revenge31 離脱
司祭に連れられ、大司祭の部屋へ通される。
大司祭が我らに気づくと、立ち上がり、敬々しくティナにお辞儀をした。
「これはこれは。英雄ティナ様。お待ちしておりました。まずは、魔王シャルギニスの撃破、おめでとうございます。これで、世界に平和が戻ることでしょう」
「勇者ロムルスを支援して、魔族と戦争をしているとお聞きしました。事実なのでしょうか?」
「これはこれは。流石、お耳が早い。ティナ様の魔王撃破の勢いに乗じまして、大陸の国々の力を結集し、魔族を討滅せんとしているところです。魔族を滅すれば、魔族の脅威は無くなり、より良い平和な世界が訪れることでしょう。どうでしょう、今回の魔族討伐。ティナ様にもご助力願えませんでしょうか?」
「申し訳ありませんが、そのご依頼、辞退させていただきます。わたしは、わたしのやり方で、わたしの助けたい人を助けたいと思います」
「そうですか。ティナ様のその崇高なご意思もよくわかります。依頼の件は、もう言いますまい。では、魔王撃破の祝いに、宴と報奨をご用意いたします。どうぞ、受け取って下さい」
「わかりました。急ぎの用もあります。報奨だけ、頂いていきます」
「よろしいでしょう。エルミアさんも、よく頑張りましたね」
ティナの後ろにいたエルミアが前へ出て、恭しくお辞儀した。
「はい、ねぎらいのお言葉、感謝いたしますわ」
「エルミアさんには帰還早々、急なお話ですが、今回の魔族討伐の任に当たって頂きます。よろしいですね?」
「!? それは⋯⋯」
「貴方は、教会の聖女です。教会の指示には、従って頂きます」
「ですけれど⋯⋯」
「ルミール君の難病の治療の支援をしているのは教会です。それを、ゆめゆめ忘れないように」
「⋯⋯はい、わかりましたわ。聖女エルミア、魔族討伐の任に就かせていただきます」
「エルミアさん⋯⋯」
ティナがエルミアを見た。
エルミアも、ティナをじっと見ていた。
「ティナ様、ありがとうございました。貴方がたとの旅、楽しかったですわ」
エルミアがティナを抱きしめ、耳元で何かを囁いた。
「では、わたくしはこれで。ごきげんよう、皆様」
エルミアがお辞儀し、大司祭の部屋から退出した。
我らも部屋から退出し、そのまま大教会を出る。
「エルミア、辛そうだったね」
「ボクたちと敵対することになるからね」
「しかし元々、エルミアは教会の者だ。こうなることは、エルミア自身も知っていたことであろう」
「クス。知っていたのに、あんなにボクらに協力的だったのかい?」
「わたしは、エルミアさんを諦めません。最後に、エルミアさんはわたしに教えてくださいました。吸収の法に打ち勝つ術を」
「え~!? なになに~!」
「恵与の法。他者から力を集め、一人に渡す術だそうです」
「クス。それで、吸収の法に対抗しようと言うわけだね」
「ですが、この術にも、触媒が必要なのだそうです」
「魔王のそうび?」
「いえ、増呪の珠と呼ばれる宝玉。その珠に、集めた力を閉じ込め、一人に渡すのだそうです」
「増呪の珠、か。名前に、思い当たるものは無いね。何か、エルミア君から特徴を聞いてはいないかい?」
「ええと、手の平サイズで、七色に輝くと仰っておりました」
「ぬ? もしかすると、アレのことか?」
「アレン様、何か心当たりがあるのですか?」
「うむ。数百年前、魔王城の大掃除で要らない物を大量に処分したことがあってな。その際、ティナが言った特徴の珠を見たことがあるぞ」
「え~? そのたまたま、捨てちゃったの~?」
「いや、確か、当時の四天王に、褒美として押し付けた気がする。誰だったかな」
考えていると、アガリアがいたづらっぽそうに笑った。
「クス、そんな役に立たなそうな物を欲しがる四天王なんて、一人しかいないじゃないか」
「? ふははははは!! イグ爺か!」
「今も、健在なんだろう?」
「うむ。我も最後に会ったのは数百年前だがな。イグ爺は死なぬ。故に、ある意味では四天王最強なのかもしれん」
「わぁ、なんだかおもしろそうっ! ねえねえ、早くそのイグ爺っていう人に会いにいこうよ!」
「そうですね。ロムルスと大司祭の動きも気になります。すぐに出発いたしましょう」
「クス。じゃあ、ボクがまた転移魔法で皆を飛ばすよ。世界樹までだと、ここからだいぶ距離もあるしね」
「え? せかいじゅ?」
首を傾げたトノカが光に包まれる。
「何か、苦い顔をしているね?」
ティナを転移魔法で飛ばしながら、アガリアが聞いてきた。
「くくく、ティナ達がいて本当に良かったと考えていたところだ」
「ああ、そうか。イグ爺、男嫌いだもんね」
光に包まれながら、アガリアが苦笑した。
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竜人トノカ Lv320
天使アガリア Lv310




