revenge25 仮初の夢
眼を開けると、自分の部屋だった。
起き上がり、部屋を出る。
「おはよう、トノカ」
「あれ? おかあさん? ここ、どこ?」
「ふふっ、変なトノカ。ここは、貴方の家でしょう?」
周りを見回す。
確かに自分の家だった。
「ん~?」
ほっぺをつねる。
普通にいたい。
「ふふっ、どうしたの?」
「夢かと思って。それとも、今まで見ていたものが、夢?」
わからない。
「ねえ、おかあさん。聞いてもいい?」
「何かしら?」
「トノカ、旅に出たい。もっと、大きな世界が見たい」
「駄目よ、トノカ。外の世界は、私達竜人には危険すぎる世界なの。だから、トノカがもっと大きくなってからね?」
「……そっかあ。これは、夢なんだね」
「トノカ?」
「昔のおかあさんなら、たぶん、きっとそう言ったんだ。でも、今のおかあさんなら、きっと、トノカを止めたりしない。だって、トノカにはアレンがいるから。ここは、アレンのいない夢の世界」
「何を言っているのか、わからないわ」
「おかあさん」
「うん? 何かしら?」
「生きててくれて、ありがとう。たしかに、おかあさんといっしょにいることは、トノカのひとつの幸せ。でも、トノカはわがままだから。一個の幸せだけじゃ、満足できないんだ」
ピコーン!
「紅龍波!」
手から闘気を炎に乗せて打ち出す。
ねじれた紅の闘気が、夢の世界に穴を開けた。
「トノカ?」
「ごめん、おかあさん。トノカ、やっぱり行くよ。でもいつか、またおかあさんと一緒に暮らしたいな」
「そう。うん、いってらっしゃい、トノカ」
「うんっ! 行ってきます!」
穴に飛び込む。
景色が変わり、どこかの城の一室に出た。
「ふふっ、アレン様」
「クス、アレン」
「ふはははははは!! 良きかな良きかな!!」
ベッドに並んで座るティナと天使の人。
二人に膝枕をされながら、頭を撫でられるアレン。
「あの~、アレン?」
「ぬ? その声はトノカか」
「なにしてるの~?」
「ふははははは!! 膝枕だ!!」
「ずる~い!! 二人から膝枕なんてずる~い!!」
「くくく、トノカもするか?」
「いいの!?」
「良かろう」
アレンにゆずってもらって、二人の膝に頭を乗せる。
「ふふっ、トノカちゃん」
「クス、アレンも可愛いけれど、キミも可愛いね」
優しく二人から撫でられる。
「わ~い! すっごいきもちいい~っ!! はっ!? じゃなくて!?」
起き上がる。
「アレン! これは夢なの! このきもちいい膝枕も、ティナも天使の人もぜんぶ夢なの! このままじゃ、トノカたちは夢の中からずっとでられないよ!」
「くくく、トノカも気づいたか」
「!? じゃ、アレンも?」
「無論。エンジェル・ダストとは、技を受けた者を強制的に睡眠状態にし、幸福な夢を見続けさせる技。故に、解眠困難。打破するには、自らの甘い夢に打ち克たねばならぬ」
「じゃあ、ティナは?」
「幸福な夢と悪夢を繰り返し見させられているのだろう。許せんな。そろそろ、この夢にも飽いてきた頃だ。征くぞ、トノカ」
「うんっ!」
アレンが、ティナと天使の人を見つめて言った。
「ティナ、アガリア。我は必ず、汝らを手に入れる。夢などではなく、現実でな。くくく、覚悟しておくが良い! ふははははは!」
アレンが笑うと、夢の空間に穴が開く。
アレンが穴に入ると、後ろを追って穴に飛び込んだ。
景色がまた変わり、なぜか浴室に出る。
「おーほっほっほっほっ!! おっくせんまん長者~~~!!」
巨大な浴槽。
札束の風呂に入りながら、高笑いするエルミア。
「あ」
「やっほ~♪」
エルミアと眼が合う。
「ぎゃあああああ~~~っ!!」
「くくく、我らのことは気にするな。続けるが良い」
「出来るかぁあああ~っ!? さっさと出ていきなさ~いっ!!」
お風呂場から出て少し待っていると、服を整えたエルミアが現れた。
「こほん。先程は、大変失礼いたしましたわ」
「くくく。あれが、汝の夢か」
「悪い? 聖女として成り上がるのも、全てはお金のためよ。お金さえあれば、何も困らないもの」
部屋の扉が遠慮がちにノックされる。
「あの、姉様。よろしいでしょうか?」
部屋に入っていたのは金髪のエルフの男の子だった。
「ルミール!? 起きて大丈夫なのですか!?」
「はい。姉様からいただいた薬で、大分楽になりました。ごほっ、ありがとうございます」
「まだ、安静にしていないと駄目ですよ。大丈夫。わたくしが、貴方の病を治してみせますわ」
「はい、ありがとうございます」
「さあ、部屋まで一緒に参りましょう」
「大丈夫です、一人でも戻れます。お話し中だったのですよね? 失礼いたしました」
男の子がペコリとお辞儀して、部屋から出ていく。
アレンがくくくと笑っていた。
「何よ」
「いや。良い姉様ではないか」
「ふんっ! ほら、行くわよ」
エルミアが杖で部屋の壁を殴ると、夢の世界に穴が開いた。
「もう良いのか?」
「ルミールは、今も苦しんでる。姉であるあたしが寝てる場合じゃないでしょ」
「くくく、そうだな」
「たぶん、次は、ティナの夢の世界」
「行くわよ。あの子だって、今も苦しんでいるわ」
「うむ。征くか」
エルミアの開けた穴に飛び込んだ。
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