revenge13 沐浴
レミュゼルの王都を出発して、馬車に乗り、街道を北に進んでいく。
数日間、馬車に乗り続け、もうすぐ魔族と人間の支配地の境界に差し掛かるところだった。
「この先の森に、小さな湖がございます。魔族の支配圏に入る前に、少し休憩していきませんか?」
正面に座ったエルミアさんの言葉に、エルミアさんの隣でトノカちゃんが手を挙げた。
「さんせーい。馬車にのってばかりで退屈してたし」
「わたしも構いません。アレン様は?」
隣に座るアレン様に声をかける。
「良いのではないか。この先、安全に休める場所も限られてくるだろう。今のうちに羽根を伸ばしておくのも悪くはない」
「では、湖へ行きましょう。エルミアさん、道案内をお願いできますか?」
「ふふ。かしこまりました」
森の入口で馬車を降り、エルミアさんの案内で森を進んでいく。
しばらく歩いていると、開けた場所に出た。
「わ~い、湖だ~!!」
トノカちゃんがバシャバシャと湖の中へ入っていく。
「あっ、トノカちゃん!?」
「ふふ。ティナ様、わたくし達も入りませんか?」
「エルミナさん!? でも、服が⋯⋯」
「心配ございません。皆様の水着は、ご用意しておりますので♪」
エルミナさんから水着を渡される。
「用意万端ですね⋯⋯!」
「はい♪」
「え、えーと。では、アレン様」
「うむ。我は周囲を見張っていよう。それとも、覗きに行ったほうが良いか?」
「ぜ、ぜったい駄目ですからねっ!?」
「ふははははは! さっさと着替えてくるが良い。トノカもそのうち、そちらに向かわせよう」
湖から少し離れた森の中で水着に着替える。
途中で合流したトノカちゃんの水着を、エルミアさんが手伝いながら着させていた。
「アレン様、お待たせいたしました」
「トノカ、もっと動きやすいのがいい~。ティナとかエルミアみたいなやつ」
「ふふ。わたくしの水着をトノカちゃんが来たら、すぐ脱げてしまいますわ」
わたしはビキニで、トノカちゃんはワンピース、エルミアさんはビキニにパレオを着た水着。
「アレン様。あの、変じゃないでしょうか?」
「似合っておるぞ」
「よ、よかったぁ⋯⋯」
「ねえねえ、トノカは?」
「うむ。先刻、湖で魚を見たぞ」
「ほんと!? つかまえてくる~!!」
「ふふっ。あらあら」
飛び出して行ったトノカちゃんを追って湖に入っていくエルミアさん。
「アレン様も、行きませんか?」
「いや、我は遠慮しておこう。何があるかわからぬ。見張りは必要であろう」
「あっ、⋯⋯すみません」
「良い。女同士、親交を深めてくるが良い」
「はいっ、ありがとうございます」
魚を追ってものすごい速さで泳ぐトノカちゃんを見ていると、エルミアさんから声をかけられた。
「ティナ様。楽しんでいただけておりますでしょうか?」
「はい。良い気分転換になっていると思います」
「それは良かったです。わたくしの無理に付き合わせてしまっているのだろうかと思っておりましたので」
「遠慮しないでください。エルミアさんはわたし達のパーティの一員なのですから」
「では、ひとつ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「? はい、なんでしょうか?」
「ティナ様はどうして、アレン様のパーティに加わろうと思ったのでしょうか?」
「そうですね。成り行きと言ってしまえばそうなのですが、わたしは、誰かを救いたいとずっと思っていました」
遠くで、小鳥の声が聞こえた。
「でも、当時のわたしに、人を救えるほどの力は無かった。そんな時、アレン様と出会い、わたしは勇者の力を授かったのです」
水中にただよう髪を紐でアップにまとめながら続けた。
「アレン様はわたしに、勇者とは何かを教えてやると言ってくださいました。だから、アレン様の傍で、勇者とは何か、今も学んでいる途中なのです」
苦笑しながら、エルミアさんに笑いかけた。
「こんなところです。ごめんなさい、話していて、わたし自身も、あまりよくわかっていないのかもしれません」
「いえ、ありがとうございます。もうひとつ、聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、もちろん」
「ティナ様から見たアレン様とは、一体どういうお方なのでしょうか?」
「う~ん、難しいですね。強くて格好良くて、わたしが困った時は助けてくれて、たまに明るいけど怖いところもあって⋯⋯あっ!? あとちょっぴりえっちだと思います! あっ、い、今のはなしですっ! 忘れてくださいっ!」
「ふふっ、よくわかりましたわ。ティナ様がアレン様を大切に想われているのは」
「うう~っ!? アレン様には言わないでください」
「ふふ、かしこまりました。わたくしとティナ様、二人の秘密ですわね♪」
「ティナ、エルミア~!! みてみて、こんなに捕れたよ~!!」
トノカちゃんの声のした方を見ると、岸に山盛りの魚。
すでにアレン様が焚き火で魚を焼いていたところだった。
「参りましょう、ティナ様。このままだと、トノカ様に全て食べられてしまうかもしれませんわ」
「ふふっ。はい、行きましょう」
夜。
月が落ち、辺りは暗黒に包まれていた。
「すぅ⋯すぅ⋯」
「むにゃむにゃ⋯⋯あとツナ缶100個。むにゃむにゃ⋯⋯」
泳ぎ疲れたのか、焚き火の傍でゆっくりと眠るティナとトノカ。
寝相で吹き飛ばされたトノカの毛布をかけ直していると、見張りから戻ってきたエルミアが言った。
「アレン様、声をおかけしてもよろしいでしょうか?」
「何用だ?」
「少しだけ、気にかかることがございまして。どうか、こちらへ」
エルミアから案内され、森の開けた場所に出た。
「こちらですわ」
エルミアに指さしたところへ進むと、足元で魔法陣が浮かび上がった。
「セイントアロー」
背後から、光の矢。
後手で掴み、握りつぶす。
「ふんっ!」
魔力を爆発させ、魔法陣を吹き飛ばす。
能力低下の魔法が施された魔法陣のようだった。
「流石は魔王。小細工は通用しないわね」
振り返る。
杖を突き出しながら、不敵に笑うエルミア。
「魔王アレン。あんたは、あたしが倒すわ」
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