表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

使命感

 街をビーストが食う。そいつは体長約五十メートル、カラフルな体毛に大きな瞳孔を持っていた。ぬいぐるみにすればそれなりに可愛いのに、その巨大で鋭い爪で街のビルを薙ぎ、車を踏みしめ進む様はとても恐ろしい。点ほどの人々はビーストの進行方向と同じ方角へ大移動している。喧騒がここでも聞こえる。私はその様を俯瞰していた。

 大きいビーストは面倒くさい。倒すのに時間がかかるうえ、倒しても死体を片付けるのに多くの人手を割き厄介だ。そもそもビーストが出てくること自体が厄介だ。

「……やるか」

 それでも、一番ダメなのがそいつを放置することだ。重い体を動かし、ビースト目指して駆ける。右手に握りしめている身長ほどある大剣をビーストに突き立てる。ビーストは悲鳴ともいえる雄叫びを轟かし、私の存在を認知する。爪がこちらに向く。近くで見るとその爪は血でまだら模様を作っていて、お前も模様の一部になるんだよ、といった殺意をビシビシ感じる。

 このくらいの大きさのビーストを倒したことは、何回かある。それでも、怖い。その巨体に押しつぶされ、死体も残らないほど無残な残骸になるのを想像してしまって、足がすくむ。そんな姿になってしまった仲間を、今まで何度も見てきた。そんな時、私を助けてくれたのが使命感だった。私はこいつを倒さないといけない。足を動かせ。

 剣をビーストから抜く。ビーストはまた鳴き、爪を私に向けて振り回す。ジャンプでかわし、血で塗装された剣でビーストの目を裂き、その勢いで体を真っ二つにした。ビーストの猛進は終わった。

「……なんだ、今回はでかいだけか」

 震えた手に言い聞かせながら、眼下を見る。大勢の人々は目を丸くしながらこちらを振り向き、やがてそれは笑顔に変わった。

「や……やったぞー! 魔法少女キュイエールがビーストを倒した!」

歓声が街中に広がった。今回の被害は決して小さくない。多くの人が亡くなった、街の修復や倒したビーストの回収にも時間がかかる。……それでも、この人たちを救えた。

 とりあえず、魔法少女としての仕事はこれで終わった。後始末のことはひとまず帰ってから手伝おう。剣をしまって、その場を去った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ