revenge33 勇者の戦い
世界樹から魔王城へ帰還してから数日後。
「アレン~、ロムルス達がすぐそこまで来たよ~!」
魔王城の玉座の間の窓から、竜となったトノカが人間の姿に戻りながら飛び込んできた。
「うむ。いよいよか」
「南からロムルス、西からツバキ、東からリアンがきてるよ~」
「くくく。戦力の分散は悪手なのだがな」
「でも、今の彼らは吸収の法で強大な力を得ている。一人ひとりが、侮れない戦力だろうね」
「アレン様。わたしに、ロムルスと戦わせてくれませんか?」
「ティナ?」
「わたしは、勇者です。その事実は揺るぎません。でも、わたしの目指す勇者が本当に正しいのか、勇者ロムルスと戦うことで確かめたいんです」
「ふははははは!! 良かろう。勇者として、存分に力を振るってくるのが良い!」
「はいっ、ありがとうございます。それでは、行って参ります!」
ティナがティルフィングを腰に差し、魔王城を出撃していく。
「良かったのかい? ティナ君を一人で行かせて」
「我の勇者が、偽りの力を得た勇者になぞ負けるわけがなかろう?」
「ずる~いっ! それじゃ、トノカはツバキをボコしてくるね~!」
トノカが窓から飛び出し、竜の姿となって西へ飛んでいった。
苦笑しながら、アガリアが言った。
「やれやれ。ということは、ボクの相手はリアン君ということになるのかな?」
「くくく。ここで寝ていても良いのだぞ?」
「遠慮しておくよ。ああ、アレン」
「うむ。わかっている」
「なら、いいんだ。じゃあ、行ってくるよ」
「うむ。心して征くが良い」
天使の翼を広げ、窓から東へ飛び立つアガリアを見送った後、足を組み、肘をつきながら、玉座に座る。
「くくく。さて、では我はここで、客人を待つこととしようか」
魔王城を出て、南に駆ける。
人間と魔物の戦闘が、どこかしこでも起こっていた。
「!?」
前方から、稲妻の放流。
ティルフィングを抜き、刀身で魔法を受ける。
「ククク。オレの雷撃を受けきるとはな。ただのザコじゃないな?」
稲妻の跡。
焼け焦げた人間と魔族の死体を踏みつけながら、勇者ロムルスが姿を現す。
白髪の髪に、黒い瞳。
眼には、明らかに魔が宿っていた。
「ん? ククク。そうか、オマエはアレンと一緒にいた勇者か。その剣はティルフィング。魔法を無効化する勇者の剣だな?」
「今のあなたは、かつての勇者ロムルスではありません。いったい、今まで、いくつの命を吸収してきたのですか?」
「ククク。オマエは、今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」
「29453枚です」
「クハハハ!! ならそれ以上、枚数が増えないようにしてやろう!」
「!?」
一瞬で間合いを詰められる。
「ふんっ!」
上段の剣。
ティルフィングで受け止める。
鍔迫り合い。
力を込め、ロムルスの剣を弾く。
間合いを取るロムルス。
「っ⋯⋯!」
腕から、血が滴った。
「オーバーヒール」
呪文を唱え、傷を完全に癒やす。
「⋯⋯」
剣を弾いた一瞬の隙に、斬られていた。
「ひとつ、お聞きします。なぜ、他者から力を奪ってまで自分を貫こうとするのです?」
「所詮、生き物は奪うか奪われるかの二択だ。ならオレは、奪う方で良い。日陰はもう沢山なんだよ。オレは、日向の中で他人を踏みつけながら生きていく。どんな手を使おうがな」
「あなたは、勇者なのですか?」
「ククク。ああ、間違いなく、勇者さ。勇者なんて資格はない。ただ、勇者の使える魔法が使える。それだけで、充分に勇者なのさ」
ティルフィングの刀身を見つめる。
白銀の刀身に、わたしの顔が映っていた。
「わたしは、勇者ではありませんでした。でも、今はこうして、勇者としてあなたと戦っている。本当は、逃げ出したくなるほど恐いはずなのに。何故なのか、自分でも考えていました」
ロムルスを見て、言った。
「そして、気づいたんです。わたしが、勇者でいられる理由。わたしが、アレン様を想う時、不思議と、心が温かくなります。そして、それこそが、勇気なのだと」
「勇気? クハハハハハハッ!! くだらない!! 勇気で何が出来る!!」
ティルフィングをゆっくりと空へ掲げる。
「わたしのこの想いが勇気なら。ティルフィングよ! 応えてください!!」
空。
雲が集まり、曇天に変わる。
雲のはざま。
天空から、一筋の稲光が、掲げたティルフィングに勢いよく落ちる。
「何だッ!?」
轟音と共に、ティルフィングに雷が帯びる。
白銀の刀身が、ゆっくりと、透き通る空色の刀身へと変わっていく。
「何だとッ!? 勇者の剣が、あの女の声に応えたというのか!?」
ティルフィング。
握った柄から感じる、確かな力。
「では、改めて。勇者ティナ、参ります」
覚醒したティルフィングを構える。
「認めないぞ! 勇者の力が、くだらない勇気であるはずがない! 力は、ただの力だ! オレが、それを証明してやる!!」
ロムルスが向かってくる。
「喰らえッ! 乱れ雪月華!!」
「乱れ雪月華」
交差する。
「馬鹿、なッ⋯⋯!?」
ロムルスの胸から、血が吹き出す。
「レベルは、オレの方が圧倒的に上だったはずだ……。なのに、なぜ……!?」
「勇者ロムルス、感謝いたします。あなたのおかげで、わたしはまた、勇者として成長することができました」
「くそう⋯⋯。オレの、英雄譚、が⋯⋯」
ロムルスが倒れ、事切れる。
ロムルスの絶命を確認してから、ティルフィングを鞘に収める。
「戻ります、アレン様の元へ」
魔王城に向かって駆け出した。
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勇者ティナ Lv423→Lv485
勇者ロムルス Lv801→Lv801☓




