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あの日あの時の桜

作者: 実瑠さくら

 桜の季節。


 それは、別れの季節。


 ふとした瞬間思い出す、あなたのことを。



❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.


  

 「理人くん、お花見楽しいね!私、この日をずーっと楽しみにしていたの!」


 最近は仕事が忙しく、予定が合わない日が続いていた。

 だから、久しぶりに会えることが嬉しすぎる。

 私は、にやけてしまった顔を手で戻す。


 きっと理人くんも楽しみにしていたはず!


 「……そうだね……」

 

 彼は、悲しそうにどこか遠くを見つめている。


 「……もしかして……楽しみじゃなかった? ご、ごめんね?」


 私だけ浮かれていた。

 なんて浅はかなんだろう。


 「……………」

 「……………」


 気まずい沈黙が流れる。

 聞こえてくるのは、他の人の楽しそうな声ばかり。


 「……ごめん、綾音。もう別れよ?」


 「なんで?理由を教えてよ!」


 目から溢れ出そうな涙を抑える。


 「だって綾音はいつも仕事ばかり優先するじゃん! 俺が会いたいって連絡した時、断ったでしょ? それも! 何度も!」


「それは! 大事な仕事だったからで…」


 「俺は? どうでもいいってこと?」


 そんなこと全然思ってない。

 そう伝えたいのに、涙を我慢するので精一杯で言葉が出てこない。


 「あのね、俺、思うんだ。綾音のためにも別れた方がいいと思う。……好きでしょ? 仕事が。俺がいたら邪魔になっちゃう」


 彼は、悲しそうな笑みを浮かべ、去ろうとする。


 仕事よりも理人を優先したら良かったのかな……? 

 背中が少しづつ遠のいていく。


 「待って!」


 私はつい、引き止めようとしてしまう。

 彼は少しだけ振り向いた後、こう言った。


 「またね」


 もう会えないのに。

 またね、なんて……ずるいよ。


 心にぽっかりと大きな穴が空いた気がした。

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― 新着の感想 ―
そんな!お別れなんて言わないで! でも、また素敵な出会いが必ず待っているよ! がんばって!ね!
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