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10話:奴隷解放・初戦①


 通信魔法が起動して、ベルリオーズは第一会議室へ呼ばれ、ベルリオーズは静かに闘志を燃やしながら向かっていく。


「失礼します」


 ノックの後に部屋へ入り行う彼の敬礼は完璧で、動作は無駄がなく、会議室に入るや否や、敬礼してくる部下たちに、同じく非の打ちどころのない敬礼を返した。


 会議室の空気は張り詰めていた。定刻になると、すべての人員が揃い、静寂の中、スメラギが口を開いた。少年の姿をした上司と超越的な力を感じさせる存在は、柔らかな声とは裏腹に、言葉に絶対の重みを帯びさせている。


「前提からの確認をさせてもらうよ。現在の我が軍事国家アドラーでは、ある事が社会問題になっている。それは奴隷問題だ」

「奴隷……? そんな前時代的な概念が問題に?」

「そうなんだよ、困っちゃうよね。その理由は別紙資料に書いてあるから、読みたい人は読んで」


 ベルリオーズは渡された資料に目を落とした。そこには、かつて「黒龍」を討ち滅ぼすために設立された研究機関が、その死骸を再利用して非道な実験を行っている事実が記されていた。


 その実験動物を確保するのに奴隷が選ばれていた。  知性体を道具のように扱い、倫理を無視した実験を、まるで遊び半分で進めている内容だった。

 ベルリオーズの胃が締め付けられるように重くなった。高き理想と努力や研鑽を積む日々を送りながらも、彼の中にはまだ、人道的なモラルの欠片が残っていた。


 犯罪は許されず、人の尊厳は守られるべき——そんな当たり前の感情が、彼の胸を締め上げた。スメラギの声が会議室に響く。


「さて、ここに集まった人にはペアを組んで、奴隷商人を潰してもらう。この国の癌の切除を担う重要な任務だ。ペアはこちらで指定する」


 スメラギの視線が、会議室の顔ぶれをゆっくりと見渡した。尊厳を損なう奴隷に加えて、人体実験。そんなものを許しておけない。心の奥で渦巻く葛藤を押し殺し、彼はただ任務を遂行する道具としての役割を果たした。


「何か質問は?」

「私から。その黒龍の死骸を利用して、何をしようとしているのか、具体的な情報はあるかしら? それによって優先順位が変わってしまうと思います」

「黒龍の死骸は、不老不死や、能力の上昇、あとは無限のエネルギー生産システムの開発実験などに使われているようだ」

「なら、放置していても良いのではないのでしょうか? 便利ですよ」


 少女の軽い口調に、スメラギは即座に反論した。


「不老不死も、能力上昇も、永久機関も、そんなものこちらではとっくに実用化され、安全管理もできている。こちらの技術とは別口で達成するのには興味があるのは確かだけど、安全性が確保されていない状態で進められるなら論外だ。それに、うち以外の国がそんな技術を所有してもらっても困るし」

「なるほど。単純に技術の優越性を維持したい、と」

「無限のエネルギー、無限の資源、人体強化技術も、それがアドラーを支える屋台骨だからね。その技術が外部へ漏れるとか笑えない」

「納得しました」

「うん、他のみんなは?」


 スメラギは周囲を見渡して、言う。


「よし、奴隷になった人々を助けよう。ペアは現地で合流できるようにしておいた。ここにいない子もいるし。我々、治安維持組織アーキバスは正義で、善で、光だ。夢を抱いて任務に従事してくれ」


『了解』


 ベルリオーズは正しき怒りを胸に、奴隷の解放へのモチベーションを高めるのだった。



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