休日1日目(185日目)
朝10時、目が醒めた。『うわぁ! 遅刻だぁ!』
俺は布団からガバッと飛び起きると、慌ただしくスーツに着替え部屋を飛び出した。
が、『そういえば、今日は休みだった』と頭をポリポリ掻きながら部屋に戻ると、普段着に着替え、丁寧に布団をたたんでから、カーテンを開け、窓を開けて大きく深呼吸すると、静かに窓を閉め、カーテンも閉めた。
押し入れを改築して作ったトイレに入り、排泄を行う。トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出た。
『まずはメシか』とキッチンへ行く。昨日買った弁当を冷蔵庫から取り出し器に並べるといつもの通り御飯とメイン以外を冷めても良い物から温めていく。全ての弁当が温まったらテーブルに丁寧に並べ、両手を合わせて『いただきます』と呟いて一口一口ゆっくり味わって食べる。食後ももう馴れた手つきで食器を洗い、水気を切って棚に片付ける。『ババアの手の上で踊らされてる』と思うと腹が立ったが、自然と動く身体にも少し腹が立った。
『久しぶりにトイレの掃除でもするか』と、自室に戻り、自室、二階、一階の順にトイレの清掃を行う。一度手を付けると止まらなくなり、一度雑巾にしたタオルを取りにベランダまで行き、風呂場で絞ってから家中の床を拭いて回った。仕上げに風呂場を何度も雑巾を絞りながら丁寧に掃除をした。『何で俺こんな事やってんだ!』と思ったが、掃除が終わると、清々しい爽快感に包まれた。
掃除を終えると、もう昼前だった。『そういや、今日は料理に挑戦だったな』と思い、風呂場で肘から指先まで丁寧に石鹸で洗うとキッチンに向かった。まず何を作れば良いか迷ったが、調度開いたページにハンバーグの作り方が載っていたので、『今日の昼メシは、これにしよう』と材料を一つ一つ確認しながらテーブルの上に出していくと、時間がレシピに書いてあったので、慌てて目覚まし時計を取りに行った。レシピに書いてある通りのグラム数に合わせ、時間を計りながらハンバーグを焼いていく。初めは『面倒くせぇ!』と思っていたが、作り始めるときっちりした量、きっちりした時間と、作り方がしっかり明記されていた為、段々と楽しくなってきた。『これ、以外と俺むいてるんじゃねぇ』と思い、別のページを開く。またそこに書いてある料理に挑戦してみたくなった。気が付くと、昼メシなど、どうでもよくなっていた。きっちりグラムを計り、きっちり時間を計り、きっちりとした大きさに切り、丁寧に器に盛る。『美味そうじゃん。俺って料理の才能あんのかも』と自己満足していた。
一先ず、三品程おかずばかりを作ったので、冷蔵庫の中からカチカチの弁当の御飯だけを茶碗に入れて電子レンジで温めた。温まった御飯をレンジから取り出すと、先程作った料理と共にテーブルの上に並べて、両手を合わせて小声で「いただきます」と言って食べ始めた。
『美味いじゃん! 美味いよこれ! ……俺、やりゃぁ出来んじゃん!』と一口一口しっかり噛んで味わって食べた。食べ終えると「ごちそうさまでした」と小声で言い、片付けを行う。『料理するのは楽しいけど、片付けするのはイヤってヤツがいるって聞いた事あるけど、別に苦になんねぇな』と思いながら、食器と調理器具を洗う。全て洗い終えると、水気をしっかり取ってから、それぞれの収納場所へ片付けた。
『料理って、以外と面白ぇ! 買い物でも行くか』と、意気揚々とスーパーへ出掛けた。スーパーに辿り着き、食料品売り場を野菜や肉、魚を適当にカゴに入れる。レシピの本を持ってきて無かったが、『なんとかなるだろう』と気にもしなかった。弁当コーナーで、弁当を見たが自分で作れるからと、素通りし、とりあえず米だけは買う事にした。『そういえば、洗濯用洗剤が無かったな』と思い、洗濯コーナーに寄り、洗剤を一つカゴに入れた。『こんなもんか』とカゴの中を見て、レジに並びお金を払うと、ルンルン気分で家へと帰った。
家に着くと少し時間が余っていた為に少しだけゲームをすることにした。キッチンに行き、冷蔵庫や冷凍庫に野菜や肉を入れ、米を冷蔵庫の横に置くと、自室へと戻った。『そういえば昼、トイレに行ってない』と思い出し、押し入れを改築して作ったトイレに入り、排泄を行う。トイレに入ってから15分経過したのを確認しトイレから出た。
テレビの前に座り、リモコンのスイッチを押す。画面にビデオ1と真っ黒な映像が映るのを確認すると、テレビ台の下に置いてあるテレビゲームのスイッチをONにした。
『なんか久しぶりに、コレやる気がするな』と思いつつゲームを続ける。ふと『今、何やってたんだっけ? 何処行きゃいいんだ?』と思い、町や村に入って、同じ事ばかり言うキャラクターに話しまくる。暫くして『そーいや、『ナーナラへ行く途中だった』と思い出し、町を出るとまた冒険の続きを行った。
ゲームを始めて2時間で止める。『そろそろ晩メシの用意しねぇとな』とゲームのスイッチを切り、ビデオ1と画面に映るとテレビを消してキッチンへ行った。
米をカップに計って釜に入れ、2〜3回洗ってから炊飯器に入れて水の量をきっちり計ってから入れスイッチをONにする。続けてレシピ本を開くと、食べたい物のページに合わせ、材料を確認する。時折、材料の無い物もあったが、それは似たような物で代用した。作り始めると、止まらない。きっちり分量を計って、きっちり時間を見て。『これちょっと幸せかも』とふと思ってしまった。
夕食に作りたかった物を作ると、炊けた御飯を茶碗に盛り、おかずを見ただけでよだれが出るように皿に並べると、いつものように、両手を合わせて「いただきます」と小声で言うと一口一口しっかり噛んで味わって食べる。『美味い! 俺って料理の才能あったんだ!』と一人でニヤつきながら、夕食を摂った。
その後は、『おっ片付け〜♪ おっ片付け〜♪』と口ずさみながら食器やお皿を洗い、全て洗い終えると、水気をしっかり切ってから、それぞれの収納場所に片付けた。
夕食の片付けを終了すると、今日買った洗濯用洗剤を持ち、ベランダへ行き、乾いた服やタオルを取ると、そのまま風呂へ行く。洗濯機がすぐ終わらないので、脱衣所へ行くとすぐに服を放り込み、洗濯用洗剤を中に入っていたスプーン一杯を入れ洗濯機を動かした。風呂に入ると湯舟にお湯を入れながら、身体を洗う。『メシ作んの楽しいかも♪』と考えていた。洗濯に時間がかかる為、少し長く温まってから風呂から出た。洗濯はまだ終わって無かったが、長く温もった為、キッチンで水を飲み少しぼ〜っとした。洗濯機が止まる音が聞こえると、脱衣所へ行き、洗濯済みの物を持ってベランダに行き干す。
部屋に戻ってくると、布団を敷く。敷布団にシワが出来ないようにのばすと、トイレに行き、トイレに入って20分経過したのを確認してから、洗面台で歯を磨く。右奥を30回、右奥の内側を30回、左奥を30回、左奥の内側を30回、前歯を30回、前歯の裏を30回数えて磨き、コップに塩水をいれ一回一分を5回ゆすぐ。袋の中に息を吹き入れ、中の臭いを嗅いで口臭の確認をしてから、窓際に行きカーテンを開け、窓を開けると、大きく深呼吸をして、「おやすみなさい」と空に呟くと、窓を閉め、カーテンを閉めて布団に入る。
目を閉じ、羊が一匹、羊が二匹と眠ってしまうまでひたすら数えて、今日の一日が終わりを告げた。
料理、楽勝じゃん。明日は何しようか。