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こぼれ話11




宿泊訓練初日が無事終わり、桜ヶ丘高校の1年生はそれぞれにやっと訪れた自由時間を過ごしていた。

それは珠姫も例外ではなく、お風呂に入ってさっぱりしたのち、割り当てられた部屋で携帯をいじっていた。


「珠姫、帰ってたんだ。宮ノ内先輩と話せた?」


飲み物を買いに出ていたのか、飲み物を持った綾香(篠川)は部屋の中にいる珠姫を発見して近付き、横に座り込んだ。


「ん。髪の毛乾かせって言われた」


珠姫の言葉に綾香は破顔する。

ブレない皇紀の過保護っぷりにだ。


「そう。……乾かしてあげようか?」


ちょっとした思い付きで提案すれば、黙って頷く珠姫に綾香は目を瞠った。

しかしすぐに我に返って、慌てて綾香は珠姫を連れて洗面所に移動した。


こんな機会は早々ないと綾香は思ったのだ。

珠姫の長い髪は綺麗で、ずっと触ってみたいと思っていたのでこれ幸いと動いたのである。


珠姫を洗面台の前に立たせて備え付けのドライヤーを用意する。

綾香は自分の髪を乾かす時より数倍丁重に乾かしていく。

珠姫のスベスベな髪の毛を堪能しながら。




「はい、出来上がり。どう?気持ちよかった?」


つい気になって感想を聞いた綾香は悪くはなかったが、相手は珠姫で、望んだ言葉は残念ながらかえってこなかった。


「ありがとう」


ただ、皇紀の教育(?)のおかげか、ちゃんとお礼の言葉をもらい、綾香はにしゃっと笑う。

才女と呼ばれることの多い綾香にしては珍しい笑みだったのだが、幸いにもそれを見たのは反応の薄い珠姫だけだった。


「えへへ…よければ明日も乾かすわ。そういえば、さっきは何を見てたの?」


飲料を買って帰って来た時に珠姫が携帯をジッと見ていたのを今更ながらに思い出し、綾香は問いかけた。

皇紀は滅多なことではメールを珠姫に送ることはしない。

それを綾香は知っていた。


それに、珠姫は先ほど皇紀に電話してたはずなので、余計に皇紀からのメールという線は消えるはず。


綾香の問いかけに、珠姫は携帯を操作し、画面を見せてきた。

向けられる画面を見て綾香は場所も忘れて声を上げた。


そうすれば、必然的に同室のクラスメイトたちが顔を覗かせる。

だが、綾香にはそれをさらりと流せる状態ではなくて、無言で珠姫の見せてくれた携帯画面を凝視することしかできなかった。

そんな綾香の状態を見てワラワラとよってきた同室の女の子たちも、珠姫の携帯画面を目にして固まったあと、喜声を上げた。


そう、歓喜の声だった。


珠姫の携帯画面には、皇紀が写っていたのである。


それもお風呂上がりに喉を潤しているもので、まだ乾かしてなかった髪がしっとりと濡れていて顔にはりついていた。

その姿はそこはかとなく色気が漂って、少々刺激の強いものだった。


すぐ後ろで上がった自分以外の声に、綾香は我に返る。


「た、珠姫、そ、それはなっ…」


動揺を隠せず途切れ途切れに問いただせば、珠姫は何でもないことのように口を開いた。


「皇ちゃんのお母さんが送ってくれた」

「!!?」


綾香は絶句した。










結局その後は、同室者である子達が学校外の皇紀の姿に興奮し、珠姫に詰め寄り色々と話が盛り上がった。

皇紀の画像は最初に見せられたもの以外にもあり、何枚かは珠姫が公開したものだから、すごい騒ぎになった。

しかし、そんな中でも画像を送って欲しいと切望する彼女たちに、珠姫はきっぱりと断りを伝え、鉄壁の防御を見せたとかなんとか。


こうして宿泊訓練1日目は予想以上に賑やかなまま幕を閉じたのであった。





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