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自室生活172日目【旅行2日目】

 朝10時、目が醒めた。おはよう、俺。今日はメシ食わないとな。『マジ腹が減った。』と心の中で呟いた。

 俺は布団からもぞもぞと這い出ようとしたがうまく力が入らない。なんとか布団から這い出ると、丁寧に布団をたたんでから、服を脱ぎカゴの中に入れようとしたが、パジャマではなく服を着たままであったことに気が付き、もう一度服を着用した。「臭ぇ」と思わず呟いた。

 カーテンを開け、窓を開けて大きく深呼吸すると、『はぁ』とため息をついて、静かに窓を閉め、カーテンも閉めた。

 押し入れを改築して作ったトイレに入り、排泄を行う。トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出た。

 テレビの前に座り、リモコンのスイッチを押す。画面にビデオ1と真っ黒な映像が映るのを確認すると、テレビ台の下に置いてあるテレビゲームのスイッチをONにした。

 画面にゲームのタイトルが、表示されたところで、ドアの方に目をやるが、もちろんの如く何も無い。

 『はあぁぁ~~!!!』と大きなため息が出た。ゲームをコンティニューに合わせ、スタートボタンを押した。

 ゲームが始まると、空腹で全く集中出来ない。腹の虫が『ぐうぅ。ぐうぅ~。』と大きな音を発てて鳴き止まない。空腹と旅行に行ったジジイとババアに怒りを感じ、イライラしていたが、余計に腹が減ると思いゲームへ気持ちを移行した。ゲームに集中出来ないので、止めようかと思ったが、今はこれをしておかないといけないような気がして、1時間程ゲームを行った。

 腹の減りが、激しい為キッチンまで行けば何か食べるものがあるはずだと思いドアノブに手をかけるが、ノブを回すことが出来ない。頭の中では腹が減ったから食べ物を欲しているのに、身体は部屋の外に出ようとはしなかった。

 ドアノブを握り締めたまま、立ち尽くしていたが、このままでは埒があかないと、気合いを入れてノブを回そうとしたが、昨日の吐き気を思い出して、思わずノブから手を離した。

 仕方が無いので洗面台まで行き、空腹感が無くなるまで水をがぶ飲みする。以外と少なく、コップに六杯飲んだところで満腹になり、腹の虫も鳴くのを止めた。

 これなら『腹が減ったら、水を飲めば空腹を抑えられる』と不条理な考えをし、たたんだ布団に頭を乗せて横になった。

 昼時になると、既に腹の虫は鳴り響いていた。耳でもしっかり聞き取れる程の音で。また、床に横たわったままじっとしていると、下の階から何か音や声が聞こえてきたような気がした。

 『やっぱりあのババアァ!実はいやがるんだな!くそっ!』と思い、手足をバタバタさせドンドンと音を出したが、何の音沙汰も無い。『とことん無視する気だな。』と思うと、苛立ちというより怒りが沸々と込み上げてきた。

 ふっとテレビの方を見ると、ゲームを点けっぱなしだったことに気が付き、水をコップに二杯飲んでくると、少しゲームに向き合い気持ちを落ち着かせてから、ゲームのデータをセーブし、ゲームの電源をOFFにした。テレビのリモコンのスイッチを押してテレビを消すと、腹の虫の音を聞きながら、ババアへの小言をぶつぶつと言った後、パソコンの前に移動し、パソコンの電源をONにした。

 ぼ~とパソコンの画面を眺めていると、メイン画面になった。

 メイン画面に現れた『友達』と書かれたBOXをダブルクリックし、トイレに行き、トイレに入って15分経過したのを確認しトイレを出ると、机に戻りじっとパソコンのモニターを眺めた。

 モニターの中では、飽きもせず同じように一人の女性がじっとテレビを見ている。テレビがチカチカと明るくなったり暗くなったりを繰り返しているだけなので、やはり何を見ているかまでは分からない。女性はテレビを見ながら、スナック菓子を食べたり、飲み物を飲んだりしている。女性が飲み食いしていると空腹感が込み上げてきて、モニターの向こうの女性に怒りを覚えた。女性は、いつもと変わらず時折立ち上がると、暫くして手をタオルで拭きながら戻ってくる。

 そんな光景を、ただただ眺めていた。女性が、テレビを消して立ち上がると、もう一度床に耳を当てて下の階の音を聞いてみた。昨日と同じで何も聞こえない。『くそっ!何なんだよ!ババア!居んのか居ねぇのかはっきりしろよ!』と苛立ちが更にヒートアップする。

 『あ~、水だけで生きられんのか俺』と自問自答し、ドアへ近付いた。

 ノブに手を持っていこうとして吐き気が出るのを思い出し、身体の動きが止まる。しかし腹は減っているし、身体も汗臭い。空腹が苦しみに変わり、汗臭さに嫌悪感を感じ、ノブに手をかけたが、呼吸が荒くなり、鼓動が激しく高鳴り、吐き気をもよおしてきたので、『今日は水でなんとかなる。身体はティッシュで拭けばいい』と自分に言い聞かせドアから離れた。

 パソコンの前に座り、モニターを見ると、既に女性は濡れた髪をドライアーで乾かしていた。その後、バスタオルを取ると、全裸の身体に下着を着け、パジャマを着用し始めた。

 『くそっ!テメェだけ気持ち良さそうにしやがって!』と、またモニターの向こうの女性に無性に腹がたち、女性が全てのパジャマを着用する前に『友達』のBOXを閉じると、パソコンをシャットダウンし、パソコンの画面が消え、機械音がしなくなるのを確認してから、テレビの前に移動した。


 テレビを点ける前に、ドアの方を確認する。当たり前だがやはり何もない。

 仕方が無いのでトイレに行き、トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出ると、とりあえず着替えだけでも行おうと服を脱いだが、『だ・か・ら…着替えも無いんだよ!』と自己嫌悪し、もう一度今脱いだ服を着用しようとしたが、身体を拭いておこうと、洗面台まで行きティッシュを水で濡らすと拭けるところだけ念入りに拭こうとした。しかし、身体にティッシュの粉が纏わり付き気持ちが悪かったので、軽く拭くだけにした。

 汗臭い服をもう一度着用すると、『はぁ~』と、大きくため息をついてテレビの前に座り、リモコンのスイッチを押した。テレビにビデオ1と真っ黒な映像が映るのを確認してから、テレビ台の下のゲームのスイッチをONにした。

 ゲームのタイトルが画面に表示されると、コンティニューにカーソールを合わせ、スタートボタンを押す。ゲームが始まると、部屋の明かりを消し、ストーリーを進めるでもなく、同じフィールドで戦闘を繰り返す。今日は水のお陰であまり空腹を感じ無かったので、2時間程ゲームに集中し、データをセーブする。

 ゲームのスイッチをOFFにし、リモコンのスイッチを押してテレビを消すと、コントローラーをテレビ台の下に直し、布団を敷く。敷布団にシワが出来ないようにのばすと、トイレに行き、トイレに入って20分経過したのを確認してから、洗面台で歯を磨く。右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぐ。袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認する。

 何か臭いような気がして、もう一度右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぎ、袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認する。やはり何か臭いような気がしたが、すぐに自分の体臭であることに気が付いた。『俺って学習能力ねぇな』と少し落ち込んだ。

 コップで水を五杯飲み、空腹感が紛れたところで、窓際に行きカーテンを開け、窓を開けると、大きく深呼吸をして、「おやすみなさい」と空に呟くと、暫くぼ~っと空を眺め、窓を閉めて、カーテンを閉めて布団に入る。

 目を閉じ、羊が一匹、羊が二匹と眠ってしまうまでひたすら数えた。

 羊を七千二百四十六匹まで数えたのは覚えているが、その後は寝てしまったらしく覚えていない。そして今日の一日が終わりを告げた。


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