけではないので、いつもよりは断然早く帰れるはずだと踏んで。
「そう。もしお友達に誘われたとしても今日は断って帰ってきてね」
「なんで?」
いつもは突然誘われて遅くなっても、連絡さえすれば許してくれる母さんが今日はきっちりと念を押してくる。
「用があるから」
はっきりとした返事が返ってこなくて、余計に訳が分からず首を傾げた。
「返事は?」
にっこりと笑って母さんは返事を待っていた。
宮ノ内家では母親が一番強い。
逆らう必要性も感じなかったので、頷いた。
「分かった」
母さんは返事に満足して、流しのほうに戻っていった。
俺はただただ、首を傾げるだけだった。
後で起きる出来事も知らず。