表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/31

孤独3~そして…(189日目)

 朝6ピピピピ《ピピピピ》アラームの鳴る音が聞こえる。『はぁぁぁ。もう朝かぁ』深いため息と同時に目覚まし時計を探して枕元を探る。俺は布団からもぞもぞと這い出し、目覚まし時計を止めると、丁寧に布団をたたんだ。

 カーテンを開け、窓を開けて大きく深呼吸すると、静かに窓を閉め、カーテンも閉めた。

 押し入れを改築して作ったトイレに入り、排泄を行う。トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出た。トイレから出ると洗面所で髭を剃り、歯を磨く。右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぐ。袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認をしてから、スーツに着替えた。

 朝メシを食べにキッチンへ行く。今日も、料理を朝から作るのは面倒だったので、昨日の残り御飯を電子レンジで温めて食べた。

 何も特に持ち物は無いので、ズボンのポケットの中に財布が入っているか確認すると、誰もいない我が家に向かって「行ってきます」と言い、仕事に向かった。

 職場まで歩いて来たが、始業30分前に到着。部屋に入ると既に社長が立っており、入室と同時に「おはよう! やっぱり真面目だね」と声を掛けられた。すぐに「おはようございます!」と一礼すると、社長はツカツカと近付いて来て「はい、コレ」と、転送用携帯電話を手渡すとそのまま部屋を出て行った。とりあえず、椅子に腰掛けると始業時間まで何も考えない事にした。

 始業の時間になると、ボ〜とする間もなく《ジリリリリン》《ジリリリリン》と電話が鳴った。3回コールしてから受話器を取り「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と言うと「そうですか」と相手は電話を切った。『何なんだよ』と思いながら机に頬杖を付いた途端また電話が鳴り響いた。3回コールするのを待って受話器を上げる。相手の出方を伺うも相手は、やはり無言だった為「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と言うと、「はぁぁ? 何だってぇ?」とイライラした様子の男の声が聞こえてきた。しかし『俺の仕事は台詞を言う事だ』と思い、もう一度「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と言うと「それはさっき聞いたわ! お前俺の事を馬鹿にしてんのか!」と言われたが「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と繰り返すと「やかましい!」と乱暴に電話が切られた。『ふぅ。こんな奴もいるんだな』と思いながら机に頬杖を付いて、電話を眺めながらボ〜とした。暫くして、また電話が鳴った。受話器を上げると「あのぉ、すみません」と女性が突然話し掛けてきた為「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と言うと「前にもそれ言われました。いつ電話したらいいですか?」と言ってきた。少し困惑したが「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と繰り返す。「いつ電話……」と言いかけた為、再度「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と言うと「そう……ですか……」と落ち込んだような声で女性からの電話は切れてしまった。『なにか悪い事したような気がするな』と思いながら机に頬杖を付いた。また暫く時間を置いて電話が鳴った。3回コールしてから受話器を上げると「あ! 今泉君?」と聞いた事のある女性の声が聞こえてきた。『???』と思いながら「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と言うと「あははは。真面目だね。さっすがぁ!」と返答された。疑問で頭が混乱気味だったが「あの……どちら様でしょうか?」と聞くと「え~! 忘れたのぉ! ひっどぉい!」と言われ、思わず黙り込んでしまった。「あははは。しょうこだよ。思い出した?」と言われ、ますます頭は大混乱。「あ、あの……どちらのしょうこ様でしょうか?」とやっと声が出たと思えば、そんな事を聞いていた。「あれ? 名前、教えて無かったっけ。中川晶子。思い出した? あの時はボ~としてたもんねぇ」と言われ「中川先輩!」と突然立ち上がってしまった。「あははは。さっすが真面目君。あのさ、突然なんだけど……今日空いてる?」立ち上がったまま、今日空いてると聞かれてどう答えれば良いのか分からなかったが「はい。仕事が終われば」と答えていた。「良かったぁ。じゃあ、今日君が終わる頃に会社の前で待ってるから。じゃあね!」と電話が切れてしまった。

 立ったまま『中川先輩が……』と呆然としていると、突然扉の方からコンコンと音が聞こえた。ふと見ると昼メシが四角いお盆に乗ってやって来ていた。『あ、あぁ、昼メシか……』と思いメシを取りに行く。今日の献立は、炊き込み御飯に漬物、ハンバーグと味噌汁だった。席に戻り座って両手を合わせ小声で「いただきます」と言ってからよく噛んで食べる。食事が終わると「ごちそうさまでした」と両手を合わせて小声で言った後、席を立ち、転送用携帯電話がある事を確認してから、トイレに向かった。

 トイレに入って排泄を済ませ、15分経過するのを待つ。やはりここのトイレは、誰も使っていないのかと思う程静かだった。《ピリリリリ》《ピリリリリ》と携帯電話の着信音が鳴った為、急いで転送用携帯電話を取り出し、通話ボタンを押し耳に当てて相手の出方を待つ。やはり無言の為「只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」と言うと「そう」と電話は切れてしまった。

 部屋に戻ると、昼メシの食器が無くなっていた。行う作業もなく、電話も鳴らない為、ボ〜とする。『中川先輩……何の用だろう……』そんな事ばかり考えていると、電話が鳴った。3回コールしてから受話器を取ると「今日終わってからですよね!」と言うと、相手の男は「はぁ!? 何が?」と言った為「すみません。只今係の者は外出しております。御要件は後程再度お電話下さい」とすぐ言い直すと「ふ〜ん」と電話を切ってしまった。『はぁ、びっくりした。次からは気を付けないと』と思ったが、それ以来今日は電話は鳴らなかった。

 急いで会社の前へ走っていくと、中川先輩がピシッとしたスーツに身を包み立っていた。「遅れてすみません!」と中川先輩の側に走り込みながら言うと「別にいいわよ」と満面の笑みで答えられた。『何の用だろう』と思っていると「じゃあ、食事にでも行きましょうか」と言われ、スタスタと歩き始めた。急いで後を追う。『どうしたんだろう中川先輩。何かの用事があるのかなぁ』と考えながら中川先輩の後ろを歩いて行った。暫く歩いて「ねぇ、ここでいいかな?」と振り向き様に言われた。見ると前に社長と来たファミリーレストランの前だった。「はい、いいですよ」と答えると中川先輩はファミレスの中に入って行ったので、俺も慌てて後を追った。ファミレスの中では、ただ食事をし特に変わった会話も無く、そのまま外に出た。ファミレスを出ると「ねぇ! 明日も一緒に食事しない?」と言われた為「ええ、いいですよ」と答えると「じゃあ、また明日ね!」と言うと何も無かったかのように帰っていってしまった。その後ろ姿を呆然と見詰めていたが『俺も帰ろ』と家に帰った。

 家に着くと、とりあえずスーツを脱ぎ床掃除を行ってから風呂に入った。洗濯機が回る音を聞きながら湯舟につかる。暫くボ〜としてから風呂から上がり、キッチンで水を飲みながら洗濯機が止まるのを待った。洗濯が終わると、ベランダに干しに行ってから自室に戻り『なんだか今日は疲れたな』と寝る事にした。敷布団にシワが出来ないように布団を敷くと、トイレに行き、トイレに入って20分経過したのを確認してから、洗面台で歯を磨く。右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぐ。袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認をしてから、窓際に行きカーテンを開け、窓を開けると、大きく深呼吸をして、「おやすみなさい」と空に呟くと、窓を閉め、カーテンを閉めて布団に入る。

 目を閉じ、羊が一匹、羊が二匹と眠ってしまうまでひたすら数えて、今日の一日が終わりを告げた。


 中川先輩……一体何の用事があるんだろう……。明日も外食か……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ