仲間
アリスは今、とてつもない状況に陥っていた。
ことの原因は、アリスに光属性の適性があるとギルドの冒険者の前で告げられたことにあった。
この世界では、光属性の適性があることは珍しい。その上、光属性の魔法自体が色々と応用が利く。そんな光属性の応用といわれても、まぁわからないだろうから例を三つほど挙げよう。
一つ、聖魔法。聖魔法は光属性と固有魔法で持っている者がいるだけだ。まず、聖魔法とは回復魔法や破魔の魔法である。回復魔法はわかるだろうから置いておくとして、破魔の魔法とは魔なるものを浄化する力だ。持っているものが少ないうえに、必須とも言っていいほどの物であった。
二つ、魔法の強化。魔法の威力や発動スピードを上げたり、魔力消費量を減らしたりする効果がある。この効果は基本的に自分にのみしか適用できない。だが、例外はいる。まぁその例外は今のところ置いといて、今後触れるとでもしよう。
三つ、。形を自由に作れる。これは結構重要である。光属性は魔法で光の剣や弓矢など形の違うものを自由に作れる。これは危機に面した時、光属性を持つものならば絶対に使うといってもいいほどの力だ。
以上の三つからアリスは冒険者たちに追いかけられている。
「オラ、待てよ嬢ちゃん。俺らのパーティに入ってくれよぉう」
「おいこら、俺らが先に目ぇつけてたんだよ。邪魔すんな‼」
「なにおう、てめぇらはかぎつけてきだだけじゃねぇかよ」
「あ”?」
「あ”?」
アリスを後ろから追いかける者どもがいい争いから乱闘を始める。なんとも醜い。だがこれが殆どの冒険者であった。
アリスはそんな阿保共には目もくれず路地裏に逃げ込んだ。
(あぁ、なんでこんなことになったのだろうか?)
アリスは小さくため息をつき、これからどうしようかとトボトボと路地裏を歩く。
そしてアリスは思いつく、変装でもして依頼を受けようと。だが、変装とは言ったもののそんな変装道具はない。フード付きのローブを持っているぐらいであった。
(このローブ着てフードをかぶればいいじゃん。どうせ阿保共は分かるまい)
そうして、アリスはギルドの前に現れ、ドアを開ける。冒険者たちは気づく気配はなかった。「あの光属性の女を探せぇ」や「どこにいったあの女ぁ」などの声の横を通り、依頼掲示版へと向かった。
依頼掲示板には数えきれないほどのクエストが載っていたが、銅級冒険者の受けれるクエストは10件ほどだった。
アリスはその一件一件に目を向けた。載っていたのはほとんど迷子のペット探しや掃除、雑用だった。冒険者らしくないクエストだらけだとアリスは思った。だが、一件だけ別のものがあった。それは近頃、近所の洞窟を巣にしたゴブリンの討伐だ。
アリスはこれこそ冒険者らしい、と手を伸ばす。するとほかの者の手とぶつかった。
「あぁ、ごめんなさいっ‼」
アリスは慌てて謝罪をしながら相手を見た。
相手は倭人の青年であった。倭人とは遠い東の大陸のそばにある独立した島国に住む者達、倭国の人々を指す言葉だ。倭人は着物と呼ばれる見慣れぬ変わった美しい服を着ており、髪と目が黒色であることが特徴的であった。また、倭人のほとんどは刀という武器を使うらしい。
アリスの目の前にいる青年もその倭人の特徴と同じく着物を着ており、刀を腰に下げている。違う点があるとするならば髪と目の色が紅色がかった黒色をしていた。青年が着ている着物には紅葉がまっていた。その紅葉の赤と髪と目の紅色がかった黒色が炎を連想させる。
青年もこちらを向きまっすぐにこちらを見た。
「拙者も申し訳ない。ところでお主もこの依頼を受けようとされたでござるか?」
「うん。初クエストはちゃんと冒険者らしいクエストをやりたくて」
それを聞き青年は嬉しそうに満足気にうなずく。
「それでござったら、ともにこの依頼を受けてくれぬか?拙者も初めてのクエストでできればともに受ける仲間が欲しいと思っていたでござる」
アリスはそれを聞き少し考えた。
(確かに私も言われてみれば初めての依頼を一人で行くには不安だ。それにパーティ組んでモンスター倒しに行くだなんて冒険者らしい‼)
アリスは単純だった。アリスは物語の冒険者にあこがれを抱いていた。故に、アリスは冒険者らしいものには条件反射的に誘われてしまう。
「えぇ、ではご一緒に。よろしくお願いします」
「よろしく頼むでござる。拙者は神威」
そういって青年、神威は手を出してきた。アリスはその手を握る。
「私はアリス。よろしくね、神威」
こうして二人の冒険は始まった。
これが歴史に名を刻む二人の出会いだった。
どうも二話目更新しました。
読んでいただきありがとうございます。
3話目 小鬼の洞窟
見てください。