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やはり数えてみたら11人いた。
「私たちの班は6人です」
疑問を口から出すまでもなく、篠川が教えてくれた。
篠川の言葉とともに、6人と5人に分かれる。
そういうことね。
「これが地図だ。スタートまで時間が無いから急いで確認しろ」
珠姫たちの班からは忍が俺の前に一歩出てきたので、地図諸々を渡す。
「呉圭一です。よろしくお願いします」
礼儀正しく名乗ってきた男子ーーああ、先生が褒めてた奴か。
無難によろしくと返して地図を渡した。
「時間制限のあるレクだ。時間に気を付けろ。人が多いチェックポイントは後に回すか、待つかはそれぞれ判断して、出来るだけ多くのチェックポイントを回れるようがんばってくれ」
「「はい」」
「地図と一緒に各チェックポイントの情報が載っている。参考にしてみてくれ」
「「はい!」」
いい返事だな、おい。
「……ではあちらの方に移動して班の奴らで話し合え」
「「分かりました」」
「……」
さっきから忍と呉が声が揃うせいか、その度に口を閉じてはお互いにバチバチと視線を送りあっている。
ちょっと雰囲気が剣呑な気がする。
なんだ、ライバルか?
出来れば俺の関与しないところでやってほしい。
「次が来たからどいてくれ」
残っていたやつらが駆け込み乗車のように集まってくるのを見て、忍と呉を手で追い払うように促した。
事を起こす気はなかったらしく、2人は無言で離れる。
それぞれの仲間を引き連れて移動していくーーーー?
「おい」
「ん?」
「珠姫も行け」
「んー」
離れていく忍たちを何故か俺は珠姫と見送っているという図。
おかしいだろ。
しかし、次々と地図をもらいにくるやつらを捌くために珠姫を自分で剥がしている時間がなかった。
俺が地図を配るために腕を動かせば、邪魔だと思ったのか手を離してはくれた。
それだけだったら褒めてやってもいい気遣いの仕方だった。
が、珠姫は離れていったわけではなかった。
手を離したから篠川たちのところに行くかと思えば、俺の腰に手を回して抱きついて来たのだ。
ちょっとどころではなく状況は悪化したと言っていい。
地図をもらいに来たやつらが俺と珠姫を見てギョッとして固まり、こちらを凝視していくのだ。
女子の中には頬を染めつつ凝視してくるやつもいて、居心地は最悪だ。
仕事が優先と心の中で唱えながら機械的に地図を配る。
最後尾が見えてきて、不覚にもホッとしてしまった。
「ーー宮ノ内先輩」
背後から知った声が俺を呼んだ。
「篠川……」
珠姫を腰に引っ付けたまま振り返る。
案の定篠川がいた。
そして、他多数の視線も俺をつらぬいていた。
口の端がひきつりそうになった。
「そろそろ珠姫を返していただいても?」
俺が引き留めてるんじゃねぇよっっ!!