保険は効かない
炎に焼かれて
灰になって
肥料に撒かれて
育った
草木を
見る
昨夜の
朝日の
昼間の
午後3時14分
その時は
時計を止め
歩くのを止め
風を止め
固定した
世界の中で
独り歩き出す
自己の事故
保険は効かない
尋ねられることもなく
話すこともなく
声が
とおくで
しゃべりだす
交差の面
の陰り
ひそやかな
葬式のような
しめ縄な
言葉のズレてゆく
感覚的な
味覚
胴としての銅
同としての静
見える世界の
螺旋時空は
絡まりを知らない
あやとりの糸
絡まりを知った
人と人の指先