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アリスと魔法の世界  作者: 愚者
序章 始まりの唄
3/5

小鬼の洞窟

 アリスと神威は依頼書を手に持ち、その内容をのぞき込むかのように読んだ。


 内容は要約すると、数日前からゴブリンが町はずれの洞窟に住み着き、町娘や行商人、家畜などを襲うから駆除してほしいとのことだった。


 ゴブリンの数は10~20体ほど見られ、特殊個体はいなかったそうだ。


 数が多くて初心者には厳しいとは思わなかっただろうか?だが、問題はない。ゴブリンとは小鬼とも呼ばれることもあり、見た目は小さい鬼というような感じだが鬼ほどの力もない。そのうえ、モンスターが持つ特殊能力も持っていない。


 そのため10体ほどだと駆け出し冒険者でもがんばれば倒せる。


 だが、例外はある。ゴブリンは特殊能力を持ってはいないが特殊個体というものが他のモンスターよりも生まれやすいのだ。そのため、ゴブリンを見つけたら特殊個体となる前に早めに駆除する必要がある。


 さっきから特殊個体という言葉を出しているが、特殊個体とはそのモンスターが突然変異または成長し、強くなったモンスターを指す。


 例えば、特殊能力の強化、他の能力が芽生える、知能や身体の強化などがある。


 ゴブリンだと、魔法の使える個体であるウィザードゴブリン、高い身体能力と武術を持つウォリアーゴブリン。そして、ゴブリンの集団を統括し、ゴブリンの王となるものをゴブリンロードと呼ぶ。


 これらの特殊個体は銀級冒険者または金級冒険者が討伐に向かう。


 だが、アリスたちの受けるクエストはただのゴブリンなんで大丈夫だろう。されど油断は禁物だ。これらの特殊個体が出た場合は自分たちの命最優先に逃げるのが最適だ。間違っても戦ってはいけない、名声欲しさに戦って死ぬものは少なくはない。


 アリスたちは依頼書を持ちカウンターへと向かい、アリスは受付のお姉さんに依頼書を渡した。


「こちらをお願いします」

「二名様でのご討伐でよろしいでしょうか?」


 カウンターのお姉さんはいつでも営業スマイルを忘れずに冒険者と向き合う。


「はい」

「では、移動はギルドの出す馬車をお使いください。詳しくはギルドの横の馬小屋の者にお聞きください。あなた達の冒険に加護があらんことを」


 その言葉を聞くとアリスと神威はカウンターを離れ、ギルドを出て、ギルドの横の馬小屋へと向かった。


 馬車を使っての移動だなんて冒険者らしい‼とアリスは胸躍らせた。


 また馬に乗り地を駆けれるでござるか。と神威も胸躍らせる。


「アリス殿、道中での馬の操作は拙者に任せてくだされ」


 アリスは見た。目の前の青年が自分とおなじく目を輝かせていることに。それを見たならいう言葉はおのずと決まる。


「うん、いいよ」

「かたじけない。国を出てからもう乗れぬと思っていた故」


 会話をしながら歩くうちにもう馬小屋へとついていた。


 アリスたちは馬小屋の者を探すためにあたりを見渡した。すると、馬小屋の中から男の人が歩いてきているのを発見した。


 その男はこちらに来ると、けだるそうに声を放った。


「えぇっと、君たちかな?ゴブリン討伐のための馬車がいるのは」


 そのものの声はなんとも眠たげで響くような低い声だった。


「はい」

「じゃあ、こっちに来て」


 男は馬小屋の中へと眠たげな足取りで入っていく。アリスたちもそれに慌ただしくついていく。


「じゃあこの馬と荷台ね。んじゃ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」


 これはひどかった。馬はてこでも動きそうにないほど太っていて、荷台は人一人と少し荷物が置けるぐらいの幅しかなく、今にも壊れそうなほどだった。


「あぁ返す場所かい?それなら同じところに自分たちで返しといて。じゃあ俺は寝るから、お休みぃ...zzz」


((聞きたいのはそこではない‼))


 アリス達が聞きたかった事はこの馬で走れるのかとこの馬車の安全性だ。


「アリス殿、どうするでござるか?」

「そうだね、起こすのもなぁ」


 どうしたらいいかが分からなかった。起こすべきか、このままもう行くべきか。


「乗らずに決めるのはよくないでござるな」


 そういって神威は馬にまたがった。馬は特に抵抗もせずボーっとしているようだった。


 神威はそのまま馬を叩き、走らせる。スピードはそこそこというような速さであった。まぁ一応ギルドの馬か、てこでも動きそうになかったのにちゃんと走るとは。


「まぁこのままいこっか」

「そうでござるな」


 今のアリスたちは完全に諦めモードというような空気であった。


 結論としては自分の足で歩くより早く、体力を温存させれるというのが大きな利点だった。


 だが、荷台は壊れないかドキドキしながら乗ろうと思った。だがアリスは思い出したのだ、自分に光属性の適性があることを。


 アリスは必死に馬車をイメージし、手を突き出し魔力を集中させる。黄色く光る光の粒子がアリスの手の前に集まり形となっていく。


 できたのはなんとも不格好な歪んだ馬車だったが、叩いた感じ一応丈夫ではあった。はじめてにしては得できたとアリスは思った。


 アリスは馬車と馬を連結させ、神威はアリスが乗ったのを見ると馬を走らせた。


 道中にある小石を踏むたびに馬車は揺れ、なってはいけないような音を響かせた。アリスは、あのおんぼろな荷台と自分の作った不格好で歪んだ光の馬車、どちらに乗ればよいのか考えたのであった。


 小一時間ほど走ると目的の洞窟へとと着した。


 その洞窟の外見はなんとも普通だが、すぐにでも鼻を抑えたくなるような酷い臭いが一瞬にして自分の鼻を犯すのが感じられた。腐った死体や生ごみ、糞尿が放置され混ざり合ったような臭いだ。その臭いに吐き気を覚えながら二人は洞窟の中へと進んでいく。


 中は広くひんやりとしていた。温度的にも、感情的にも。


 それもそのはず、道には見るも無残な人間や動物の死体や骨が散乱していた。


 今度は、臭いとともに壮大な吐き気に襲われ、二人はとうとう吐く。だが、吐いても別にすっきりはしなかった。


 だから、早く終わらせて早く帰ろうと二人は歩み始めた。

次は18時ごろ投稿します

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