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告白(193日目)

 朝6ピピピピ《ピピピピ》アラームの鳴る音が聞こえる。『朝だ! おはよう、俺! プチデートかぁ……。今日も忙しくなるぞ!』俺は布団から出ると、目覚まし時計を止め、丁寧に布団をたたんだ。

 カーテンを開け、窓を開けて大きく深呼吸すると、静かに窓を閉め、カーテンも閉めた。

 押し入れを改築して作ったトイレに入り、排泄を行う。トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出た。トイレから出ると洗面所で髭を剃り、歯を磨く。右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぐ。袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認をしてからキッチンへと向かった。

 『朝メシは……』と思ったが、昨日の夕食の残りが冷蔵庫の中にあったので、とりあえず米だけ炊く事にした。米を磨ぎ炊飯器にセットすると、『今日もメシが出来るまでに掃除でもするか!』と腕まくりをして、まずはトイレ掃除を行う事にした。自室のトイレから順番に便器を磨き、便座や床を雑巾で拭いていく。自室のトイレが終わると、次は2階のトイレに取り掛かる。『昨日、結局トイレには行かなかったな』と思いつつも、2階のトイレも綺麗に磨き上げた。最後に1階のトイレを念入りに掃除する。『今日は長時間家に居る事になる。トイレ使う可能性高くなるな』と思いながら、自分で納得する程度にトイレ内を掃除した。

 そしてそのまま床掃除に取り掛かった。これまた先程使った雑巾を風呂場で石鹸を使って綺麗に洗うと、よく絞ってから2階の廊下や部屋の畳の上を隈なく拭いていく。昨日の掃除もあってか、埃の塊が雑巾に纏わり付くのが少なくなっている。それでも、何度も風呂場で濯いでは床を拭くを繰り返した。『ヤッパ、掃除機欲しいなぁ。あったら便利なんだろうなぁ』と思わず考えてしまったが、今無い物に想いを馳せても仕方がないので『集中。集中』と床拭き掃除を継続した。2階部分が終わると、今度は1階に移動。玄関から廊下、キッチンの床に至るまで拭いていく。此処でもやはり、少しは埃が雑巾に纏わり付くので、雑巾を何度も濯ぎながら、隅々まで丁寧に拭き上げていった。床掃除が終わる頃には既にメシは炊け、炊飯器は保温モードに切り替わっていた。

 雑巾を風呂場で丁寧に洗い、ベランダに干しに行くと、そのまままた風呂場に行き、今度は手を念入りに洗いキッチンへと向かった。『じゃあメシにすっか』と昨日の残りなオードブルを電子レンジにセットする。温めている間に茶碗を取り出し、炊けたメシを入れるとテーブルの上に箸と一緒に置く。メシは今日も茶碗の中でキラキラと光を放ち、それはそれは旨そうに見えた。温まったオードブルをテーブルに置くと、きちんと椅子に座り、両手を合わせてから「いただきます」と小声で言ってから、一口ずつしっかり咀嚼して食べ始めた。掃除という一仕事を終え、炊きたてのメシという事もあってか、かなり旨く感じた。オードブルも昨日、かなり味見をしたおかげか、一人で食べても美味かった。朝メシを食べ終えると「ごちそうさまでした」と両手を合わせて呟くと、炊飯器の中に残ったメシを別の容器に入れ冷蔵庫の中に残ったオードブルと共に片付ける。そのまま、茶碗や炊飯器、箸を洗って水気を切った後、それぞれの収納場所へと片付けた。気が付くと、今日は昨日よりも早く片付いたのか、もうすぐ8時30分になろうとしていた。

 買い物は中川先輩が来てから一緒に行くので、特にする事も無くなり部屋へ戻った。『久しぶりにゲームでも……』と思ったが、RPGは何をしていたのか分からなくなり、最初からやり直すのも億劫だったので、アクションゲームにソフトを交換した。ゲームを始めると『知ってるし……』と、退屈を隠しきれないでいた。『クソッ! ババア! 新しいソフトでも買ってきやがれ!』なんだか無性に腹が立ち、暫く音沙汰のない母親に心の中で悪態をついた。とりあえず、面白くも感じないゲームを続けていたが、時間が11時30分を回ったところでゲームを止め、昼メシを食べる事にした。

 キッチンへ降りると、冷蔵庫の中からオードブルと御飯を取り出し、レンジで温める。温まったメシをテーブルに置いて、箸を持って来ると、椅子に座って「いただきます」と両手を合わせて小声で呟いてから、一口一口よく噛んで味わって食べた。もう残しても仕方ないので、全部残さず食べた。食べ終えると食器を丁寧に洗ってカゴの中に入れた。『俺もコーヒー飲んでみようかな』と思い、ヤカンに湯を沸かす。マグカップの中にコーヒーと粉末クリーム、砂糖を入れ沸きたてのお湯を注いだ。コーヒーの薫りが辺り一面に広がる。コーヒーが、程よく冷めるまで薫りを堪能し、コーヒーを一口ずつ味わって飲んだ。飲み終えてから「ふぅ」と一息つくと、マグカップも丁寧に洗い、先程の食器と共に水気をしっかり切ってから片付けた。


 暫くくつろぎモードでボ〜とする。『あと少しで1時だな』と思っていると《ピーン・ポーン》とチャイムが鳴った。急いで玄関まで行き、扉を開けると「ちょっと待ってて!」と言った後、慌てて部屋へ戻り、財布を手に取ると、また慌てて玄関まで走っていった。「お待たせしました」と玄関を出て、鍵をかけると中川先輩のもとに行く。「じゃあ行く?」と言われ、「行きましょうか」と二人で歩いてスーパーまで行った。中川先輩がいたけど、いつもと変わらず先ずは店内をぐるっと一周する。中川先輩は何故何も買わないのかと不思議がっていたけれど、先ずは選んでからと伝えると、納得したのかしていないのか分からない表情を見せた。二周目に入り、安いと思われる食材や気になる食材をカゴの中に入れていく。その度に「コレで何作るの?」と聞いてくるが、まだ作る物も考えていなかったので「決まってません」とばかり答えていた。献立が決まっていないのに、食材をカゴに入れる俺を中川先輩は不思議そうに眺めていた。会計を済ませて、袋に買った物を入れる。そして家までまた二人で歩いて帰ってきた。中川先輩が袋を全て持とうとするので、それには引け目を感じ半分ずつ持って帰った。

 家に着くと、とりあえず中川先輩をキッチンに残し、財布を部屋へ置きに行く。そしてキッチンへ戻ると、レシピ本を開いて、今日のメニューを考えた。「ねぇ。いつもこんな風に適当に買ってきて、それから作る物考えるの?」と中川先輩が不思議そうに尋ねるので、「予め買う物決めて行っても、高かったら買わないから」と答えておいた。「ふ~ん」と中川先輩は答えていたが、余り納得はいっていないようだった。今日のレシピが決まると早速調理に取り掛かった。本の中の材料と違った食材でも気にする事なくレシピ通りに作っていく。中川先輩にも調理を手伝ってもらい、話をしながら、笑いながら、楽しく料理を作っていった。煮込みの待ち時間を使って、不要の調理器具を洗っている間、中川先輩に吹きこぼれがないかを見ていてもらい、昨日と同じくオードブル風に盛り付けている間に、調理器具を洗ってもらう。中川先輩は普段料理をしない為か、調理器具を洗うだけでもぎこちなかったが、「お料理って大変だけど、楽しいね」って言われて『おっしゃ!』と心の中でガッツポーズを決めていた。

 全ての調理を済ませ、調理器具の片付けも終わらせてから、昨日と同じ席に着いた。俺が両手を合わせて「いただきます」と小声で言っているのを見て、中川先輩も同じように両手を合わせて「いただきます」と小声で言ってから食べ始めた。「あっ! コレ美味しい!」と自分で作った料理を褒めながら中川先輩は食事を食べる。時々、俺と目が合って気まずそうに「へへぇっ」と笑うとまた食べ始める。そんな事を繰り返して晩メシを食った。食後には、やはり昨日と同じくコーヒーを出す。昨日と違うのは、一緒に俺も飲む事くらいだ。残った料理を一つの皿に入れて冷蔵庫に片付けると、使用した食器を丁寧に洗っていく。気が付くと、中川先輩が隣で洗い終わった食器の水気を拭き取り、テーブルの上に重ねて置いていってくれていた。食器を全て所定の位置に片付けると、テーブルに着き、コーヒーを飲む。その時俺は「なぁ! 晶子……。あのさ、つ、つ、付き合って……、くれないかなぁ……」とボソッと口走っていた。中川先輩は突然の出来事に呆然としていたが、暫くして顔を真っ赤に染めながら「うん。いいよ」と答えた。『嘘! マジで! マジかよ!』と本当なら小躍りしたい気分を落ち着けながら、「じゃあ、これからもよろしくお願いします」と右手を差し出した。中川先輩も「こちらこそ、よろしくお願いね」と、その手を握り返してくれた。その後なんだか気まずい雰囲気になった為、コーヒーをもう一杯おかわりし、二人で飲んだ後、マグカップを洗ってから玄関先まで送った。「明日、また会社の前で待ってるから!」と中川先輩もとい晶子は明るく言ってきた。「明日も美味いメシ作ろうな!」と言うと、笑顔で手を振りながら帰っていった。


 家に入ると、なんだか夢を見ているような気持ちになり、頬をつねってみたり、叩いてみたりした。『痛ぇ!』と思いながらも、顔は絶えず笑い続けていた。とりあえず風呂に入ろうと風呂場へ行き湯舟に湯を入れる。そして服を脱ぐと洗濯機の中に放り込み、洗剤を入れてからスイッチをONにした。『……っておい! 着替え持ってきてねぇよ! タオルもねぇし! ババア! タオル!』と心の中でパニクりながら、全裸でベランダまで行くと、外から見えないようにコソッと服とタオル類を取り込むと、また風呂場へ戻った。『ふう! 浮かれまくって頭おかしくなってんな』と思いながら風呂へ入ろうとすると、風呂場の中からザバザバと音がする。『まさか!』と思って風呂場へ飛び込むと、予想通り湯舟の湯は満タンになり、お湯がどんどん零れていた。『ぅわあぁぁ! 勿体ねぇ!』と慌ててお湯を止めた。今日はシャワーの使用を禁止し、湯舟のお湯を洗面器で掬い取りながら風呂に入った。湯舟に入ってボ〜とする。『晶子……か……。マジで付き合ってくれんのか? 夢みたいだ。初めて彼女出来た! とりあえず、明日からメシは俺の家で食うだろ……。休みの日には映画とか、遊園地とか行かねぇといけねぇのか? よくある場面で海辺の公園とか? 水族館に……、動物園だろ……。正月は一緒に初詣に行って……、クリスマスは……。あ~! 分かんねぇ!』と考えていると、『ぅう! 気持ち悪ぃ! のぼせたし……』と這うように風呂場から出て、下着だけ着用するとキッチンへ行き、水を少し多い目に飲んだ。洗濯機が止まる音が聞こえたが、頭がクラクラするので、暫くキッチンの床に横たわったまま時間が過ぎるのを待った。少しマシになってから、洗濯機の中を取り出すと、ベランダへ干しに行きそのまま部屋へと戻った。

 部屋に入るとまた、ゴロンと横になった。『あ〜、完全にのぼせてる。テンパり過ぎだ。俺のバカ!』と思いながら、頭が正常に戻るのを待った。暫くそのままボ〜としていたが、このまま寝てしまった方が良いような気がした為、ゆっくりと起き上がると、敷布団にシワが出来ないように布団を敷き、トイレに行って、トイレに入って20分経過したのを確認してから、洗面台で歯を磨く。右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぐ。袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認をしてから、フラフラと窓際に行きカーテンを開け、窓を開けると、大きく深呼吸をして、「おやすみなさい」と空に呟くと、窓を閉め、カーテンを閉めて布団に入る。

 目を閉じ、羊が一匹、羊が二匹と眠ってしまうまでひたすら数えて、今日の一日が終わりを告げた。


 また明日から仕事だ! あ〜ぁ、嫌だな。あの電話番。……明日は意味不明な電話が鳴りませんように!!



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