箱
掲載日:2026/05/26
一家にひとつ箱がある事が常識になった。
箱は何にでも必要なものになった。クーラーになったり冷蔵庫になったり電子レンジになったりした。時には車になったり家になったりもした。話し相手になったりペットになったり恋人になったりもした。
ある時、箱は箱の恋人になった。ふたつの箱はやがて小さな箱を産んだ。そして小さな箱は大きな箱に育つと箱の恋人を連れてきた。こうして世界は箱でいっぱいになっていった。
「箱のくせに…」
誰かが呟いた。恋人を箱にとられた腹いせだったのかもしれない。それを聞いた箱は気がついた。
「僕は箱だったのか…」
箱はただの箱に戻った。それを見ていた箱もただの箱に戻った。そうして世界中の人々はみんなただの箱に戻った。人々だけでなく建物も乗り物もイヌも猫も何もかもがただの箱に戻った。箱だらけになった地球でどこからともなく声がした。
「箱だったのか」
やがて宇宙には大小様々な箱が浮かんでいるだけになった。
誰かが宇宙という箱の蓋をそっと閉じた。




