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作者: 気軽
掲載日:2026/03/02

「———オマエ、何がしたいんだ?」

 僕は世渡りが上手だ。

言われたことなら何だってやるし、人付き合いのための食事だって欠かさない。呼ばれればすぐに飛んでいくし、上司の機嫌取りなどお手のものだ。

このまま、うまく立ち回って生きていってやるんだ、僕は——

そんなことを、鏡を見ながら、思う。

ベランダに出て、外の空気を吸う。

太陽が今日も綺麗だ。

………そろそろ職場に行かなければ。

 

 すし詰めの中で揺られながら、今日の予定を確認する。先輩との食事があったようだ。……まぁ、適当な話をしておけば良いだろう。あとは……特にないか。そう思った瞬間、頭が稼働を停止する。ただ、周りの音が過ぎていく。

 しばらくして、降りる駅の名前が目に入る。頭が再び稼働を始める。……そろそろ着きそうだ。


 高くそびえ立つビル。今日も、働かなければ。

 執務スペースのドアを開けると、例の先輩が視界に入る。そのまま、それはズカズカと自分の方に歩いて来て、口を開く。

「今日のアレ、忘れてないよな?」

「ええ、もちろん。しっかり覚えていますよ。」

「なら、良いんだ。楽しみにしてるからな。」

「私もですよ、ハハ……」

 会話を終わらせ、自分の席につく。

 仕事が始まる。キーボードを叩く音とコピー機の音が奏でる無機質なハーモニーが室内に響く。仕事なんて簡単なものだ。与えられた仕事をこなし、確認したいことがあればメールを送る。メールが送られて来れば、適切に返信をする。人付き合いを良くしているから、特にトラブルが起きることもない。上司に仕事を押し付けられて仕事が長引いても、上司とのゴルフで休日の時間が削られても、社会で生きていくためには仕方ないことだ。ずっと、前だけを向いて生きていればいい。

 これまでも、これからも、そうやって毎日を終えていくのだ。


 今日の仕事が終わった。先輩は一足先に店で待っているらしい。さっさと行ってしまおう。

 先輩に伝えられた店はここだ。戸を開け、店員に連れが来ていると伝え中に入る。先輩を見つけた。

先輩の方は、テーブルのすぐ近くまで来てようやくこちらに気付いたようだ。

「おう、来たな。まぁ座ってくれや。」

「はい。」

 席につき、少しだけ考える。どんな話が来ても対応できるように構えておこう。いつものことだ。

そうやって準備をしていた。

 が、何故かそこから、先輩の方から話をすることはなかった。自分から誘っておいて、何も話さない人は初めてだ。……絶え間なく立てられる食器の音が、自分と先輩との間に、響く。

 このままでは少しマズイだろう。そう思って自分の方からも何度か会話を試みたが、曖昧な返事しか返ってこない。仕方がないので、箸を進める。

 お互いに食べ終わった頃、先輩が突然口を開いた。

「なぁ。」

「はい?」

「———オマエ、何がしたいんだ?」

「…………は?」

突拍子もないその質問に、言葉を失う。

「あ、いや。別に怒ってるとかじゃなくて。ずっと気になってたんだ。オマエがしたいこと。」

「それは…えっと、すみません。どういうことですか……?」

訳がわからない。今まで、いろんな人と食事と会話をしてきたが、こんなことを訊かれたことはなかった。

「会った時から思ってたんだけどな。オマエってさ、いつも目が『生きてない』って感じがするんだよ。うまく言えないけど。そんな奴だからさ、したいこととかちゃんとあるんかな、って思って、な。」

 食器の音が、さっきにも増して今度は自分の頭の中に響いてくる。自分のしたいこと…そうだ、自分は、ずっと動くことのないこの現実を維持したいんだ。そう思って、先輩に答える。

「私は、今の生活をずっと続けていきたいです。」

 これで何とかなっただろう。まったく、変な質問はしないで欲しいものだ。先輩の方を見る。何やら呆れた顔だ。何か間違えたのだろうか……?

 先輩が口を開く。

「あのなぁ、オマエそれ、『これからも死んだ目をして生きていきますぅー』って言ってんのと、同じだぞ?うまく言えねえけどさ、そんなんで、いいのかよ?」

「いや、私は……」

 答えられない。頭が混乱している。自分が今まで生きてきたそれが、心の中で大きく揺れている。今まで周りの人間に合わせて生きてきた。そうしていれば、問題が起こることはなかった。これからだって、そうするつもりだった。だがそれは正しいことだったのだろうか……。いくら考えてもまとまらない。

 そんな自分を見かねたのだろうか、先輩が私を励ますように言う。

「今はわからなくてもいい。でもな、ずーっと今のまんまだとそのうち後悔することになるぞ?考えることだけは、やめるなよ。」

 うつむいたまま、自分は曖昧な返事しかできなかった。

「今日は俺が奢ってやるから、そろそろ出ようぜ。」

 結局自分は、店を出て先輩と別れるまで明確な答えを出せなかった。

 帰り道——月が自分を照らす。淡い光で。自分は相変わらずうつむきながら歩いていた。ふと、自分の影が目に入る。どこか頼りなさを感じる、その光に照らされた影はぼんやりとしていて、形がはっきりしない。自分のやりたいこと……少し……考えてみようか。そういえば、近いうちに自分の部署でやる企画のプレゼンがある。いつもは適当に、周りの人間がいい気分になるようにして済ませていたが… そう思っているうちに、家に着いていたようだ。頭が混乱していたせいだろうか、気分があまり良くない。とりあえずシャワーを浴びて、今日はもう寝よう。

そう思った矢先——自分の目の前で人が倒れた。

 周りの人は——彼女に見向きもしない。気づいていないのだろうか……?……自分は、どうすれば……。そんなことを考えていると、1人の若い男が彼女に駆け寄った。安否を確認しているようだ。男がこちらを見る。

「そこのあなた!」

「え……は……はいッ」

「あなたは、119番を!」

頷き、スマホを取り出して通報する。男は別の人の方を向いて、AEDを持ってくるように言っている。

 もしあの男がこの場にいなかったなら……彼女は……いや、自分が助けていれば良かったのだ。だが、動けていただろうか……。彼女が倒れるのを見た時、足は前に出かけていた。だが、寸前で足がすくんでしまったのだ。

 到着した救急隊員に事情を説明し、帰宅する。ずいぶんと遅い時間になっていたようだ。なぜか手が震えている。早くシャワーを浴びて、寝よう……。

 シャワーを浴びていると、先のことが思い出される。あの男は迷わなかった。……。自分は——。


 それから、自分なりに色々と考えながら仕事をこなした。急に考え込むようになったからだろうか、今まではなんとも思っていなかったはずの人付き合いや押し付けられる仕事の多さに困惑が混じるようになった。……頭が、痛い。

『———オマエ、何がしたいんだ?』

仕事中、頭の中であの言葉が繰り返される。

『あなたは、119番を!』

あの時のあの男が、脳裏に焼きついて離れない。

僕は——


―――――――――――――――――――――――


 プレゼンをする日が来た。

鏡を見る。……自分だ。

ベランダに出て、外の空気を吸う。

太陽......はどうでもいいか。

職場に行こう。


 すし詰めの中で揺られながら、今日の予定を確認する。今日はプレゼンをする予定がある。スマホを閉じ、プレゼンの内容を頭の中で反復する。……いつのまにか、駅のすぐ手前まで来ていたようだ。降りよう。


 高くそびえ立つビル。緊張してきた。

 執務スペースのドアを開けると、例の先輩が視界に入る。先輩は——ものすごい形相でパソコンを睨み、キーボードを鳴らしている。どうやら今日のプレゼンの資料を作り終わっていないようだ。今はそっとしておこう……。自分はプレゼンの最終確認をしよう。そう思って自分の席につき、スライドの確認と資料の整理をする。そうしていると、先輩の言葉とあの男の姿が頭にチラついた……。


 そしてプレゼンが始まり———あっという間に終わった。執務スペースの自分の席で、帰り支度をしながらプレゼンを思い返す。緊張していたからだろうか、それともプレゼンがいつもの調子と違っていたからだろうか。反応は、良いとは言えないものだった。冷ややかな視線が突き刺さり、拍手の音もいつもの数倍小さかった。だが、なぜか、今はとても清々しい気分だ。帰り支度を終えたらしい先輩がこちらに歩いてくる。

「良い顔になったな、お前。」

「プレゼンはあんまりうまくいきませんでしたけどね。」

「そうか?俺は結構良かったと思うけどな。いつもの超合理的で利益を完全に優先してるのよりも、客のためを思って作ってる今回のやつの方が俺はずっと好きだぜ。」

「本当ですか?そう、言っていただけると嬉しいです。上司案と違うスライドを入れたのが初めてだったので、不安でしたから。」

笑いながら、答える。そうしてその人と別れ、帰路に着く。

 ふと、自分の影を見る。

今は、月明かりに照らされた時に見たものよりはっきりとして見えている。


………。


………特に自分と変わった所はないようだ。

 初投稿です。小説に興味が湧いたので、とりあえず自分が何を書きたいか考えて形にしてみました。

 推敲には、一部参考程度にChatGPTとGeminiを使用しました。

 象徴を多用したので、気づいていただけると幸いです。

 主人公は、これからどんな生活を送り、どんな壁に当たるのでしょうか。そんなことも、想像してみてほしいです。

 まだまだ至らない点があると思いますので、アドバイス等々お願いしますm(_ _)m

(別サイトにも投稿しています)

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