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七話:外からの破壊者①

五話



焼け焦げた廃墟の下に、その場所は隠されていた。


 地下深くに最奥に広がる巨大な祭壇——苔むした石壁に刻まれた古の紋様が、不気味な赤い光を放ち、空間全体が異様な熱気に包まれていた。


 中央にはマリス・スフィアが立っていた。彼の髪が揺れ、瞳には狂気と執念が宿っている。


「生き残っている……? 何か仕掛けがあるな」


 爆心地において、全てはベルリオーズの暴力的な自爆によって粉砕された筈だった。しかし祭壇があり、その中央に鎖で縛られている少女は「ロイヤルブラッド」認定を受けた尊き者。血筋に秘められた魔力の質は高次元への穴を持つ存在だ。 


 マリス・スフィアはその力を利用し、尊き魔力で超越的な存在を呼び出そうとしていた。少女の顔は青白く、抵抗する力さえ失っていた。


「彼女は誰だ?」

「尊き血筋のお姫様。名前はない。救出するのも、殺害するのも無駄だよ。彼女の血は、重要でね。幾つかの保険がかけてある」 


 マリス・スフィアの声は冷たく、儀式の準備が最終段階に差し掛かっていたことを示していた。


 祭壇の周囲には、テロリストの残党が配置され、奇怪な呪文を唱えていた。地面に描かれた魔法陣が脈動し、空気が歪むような感覚が広がる。


(雑兵も生きている……範囲指定型の防御バリア。幻想大陸流に表現するなら結界魔法か)


 マリス・スフィアは両手を広げ、高らかに宣言した。


「尊き魔力を啜り、顕現せよ。この血と魂を捧げ、私に無限の力を与えろ!」


 その瞬間、少女の体から赤い光が溢れ出し、魔法陣が一気に輝きを増した。空間が震え、何か得体の知れない存在が現れようとしている気配が漂った。


 ベルリオーズの背中にあるスナイパーライフルがエネルギーを発射して、テロリストの残党を瞬時に薙ぎ払った。


「マリス・スフィア……色々と聞きたいことはあるが、消えてくれ」


 ベルリオーズの声は怒りに震えていた。彼女の瞳には、オルレアを救う決意と、マリス・スフィアへの憎しみが燃えていた。 マリス・スフィアはベルリオーズを見て、不敵な笑みを浮かべた。


「ベルリオーズ。君の力は、私を完成させる最後の欠片だ。尊き魔力を掌握した私が、運命を握る者となる瞬間を、見届ける権利をあげよう」


 ベルリオーズは即座に銃を構え、マリス・スフィアに向かって引き金を引いた。だが、弾丸は祭壇から放たれる異様なエネルギーに阻まれ、空中で蒸発した。


 マリス・スフィアが手を振ると、魔法陣から黒い影が這い出し、ベルリオーズへと襲いかかった。


 儀式が進むにつれ、上位次元の存在の輪郭が現れ始めた。それは形を持たない光と闇の奔流であり、見る者の精神を侵すような圧倒的な力を放っていた。


 マリス・スフィアの血をさらに引き出し、彼女の命を吸い上げるように儀式を加速させた。


「これが私の力だよ、ベルリオーズ。君の愛するオルレアから奪ったものも、この『魔力』に溶け込んでいる。彼女を取り戻したければ、私を倒してみなさい」


 ベルリオーズの胸が締め付けられた。オルレアの視覚と運動機能を奪った力が、この魔力に宿っている。


「殺す」


 マリス・スフィアの言葉が、彼の決意をさらに固めた。

 ベルリオーズは自らのエネルギー発生能力と、エネルギー操作能力を最大に引き上げた。


 黒い影を切り裂きながら、彼は祭壇へと突進した。


「オルレアが大好きだ。だから私は戦う。お前に彼女の未来は渡さない!」


 その叫びは、祭壇全体に響き渡った。マ

リス・スフィアの笑みが一瞬歪み、彼女は上位存在の力を引き出してベルリオーズを迎え撃った。


「なら、試してみると良いよ。私が最初に秩序を作る者であることを、君の死で証明しよう」


 ベルリオーズはマリス・スフィアの言葉を聞いていなかった。いや、聞くつもりすらなかった。


 彼女の耳に届くのは、オルレアの掠れた声だけだった。


 『約束。二人で生きるの』という懇願だけだった。オルレアの目が見えず、体が動かない姿が脳裏に焼き付き、ベルリオーズの心を突き動かしていた。


「上から目線でべらべらと、戯言を叫びながら消え失せろ!」


 ベルリオーズの叫びが祭壇に反響し、彼はエネルギーの出力をさらに引き上げた。 スナイパーライフルを銃弾が尽きると、エネルギーで強化された腕で直接黒い影を殴り潰し、祭壇へと肉迫した。


 引き千切った指を空へ投げる。それらは時間差でエネルギー収縮して爆発した。それらは敵の動きを封じる。


 ベルリオーズの攻撃は必死。感情に突き動かされた猛攻だった。マリス・スフィアは冷笑を浮かべ、ベルリオーズの無謀な突進を見据えた。


「効いてないのが、わからないか? ベルリオーズ。君は私の言葉を理解する知性すら持たないのか。私は秩序を自らの手で掴む者だ。君がどれだけ足掻こうと、私がそれを奪う」


 彼女が指を鳴らすと、魔力の力が一気に膨張した。祭壇から溢れる光と闇の奔流がベルリオーズを包み込み、彼女の動きを一瞬止めた。


 マリス・スフィアは少女の血をさらに引き出し、儀式を加速させていく。


「君の力も、オルレアの力も、全て私が掌握する。私がシステムとなり、運命の頂点に立つ」


 だが、ベルリオーズは止まらなかった。空間が悲鳴を上げるほどの負荷をかけ、彼は魔力の奔流を突き破った。


 額から血が流れ、精神の一部が焼け焦げていたが、彼の瞳にはオルレアへの愛が燃えていた。


「オルレアが大好きだから、俺は戦う! 邪魔なお前は消す、ここで! 今ここで!」


 マリス・スフィアに攻撃が届く寸前、ベルリオーズは最後の銃弾を放った。弾丸は魔力の障壁を貫き、マリス・スフィアの肩をかすめた。


 王の冷徹な表情が初めて歪み、僅かな血が祭壇に滴った。


 マリス・スフィアは目を細め、低く呟いた。


「……ベルリオーズ。君のその執念、試してみる価値はあるかもしれない」


 彼女が手を振ると、「魔力」がさらに膨張し、祭壇全体が震え始めた。尊き血を持つ少女の命が尽きかけ、儀式が完成に近づく中、ベルリオーズとマリス・スフィアの戦いは更に加速する。


 ベルリオーズは発生させるエネルギーの質を変えて、肉体技能を駆使して、黒い影を切り裂きながらマリス・スフィアに迫る。だが、その猛攻を前にしても、マリス・スフィアの表情は揺らがなかった。 


 彼女は手を軽く挙げ、ベルリオーズの銃弾を魔力の障壁で弾きながら、静かに語り始めた。


「ベルリオーズ、君は分かっていないようだね。私が求めるのはフェアな戦いだ」 


 ベルリオーズの動きが一瞬止まり、彼は眉を寄せてマリス・スフィアを睨んだ。だが、攻撃の手は緩めない。

 マリス・スフィアはそんなベルリオーズを見据え、冷たい声で言葉を続けた。


「卑怯な存在は強い者ではない。姑息な手段で勝ったとしても、それは秩序を作る者には相応しくない。フェアな戦いこそが、この儀式に捧げるべき試練」

「今更?」

「今だから、必要なんだ」


 祭壇の魔法陣がさらに輝きを増していく。

 マリス・スフィアの瞳には、狂気と同時に奇妙な純粋さが宿っていた。


「私は君を試している。君が私に挑むなら、正々堂々と立ち向かえ。卑劣な奇襲や策略ではなく、純粋な力で私を倒してみろ。それが、私が『魔力』を掌握し、運命を握る者となるための証明になるのですから」

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