revenge12 聖女
あの後も街を見て周り、城下の宿で一泊した後、登城する。
城門で剣を預け、謁見の間に入り、緊張しながら王様を待った。
「よくぞ参った、勇者ティナよ。わしはレミュゼルの王、ハイリヒト13世じゃ。そなたの活躍、このわしの耳にも聞き届いておる」
顔を上げる。
髭を蓄えた、優しげな王様だった。
「この度はご招待いただき、ありがとうございます」
一度、お辞儀をする。
「うむ。魔王の脅威の止まぬ中、そなたのような勇者の力が世界には必要なのだ。今回、そなたを呼んだのも、その働きを表したいという思いがあってのこと。わしからそなたに褒美を送りたい。受け取ってくれるな?」
「はい。謹んで承ります」
「よし。わしからは以上じゃ。褒美は大司祭の方から渡そう」
「あの、国王様からのご依頼というのは?」
「それも、大司祭の方から伝えよう。もう下がって良いぞ」
「はい」
城を出て、馬車で別の区画にある大教会へ向かう。
「王様の依頼、なんで大司祭から伝えられるんだろうね~? たてわりぎょうせい?」
馬車に揺られながら、トノカちゃんが言った。
「権威の問題でしょうか? 王が、教会より上であることを示すための」
「実質的な命令者が大司祭だったばあい、それって、権威はどっちにあるの?」
「う~ん、それは……。アレン様は、どう思いますか?」
「権威の強弱がどうであれ、依頼を受けるかどうかを判断するのはティナだ。何があろうと、我はティナの意思を尊重するぞ」
「はい。う~ん……」
考えているうちに、大教会に着く。
応接間に通され、少し待っていると、壮年の男性が、他に何名かの男性と共に入ってきた。
立ち上がり、お辞儀をする。
「これはこれはご丁寧に。私が、レナス教の大司祭ルドワンです。遠路はるばるお越しいただき、感謝いたします」
隣の司祭と思われる男性からルドワンさんが書面を受け取り、私に渡す。
「王からティナ様への報奨です。多すぎるため、まずは一覧を書面にて。後日、人をやって届けさせます」
「ありがとうございます」
「どうぞ、おかけください。いや、しかし、竜や魔王の親衛隊を倒した勇者がこんなにお若い女性だとは。驚きました」
「わたしは、勇者としてまだまだ未熟です。今回のお手紙も、何かの間違いかと思いました」
「ははは、未来の英雄は、実に奥ゆかしい。そんなに謙遜されたら、ティナ様の前で偉そうに話している私なぞ、何なのかと考えてしまう」
「あの、王様の依頼ですが」
「ああ、そうでしたな。すみません、若い方と話していると、私自身も若返るような思いになるのですよ。こほん、ではお伝えいたします」
意志の強い眼で見つめられる。
「魔王を、倒していただけますか?」
「!? それは、どういう⋯⋯?」
「言葉のままです。勇者ティナ様の力で、魔王シャルギニスを打倒していただきたい。そのために、我が教会は全力でティナ様をサポートいたしましょう。……入ってもらいなさい」
ルドワンさんが指示すると、扉の傍に立っていた司祭が応接間の入口の扉を開けた。
「ごきげんよう。お会い出来て光栄ですわ、勇者ティナ様」
「!? あ、あなたは!?」
「あ~~っ!? 昨日の聖女のひと!」
少しウェーブのかかった金の長髪を揺らしながら、長耳のエルフの女性が恭しくお辞儀をして言った。
「はじめまして。わたくしはレナス教の聖女、エルミア・ルチル・ヘリオドールと申します。よろしければ、ティナ様の魔王討伐の一員として、わたくしをお加えくださいませ」
「え~~~~!?」
驚くトノカちゃんと同じ気持ちだったが、落ち着いてルドワンさんに訊ねた。
「でも、聖女は人々の象徴なはずです。魔王討伐なんて危険なことには」
「だからこそです。勇者の貴女と同じく象徴たる聖女が魔王を倒す。そのことで、勇気づけられる信者がどれほどいることか」
「でもさ、聖女さんってつよいの~?」
「ト、トノカちゃん!?」
手でトノカちゃんの口を塞ぐ。
「ふごふご。だってえ、とうぜんのことじゃ、ふごふご」
「あ、あはは。失礼いたしました。気を悪くしないでくださいね?」
微笑んだままのエルミアさんの代わりに、ルドワンさんが言った。
「手前味噌で恐縮なのですが、エルミアは歴代の聖女の中でも特に強い力を持っておりましてな。貴女がたの旅の足手まといには、決してならないかと」
笑顔のまま、エルミアさんが言った。
「回復魔法と補助魔法なら、わたくしにおまかせ下さいませ。攻撃魔法も、一通り心得はございます」
「危険な旅です。負ければ死ぬ。エルミアさんは、それでも来てくれるんですか?」
「はい。承知しております」
「実は、今回の話が教会で持ち上げられた時、いち早く手を上げたのがエルミアなのですよ。世界のために貢献したいと」
「そうだったのですか」
「ティナ~。いいじゃん、つよいならてつだってもらおうよ~」
「う~ん⋯⋯」
アレン様を見た。
汝の好きにするがいい。
眼が、そう言っていた。
「お二人には申し訳ないのですが、返事は一日待っていただけますか? 明日また来ます。返事は、その時に改めて伝えさせください」
二人を見ながら言った。
「良いでしょう。ティナ様にとっても我々にとっても、大事な決断だ。良いお返事をお待ちしておりますよ」
大教会を出て馬車に乗る。
「ねえねえ、どうしてすぐに返事しなかったの? たしかに、魔王とたたかうのは大変だし、せいじょさんを連れて行くのも大変だけどさ。大変なら、ことわればいいじゃん。なやむところなんて、トノカはどこかわかんないよ」
「うん、そうだよね。でも多分、これはわたしの問題だと思ったの。わたし自身の問題に、みんなを巻き込むことになると思ったから。だから、もう少し考える時間をください」
「ん、ティナがそういうなら、トノカは何もいわない。トノカはティナについていくよ」
「ありがとうトノカちゃん」
宿に戻り、夕食を取り少し休む。
夜。
「むにゃむにゃ。あとごはん、10キロだけ⋯⋯」
寝ているトノカちゃんを起こさないようにしながら部屋を出て、アレン様の部屋の扉をノックする。
「在室中だぞ」
「し、失礼します⋯⋯」
部屋に入る。
「くくく。夜這いとは、我の勇者は随分大胆なようだ」
「ち、ちがいますっ!? わかってておっしゃってますよね?」
「依頼のことであろう?」
「⋯⋯はい。ルドワンさんは言いました。勇者は、象徴だと」
「勇者は聖女とは違う。勇者は、偶像の象徴ではない。実態を伴った象徴だ。故に、人の心に強い光を落とす」
「わたし、魔王討伐の依頼を聞いた時、思ったんです。魔王を倒した後、勇者はどこに行くんだろう? 倒すものがいなくなったとき、勇者はどうなるんだろう?って」
「我が知る限り、魔王を倒した勇者は、破滅するか姿を消す。そのどちらでしかない」
「各地の魔物の討伐や、新たな魔王を倒してもですか?」
「魔物も魔王も、次々と現れる。それを勇者一人で制圧するのは、土台無理な話なのだ。だがそれでも、各地の権力者は魔王を倒した勇者を頼る。そのうち疲弊した勇者は魔物にやられる。運良く生き残っても、その強すぎる力を恐れ、同じ人間から適当な理由をつけられ殺される。守るべき者だった者達に虐げら死ぬのだ」
「強すぎる光は、人の心に深い闇を落とすのですね? そうならないために、魔王を倒した勇者は世界から姿を消す」
「うむ」
「魔王も、同じなのではないでしょうか?」
「ふははははは!! 魔族は人間が思うよりずっと残酷だ。他の命なぞ、その辺の石ころと同じなのだ。魔族の絶対的な価値観は強さのみ。強ければ従い、弱ければ逆らう」
「厳しい世界なのですね」
「はっきりしている分、人間より楽なのかもしれぬ」
「エルミアさんについて、どう思いますか?」
「教会の思惑に乗ってやるかどうかだろう。どちらに転んでも、そう悪くはない」
「最後に。この依頼、受けた方がよろしいのでしょうか?」
「汝の好きにすれば良い。そう言いたいところだが、我としては受けて欲しいとも思う」
「それは、どうしてでしょうか?」
「くくく、我の育てた勇者が、魔王を倒すのだぞ? ふはははは! これ以上愉快なこともあるまい!」
「でも⋯⋯」
「ティナ」
「はい」
アレン様が優しく笑った。
「たとえ世界が全て敵になったとしても、我だけはいつもティナの味方でいよう。ティナの敵は、我が全て滅する。故に、ティナは己が信ずる道を進め。ティナの信じる、勇者の道をな」
「!? はいっ! ありがとうございます!!」
「ふははははは!! ゆうべはおたのしみでしたね!!」
「なっ!? なななっ!? ち、ちがいます~っ!!」
朝。
宿を出て、馬車で大教会に行き、ルドワンさんとエルミアさんの前で言った。
「勇者ティナ、魔王討伐の依頼、謹んでお受けいたします。エルミアさん、これから、わたし達の旅の一員として、よろしくお願いいたします」
「かしこまりました。このエルミア・ルチル・ヘリオドール、みなさまの魔王討伐の一翼として、微力ながらお手伝いさせていただきます。みなさま、どうぞよろしくお願いいたしますね」
「はっはっは、良かった良かった。さあ、今日は宴といたしましょう! 勇者と聖女の旅立ちを祝して盛大に!」
聖女エルミア が 仲間にくわわった!!
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魔王アレン Lv752
勇者ティナ Lv38
竜人トノカ Lv269
聖女エルミア Lv51




