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自室生活170日目

 朝10時、目が醒めた。おはよう、俺。今日も一日頑張ろう。『それにしても、腹が減った』と心の中で呟いた。

 俺は布団からもぞもぞと這い出ると、丁寧に布団をたたんでから、服に着替えて、着ていたパジャマをドアの傍のカゴの中に丁寧にたたんで入れた。

 カーテンを開け、窓を開けて大きく深呼吸すると、静かに窓を閉め、カーテンも閉めた。

 押し入れを改築して作ったトイレに入り、排泄を行う。トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出た。

 テレビの前に座り、リモコンのスイッチを押す。画面にビデオ1と真っ黒な映像が映るのを確認すると、テレビ台の下に置いてあるテレビゲームのスイッチをONにした。

 画面にゲームのタイトルが、表示されたところで、ドアの方に目をやると、パジャマを入れたカゴが無くなって、パン皿に乗ったトーストにハムが一枚乗せてあり、豪勢なサラダとコーヒーが添えられて四角いお盆の上に置いてあった。

 『ババア、分かってんじゃねぇか』と呟いて、ゲームをコンティニューに合わせ、スタートボタンを押すと、お盆を手元へ引き寄せ、トーストと、牛乳と交互に口に運び、サラダをゆっくり味わった。

 右手のみでゲームの操作を行いながら朝食を平らげると、お皿とコップを丁寧にティッシュで拭き、ティッシュをサランラップで包むとお盆の上に置き、お盆をドアの傍に戻しゲームに集中した。


 昼時になっても、何の音も聞こえないので、ゲームの手を止めドアの方を見ると、朝食のお盆がそのまま置いてあり、昼食は置いていなかった。『ババアァ!!』と腹がたち、文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、部屋から出るのが面倒臭いので、一食位抜いても死ぬ事はないだろうと今日も考え、気を取り直しテレビの前に戻った。

 ゲームのデータをセーブし、ゲームの電源をOFFにして、テレビのリモコンのスイッチを押してテレビを消すと、食事が無いので少しの間ぼ~とした後、パソコンの前に移動し、パソコンの電源をONにした。

 ぼ~とパソコンの画面を眺めていると、メイン画面になった。

 メイン画面に現れた『友達』と書かれたBOXをダブルクリックし、トイレに行き、トイレに入って15分経過したのを確認しトイレを出ると、机に戻りじっとパソコンのモニターを眺めた。

 モニターの中では、毎日同じように一人の女性がじっとテレビを見ている。テレビがチカチカと明るくなったり暗くなったりを繰り返しているだけなので、やはり何を見ているかまでは分からない。女性はテレビを見ながら、スナック菓子を食べたり、飲み物を飲んだりしている。時折立ち上がると、暫くして手をタオルで拭きながら戻ってくる。

 そんな光景を、ただただ眺めていた。女性が、テレビを消して立ち上がると、ドアの方を見る。何もない。いや、紙が一枚置いてあった。

 【守へ、お父さんとお母さんは、今晩から旅行に行ってきます。お父さんが休みをたくさん貰えたので、一週間程帰りません。】と、適当な文字で書いてあった。

 「じゃあ、俺のメシはどうすんだ!こら!クソババア!クソジジイ!」苛立ちのあまり思わず声が出た。が、今日は部屋から出るのも面倒なので、しょうがないと心の中で何度も唱えパソコンの所に戻った。

 『朝から何も食ってねぇ。腹減った。』と思いながら、部屋の中を見渡すも、食べれるような物は一つも無かった。

 パソコンの前に座り、モニターをまた見始めると、暫くぼ~としてから、女性が身体にバスタオルを巻きテレビの前に歩いて来た。濡れた髪をドライアーで乾かし、バスタオルを取ると、全裸の身体に下着を着け、パジャマを着用した。

 そこまで見て、『友達』のBOXを閉じると、パソコンをシャットダウンし、パソコンの画面が消え、機械音がしなくなるのを確認してから、テレビの前に移動した。


 テレビを点ける前に、ドアの方を確認する。当たり前だが何もない。

 仕方が無いのでトイレに行き、トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出ると、ドアの傍まで行き、風呂に行こうか考えた。風呂場までは部屋を出て、階段を降りたらリビングの横を素通りし、突き当たりまで行かないといけない。

 『一日くらい身体を洗わなくてもいいか』と考え、ドアから離れた。とりあえず、着替えだけでも行おうと服を脱いだが、『そういえば着替えも無いんだった』と思い、もう一度今脱いだ服を着用した。

 『はぁ~』と、大きくため息をついてテレビの前に座り、リモコンのスイッチを押した。テレビにビデオ1と真っ黒な映像が映るのを確認してから、テレビ台の下のゲームのスイッチをONにした。

 ゲームのタイトルが画面に表示されると、コンティニューにカーソールを合わせ、スタートボタンを押す。ゲームが始まると、部屋の明かりを消し、ストーリーを進めるでもなく、同じフィールドで戦闘を繰り返す。今日は時間が余っているので、3時間程ゲームに集中し、データをセーブする。

 ゲームのスイッチをOFFにし、リモコンのスイッチを押してテレビを消すと、コントローラーをテレビ台の下に直し、布団を敷く。敷布団にシワが出来ないようにのばすと、トイレに行き、トイレに入って20分経過したのを確認してから、洗面台で歯を磨く。右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぐ。袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認をしてから、窓際に行きカーテンを開け、窓を開けると、大きく深呼吸をして、「おやすみなさい」と空に呟くと、窓を閉め、カーテンを閉めて布団に入る。

 目を閉じ、羊が一匹、羊が二匹と眠ってしまうまでひたすら数えて、今日の一日が終わりを告げた。


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