revenge22 魔王
魔王城の構造は、前に魔王を倒したときに調べていた。
正門を避け、裏手に回る。
裏門から魔王城の中に入り、転移装置を駆使して、魔物を避け魔王の部屋に辿り着いた。
魔王の部屋の扉を開ける。
部屋に入ると、大音量のファンファーレが流れた。
「!? なんだ!?」
「歓迎するよ、勇者アレン。ボクは、キミを待っていたんだ」
玉座から立ち上がり、拍手する銀髪の魔族。
「お前が、魔王アガリアだな? 覚悟しろ!」
剣を抜く。
「いいよ。ボクの命など、キミにいくらでもあげよう。ただ、その前に少し、キミと話をする時間をくれないかい?」
アガリアが指を鳴らすと、部屋の内装が変化する。
眼の前に現れたテーブルに座り直し、座るよう促すアガリア。
「何の真似だ?」
「言っただろう? ボクはただ、キミと話がしたいだけなんだ。ああ、コーヒーで良いかい?」
首を振ると、アガリアが苦笑する。
椅子とテーブルに罠がないことを確かめると、剣を収めて腰掛けた。
「今日は、良い天気だね」
アガリアが指を鳴らすと、眼の前に酒と食事が現れる。
「良い天気じゃない。魔王城の空は、いつも赤みがかってる。血の色のようにな」
酒と食事をどける。
「俺は、お前と世間話をしに来たわけじゃない。お前を、倒しに来たんだ!」
「何のために?」
「え?」
アガリアは優しく笑いながらも、口調は厳しかった。
「教えてくれないか? キミがボクを倒すことに、何の意味がある?」
「魔族は、人を苦しめる。魔王であるお前を倒すことで、救われる人が大勢いる」
「確かに、それはそうだね。でも、人間も魔族をしばしば討伐と称して害する。魔族から見れば、キミの今言ったことは、そっくりそのまま、人間にも言えることなんじゃないかな?」
「違う! お前を倒すことで、世界に平和が訪れるんだ!」
「仮に、ボクがキミに倒されたとしよう。でも、それで本当に、人間の世界に平和が訪れるのかい?」
「何が言いたい?」
「キミは一度、魔王を倒した。それで、人間の世界に平和は訪れたのかもしれない。でも、次の魔王が現れれば、再び人間は恐怖し、混乱に陥る。恒久な平和など、幻想だよ」
「なら、何度でも、俺が魔王を倒してやる」
「その度に、キミは孤独になっていく。人間の敵になっていく。なぜ、魔王を倒すのに、キミが一人でボクのところに来たんだい?」
「それは……」
「アレン。勇者はね、極論を言ってしまえば、権力者の都合の良い捨て駒でしかないんだよ。勇者が魔王を倒せばひと時の平和を享受できてよし。死ねばそれはそれで良し」
「魔王を倒した勇者は、どうなる?」
「クス。その答えは、キミ自身がもう知っているんじゃないのかい?」
酒に手を伸ばそうとして、止めた。
「魔王を倒し、人々に感謝され英雄となった。ギルドの依頼が、こなしきれないほど増えた。緊急性のあるものだけをこなし、どうでもいい依頼を断った。断った中に、大国からの依頼があった。しばらくすると、いつの間にか、俺は人間の敵になっていた」
「だから、キミはパーティも組まずに、一人でボクのところに来たんだね。でも、ボクを倒しても、きっとキミは英雄には戻れない」
「わかっているさ。魔王を倒す。その中で、せいぜい勇者として華々しく死ねれば良いと思ったんだ」
「なら、捨てようとしているそのキミの命、ボクにくれないかい?」
アガリアを見た。
いたずらっぽそうに微笑んでいる。
「代わりに、ボクの命をキミにあげよう」
「お前は、何がしたいんだ?」
アガリアが苦笑しながら言った。
「なに、簡単な話さ。争いは止められない。悲しむ人間や魔族、他種族は確実に存在する。それは、無くならないし無くすことはできない。なら、ボクができることは、争いの中でも、生き物が生きることを諦めず、成長していけるような世界。そのために、今の世界を作り変えたいんだ。そのためなら、魔族や人間を滅ぼすことになったって構わない」
アガリアが立ち上がり、俺に手を差し出す。
「どうだいアレン? ボクの勇者として、ボクの理想に協力してくれないかい?」
眼を閉じ、考える。
失うものを考えてみたが、ゾッとするほど何も無かった。
立ち上がり、アガリアの手を取る。
「約束しろ。今の言葉を違えれば、お前の命はないと」
「言っただろう? ボクの命は、もうキミのものなんだ。好きにしたらいい」
「魔王アガリア。俺は、勇者として、お前の理想に力を貸そう」
「クス、契約成立、といったところかな⋯⋯!?」
笑うアガリアの顔が、突如驚愕に変わった。
何か。
何かが、アガリアの胸を貫き、俺の心臓をも貫いていた。
槍。
アガリアの背後。
アガリアの影から何かが現れる。
「なぜ、アガリア様が人間などと懇意にするのです? アガリア様は私のもの。誰かのものになるのなら、貴方はもうアガリア様ではない」
「……クス。四天王ラグエル。それは少し、論理が飛躍しすぎじゃないのかい?」
「貴方を誅し、私が魔王となる。貴方はもう、私には必要ない」
槍が引き抜かれ、ラグエルが影へと姿を消した。
その場に崩れ落ちる。
「う⋯⋯あっ⋯⋯」
胸から、血が抜けていく。
自分の体が、急速に冷たくなっていくのがわかる。
「クス。……ごめんね。まさか、ラグエルがあんなことを思っていたなんて、考えてもみなかったんだ。少しの間だったけれど、キミと話せて良かった。キミと心を交わせて、ボクは幸せだったよ」
口から血を吐きながら、アガリアが微笑む。
「これは、ボクが編み出した秘術。キミには、生きていてほしいからね。どうか、受け取ってほしい」
「アガ、リア⋯⋯?」
アガリアが俺の手をぎゅっと握る。
繋いだ手から流れ込んでくる、温かな力と記憶。
アガリアの想い。
傷が見る見るうちに塞がり、全身に新たな力が宿る。
「⋯⋯そうか。これが、伝承法」
微笑んだまま息絶えたアガリアの眼を閉じ、立ち上がる。
「今、受け継ごう。魔王アガリアの、力と記憶を!!」
魔王の部屋に転移する。
玉座には、すでにラグエルが座っていた。
「!? 貴様は勇者アレン!? 何故だ!? 貴様はアガリア様と共に殺したはず!」
「生けるものの想いは、絶えず受け継がれる。我が名は魔王アレン。生きとし生けるもの達の、可能性を追求する者なり」
「ふんっ、生き返ったならば、再び殺すまで。死ねっ!」
ラグエルが槍を構え襲いかかる。
「カオスダーク」
「ぐわああああああーーーーっ!?」
一瞬でラグエルが闇に飲み込まれ、粉々になって消えた。
傍にいた魔物に言った。
「玉座の前に集められるだけ魔族を集めよ」
魔族が集まると、言った。
「我は魔王アレン。没した魔王アガリアに代わり、今より我が魔族を統べる。異を唱える者は前へ出るが良い。いつでも我が相手になろう」
反対は無かった。
「では、全魔族に命ずる。これより、我ら魔族は、人間と魔族それぞれの領地へ侵攻する。人間魔族問わず、腐敗した者達を討ち滅ぼす。征け」
魔物達が魔王城から出撃していく。
「ふはははははは! これで良いのだな? アガリアよ」
アガリアの国葬は、その後、厳かに行われた。
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勇者アレン Lv103→魔王アレン Lv570
魔王アガリア Lv467→☓
四天王ラグエル Lv334→☓




