表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/39

revenge26 勇者

 穴を抜けると、世界が歪み、元に戻る。


 どこかの村の前だった。


「旅人さんかい? ここはトーラスの村だべ」


 いかにも村人といった風貌の男が言った。


「トーラス村。ティナの故郷だな」


「じゃあ、ここは、ティナの夢の世界?」


「うむ。おそらくな」


「トーラス村? 待って。ティナの生まれ故郷って、トーラス村なの!?」


「そうだよ~。エルミア、どうかしたの~?」


 エルミアの顔が険しくなる。


「トーラス村は、数ヶ月前、魔物の襲撃で滅ぼされたわ」


「!? それって⋯⋯」


「ええ。今、あたしたちが見ているのは、ティナの夢。つまり――」


「滅ぼされる前のトーラス村、か。くくく、なるほど。ティナが我をトーラス村に招待しようとした理由がわかったぞ」


「え? そのりゆうは?」


「ティナは、現実を越えようとしたのだ。自分の村が滅ぼされた現実をな。そうなる前に、夢に囚われることとなった」


「行きましょう。ティナが心配だわ」


 村人にティナの家を聞き、家を訪ねる。


 母親に来訪を伝えると、家の中に通された。


「あっ、アレン様!? トノカちゃんにエルミアさんまで!?」


 驚くティナだったが、すぐに笑顔になる。


「今、お茶をご用意いたしますね。少々お待ちください―――」


「ティナ様。お話がございます。聞いて、頂けますか?」


「はい。あらたまって、何でしょう?」


 エルミアが少しだけ間を置いて言った。


「ここは、ティナ様の夢の世界のトーラス村。現実のトーラス村は、もうすでに滅びております」


「⋯⋯はい、存じています」


「!? では、なぜ!?」


「これは、わたしが守りたかった、守れなかった夢。その夢の中で、いつまでも微睡んでいたいと思うのは、いけないことなのでしょうか?」


「ティナ様⋯⋯」


「本当は、わかっているんです。もう、お父さんもお母さんも村の人もいない。でも、少しだけ、現実で夢を見てしまいました。トノカちゃんのお母さんをアレン様が生き返らせた時、もしかしたら、村の皆も生き返せるのだろうかと」


 ティナが我を見る。


 首を横に振って、言った。


「ファニアの場合は、魂が肉体を離れる前に蘇生することが出来た。すでに魂も肉体も滅びた者を蘇らせることは、今の我では出来ぬ」


「夢は、夢のままで終わるのですね。なら、わたしは、この夢の中で―――」


「それが、ティナの願いか?」


「え? はい。わたし、どうしても諦められません。お父さんもお母さんも、村の人達も、失った命を、取り戻したい」


「何故、諦める必要がある? ティナは、勇者なのであろう? 勇者とは、諦めの悪い厄介な者のことを言うのだぞ?」


「でも……」


「ティナ」


「はい」


 優しく笑いかけながら、言った。


「我がいる。何を迷うことがあろう。ティナのその望み、我が叶えてやる。だから、諦めるなどと言うな」


「でも、今のアレン様でも、出来ないと⋯⋯」


「不可能など、承知の上。それを何とかするのが、魔王なのだ。我を、信じてくれぬか?」


「アレン様⋯⋯」


 うつむくティナ。


 やがて顔をあげ、言った。


「信じたい、アレン様を。でも、恐いんです」


「夢が、夢のままで終わることが、か?」


「はい⋯⋯」


「ティナ」


「はい」


「おいで」


 腕を広げる。


「はい、失礼します」


 ティナが我の胸に収まる。


「う、うぅ~~~っ!!」


 ティナが声を押し殺すように泣いた。


 泣き止むと、顔を上げ、我を見つめるティナ。


 まだ、不安で瞳が揺れていた。


「ふははははは! 勇者よ! なにゆえもがき生きるのか? あがきこそわがよろこび。生き抜く者こそ美しい。さあ わがうでの中で幸せになるがよい!」


「アレン様?」


「失礼するぞ、ティナ」


「? アレン様? んっ!?」


 ティナに口付ける。


 伝承法。


『おれは、ゆうしゃになる! そして、こまっているひとたちをたすけるんだ!』


『勇者とは、決して諦めない者のことだ! 喰らえ、ホーリィライトニング!!』


『アンタが、勇者? ふ~ん、強そうじゃん。いいよ、アンタの魔王退治、アタシも付き合ってやるよ』


『アレンさん、破廉恥はいけません、いけませんよ。ええ、わたし、神に仕える者ですから。そこは、厳しくいかせていただきます』


『うぃ~っ! アレン! またあたしの魔法薬の実験体になれ~! 嫌だとは言わせないぞ~! ひっく』


『やった! 魔王を倒したぞ! これで、世界に平和を取り戻せるんだ!』


『どうしてだ⋯⋯。どうして、俺が狙われるんだ。俺が人の敵でしかないのなら、俺は⋯⋯』


『どうだいアレン? ボクの勇者として、ボクの理想に協力してくれないかい?』


『魔王アガリア。俺は、勇者として、お前の理想に力を貸そう』


『これは、ボクが編み出した秘術。キミには、生きていてほしいからね。どうか、受け取ってほしい』


『我が名は魔王アレン。生きとし生けるもの達の、可能性を追求する者なり』


『世界を変えるのは、世界の仕組みの変更ではなく、個の意識の改革。個の可能性を超えれば、世界は変わる。くくく、ならば、我がすべきことは―――』


『アレン。お前、パーティから抜けろ』


『勇者とは、けっしてあきらめない者のことです!』


『はい! 勇者ティナ・アイオライト、あなたのギルドに加入いたします!』


『そういうことだから。トノカ、あの人についていくね』


『……ふんっ、ばーか』


『ボクは、アガリア』


『これは、わたしが守りたかった、守れなかった夢。その夢の中で、いつまでも微睡んでいたいと思うのは、いけないことなのでしょうか?』


『わたし、どうしても諦められません。お父さんもお母さんも、村の人達も。失った命を、取り戻したい』


『何故、諦める必要がある? ティナは、勇者なのであろう? 勇者とは、諦めの悪い厄介な者のことを言うのだぞ?』


『不可能など、承知の上。それを何とかするのが、魔王なのだ。我を、信じてくれぬか?』


『ティナ。我が勇者よ。我は、汝に随分救われたのだぞ? 個の可能性、勇者の可能性を諦めかけていた我が、汝を見て、生き物の可能性も、まだそこまで捨てたものではないと思えたのだ。ならば、今度は、我の可能性をティナに示そう。ティナの望みは、必ず叶える。だから、伝わってほしい。我の想いを』






 口づけから伝わる、温かい力と記憶。


 アレン様の想い。


 そうか。


 あの温かい男の人の声は、勇者アレン様の。


 ううん。


 今の、アレン様の声。


 唇が、離れた。


 涙を拭う。


 アレン様。


 優しく笑っている。


 今なら、信じられる。


 これまでのアレン様の記憶。


 何度打ちのめされても、その度に、アレン様はその悲しみを超えてきた。


 だから、信じられる。


「アレン様。わたし、信じます。アレン様が、わたしを救ってくださると」


 アレン様が頷く。


「そして、受け継ぎます。勇者アレン様の、力と記憶を」


 アレン様が苦笑する。


「アレン様の勇者として、このティナ・アイオライト、全力でアレン様をお守りいたします!」


 世界に、ヒビが入りはじめる。


「またね、お父さん、お母さん、村のみんな」


 瞼を、開けた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

評価、ブックマーク、いいね、感想、レビュー等よろしくお願いいたします!


魔王アレン  Lv951眠→Lv651

勇者ティナ  Lv80眠→Lv380

竜人トノカ  Lv296眠→Lv296

聖女エルミア Lv99眠→Lv99


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ