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revenge04 勇者

上限突破回復オーバーヒール


 少女の傷が治る。


 驚いた顔で、少女が我を見た。


 薄い空色の長髪に、青い瞳。

 膝下までのロングスカートに、どこか街の者とも違う衣装。

 破れた服から見えている肌からの出血は止まったようだった。


「どなたかわかりませんが、ありがとうございます」


 少女が立ち上がり、恭しく辞儀をした。


「うむ。だがまだ、あの魔物は生きている。あとは、汝一人で逃げられるな?」


「逃げません」


「ぬ?」


「もう、逃げないと決めたんです」


「ふっ、ふははははは!! 問おう、少女よ。汝は、勇者か?」


 少女がうつむきながら答える。


「……ちがいます。わたしは、ただの村娘。わたしに、そんな力はありません」


「だが、汝は、他者のために命を賭けたではないか」


「誰だってそうします」


「果たして、そうか? 人間は皆、平気な顔で他者を踏みつけ、自己の利を貪る。それが、人間の性というものだ。汝は、その可能性を超えてみせた。それは、勇者と呼ぶに充分なのではないか?」


「助けたいという想いだけでは、何もできません。力のない、想いなんて⋯⋯」


 少女がぎゅっと自分の体を抱きしめる。


「ならば、今一度問おう。少女よ、勇者とは、血筋か?」


「ちがう、と思います」


「では、勇者とは天賦の才か?」


「それも、ちがうと思います」


「では聞こう。少女よ、汝にとって、勇者とは何だ?」


 我の言葉に、少女がゆっくりと顔を上げた。


「勇者とは––」


 そして、まっすぐに我を見て、言った。


「勇者とは、けっしてあきらめない者のことです!」


「!? ふはははははは!! これは愉快!! 愉快すぎるな!!」


「おかしい、でしょうか?」


「実に! 実に愉快な気分だ! まだ、かような人間が存在したとはな!」


「コラーッ!! オレを無視するなァーッ!!」


 声に振り返ると、ダラハンが馬上から叫んでいた。


「なんだ、まだいたのか。このまま引くならば、見逃してやろうと思っていたのだがな」


「そこの黒い貴様ァーッ、さっきはとっても痛かったぞォ!!」


「兵卒ダラハン。随分出世したようだな? 我の顔、見忘れたか?」


「なんだァ貴様ァ! オレは魔王軍親衛隊のダラハン。貴様なんぞ見覚えも……ん、兵卒ダラハン? 黒髪に赤い瞳……? 凄まじい力と魔力? ま、まさか貴方は……! 魔 王 ア レ ン さ ま?」


「ようやく思い出したようだな。どうだ、今からでも引いてみるか? 二階級特進ぐらいは免除してやってもよいぞ?」


「ぐっ!? ウ、ウルセーッ!! 本物のアレン様がこんな辺境の街で人間を助けているわけがないんだ! 貴様はアレン様を騙る偽物! 偽物ゆえ、雑魚! だからオレでも倒せる! そして、本物のアレン様を倒せば、オレも四天王の一人に大昇格! よし、何の問題もなし! 突撃ィーッ!!」


 ダラハンが勢いよく馬ごと突撃してくる。


「うむ、実に魔族らしいな」


「感心している場合じゃないです!? このままじゃ⋯⋯」


 少女に手を差し出す。


「手を」


「え? こう、ですか?」


 少女が差し出した手を握る。


「? 頭に自然に流れ込んでくる、温かな男の人の声⋯⋯これは、何かの呪文? っ! もしかして、この呪文は!?」


「今の汝ならば、唱えられよう」


「え!? あ、はいっ! あ、あのっ……」


「ぬ?」


 手を繋ぎながら、もじもじと少女が言った。


「い、いっしょに、唱えてくださいますか?」


「ふはははははは!! 良かろう!」


 少女が、繋いでいない方の手の平をダラハンに向ける。


 手をつなぎながら、詠唱を開始する。


「「天紋結びし刻 彼の敵を屠り給え ホーリィライトニング!!」」


 直後、少女の手の平から、指向性を持った稲光が走り、突撃してきたダラハンに命中した。


「ぬ、ぬわーーーーーッ!?」


 一瞬の閃光と轟音の後、絶叫と共に、ダラハンがいた場所に黒い影ができていた。


「や、やったぁ……」


 ほぅと胸をなでおろす少女。


「アレン殿、このボッシュ、共に戦いますぞーッ!」


 彼方からボッシュとギルドに依頼を受けた冒険者達が駆けつけてきた。


「ふむ。流石アレン殿! すでに片付けた後でしたか!」


「いや、魔物を討ち取ったのは我ではない」


「なんと! 手強い魔物だったと聞きます。では一体、誰が?」


「少女よ、名は何という?」


「え? あっ、申し遅れました。わたしは、ティナ・アイオライト。トラース村の村娘です」


「そうか。ボッシュ、聞こえたな。勇者ティナ・アイオライト。それが、魔物を討ったものの名だ」


「なんと! この少女は勇者でしたか!」


「え? いえ、わたしは––」


「魔物を討ったのは汝だ。堂々と胸を張れ。ボッシュ、報酬は、この者に」


 歩き出そうとすると、ティナにマントを掴まれた。


「お待ちくださいっ!」


「ぬ?」


「わたしは、勇者なのでしょうか?」


「汝は、勇者として目醒めた。汝が先刻唱えた呪文。あれは、紛れもなく勇者の呪文だ。勇者にしか、あの呪文は唱えられぬ」


「わたしはまだ、勇者が何なのか、よくわかっていません。ですから、アレン様に色々教えていただきたいのです。わたしを、勇者として、あなたのギルドに加えてくださいませんか?」


「我は、元魔王だぞ?」


「わたしは、勇者です」


「ふはははははは! そうであったな!! よいのか? 復讐の旅かもしれぬぞ? 我と共にいれば、他の勇者や魔王達と一戦交えることもあるやもしれぬ。それでも征くか?」


「かまいません。勇者として、アレン様について行きます」


「くくく。勇者とは、いつの時代も身勝手なものだ。良かろう、ならば元魔王として、勇者とは何たるかを汝に叩き込んでやろう!」


「はい! 勇者ティナ・アイオライト、あなたのギルドに加入いたします!」


 勇者ティナ が なかまにくわわった!!


 そして、復讐がはじまった―――!

ここまで読んでいただきありがとうございます!

評価、ブックマーク、いいね、感想、レビュー等よろしくお願いいたします!


魔王アレン Lv1003→Lv1001

村娘ティナ Lv1→勇者ティナ Lv19


首無騎士ダラハン Lv42→✕

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