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第1話





 歴史があることだけが取り柄のお屋敷に、灰かぶり(シンデレラ)! といううら若い女性のヒステリックな声が響く。

 その声に、やる気なさげにモップ掛けをしていた少女は、思っていたより早いですね、と無感動につぶやいた。



 汚くはないがみすぼらしい。そんな少女だった。ぼさぼさの灰色の髪にやせっぽちの体。伸ばし放題の前髪の下の瞳はくすみ、よどんでいる。




「……はあ、今日も世界はクソですね」




 モップの柄に顎を乗せながら、振り返る。タイミングはぴったりだった。


「灰かぶり、あんた何やったの!」


 猛スピードで駆け込んできたのは、みごとな巻き毛の妙齢の女性だった。気合の入った化粧に彩られた顔は、盛大に引きつっていた。


「おかえりなさいませ、エレノーラお姉さま。今日は愛しのハンス様としけこむご予定じゃありませんでした?」

「いけしゃあしゃあと! 灰かぶり、あんた、いったいハンス様に何したのよ!」

「何をと言われましても、お姉さまに言われた通り、本日の逢引きのおぜん立てを整えただけですよ。この街一番の貴公子と呼ばれたハンス様のことです、きっと素晴らしいエスコートをしてくださったはずですが?」

「ええ、ええ、それはもうすごいエスコートを……ってそんなわけあるかあっ!」


 エレノーラは手に持っていたモノ――飼犬に着ける首輪と鎖だった――を床にたたきつけた。


「……せっかく用意したのに」

「やっぱりあんたの仕業ね、灰かぶり!」

「仕業といいましょうか。お姉さまがハンス様と首尾よく結ばれるように、ほんの少しだけハンス様の背中を押しただけなのですが?」

「どういう押し方したら、いきなり四つん這いになったかと思ったら、『き、君なら僕を犬扱いしてくれると聞いたんだ』って言いながら鎖の持ち手を渡すことになんのよ! ドン引きよ!」

「あー、いきなりそこいっちゃったんですか……」


 エレノーラお姉さまは突然のことに弱いから、ちゃんと前置きするようにと伝えましたのに、とぼやく。


「申し訳ありません、お姉さま。ですが、ハンス様の心根は今間違いなくお姉さまに向いております。もう少し私のほうで調整しておきますね」


 少女はそこで間を置くと、姉のほうに視線を向けた。


 エレノーラの背中を嫌な汗が流れた。彼女は見た。灰色の前髪の奥から、死んだ魚のようなよどんだ目が、こちらをジトっと見つめていた。


「それに、お姉さまも、鎖を手渡されたとき、甘いときめきを感じられたはずではありませんか?」


「そ、そんなことは」




「嘘」




 ぴしゃりと言われ、エレノーラはビクッとなった。


 いったい何時からだろうか。メソメソと泣いてばかりだった義妹が、笑わなくなったのは。死んだような目で、ジトっとこちらを見つめるようになったのは。嘘をついても一瞬で見抜かれ、それどころか自分ですら気づかない自分の心根すら見透かすようになったのは――


「っ! もういやぁ!」


 何かがプツリと切れたのか、エレノーラの目からぶわっと涙があふれた。化粧が崩れるのも気にせず、おいおいと泣き出す。


「せっかくハンス様とよろしくやって、この薄気味悪い灰かぶりから逃げられると思ったのにぃぃぃぃ!」

「いやだから、ハンス様のことはまだ間に合いますよ? ちゃんとハンス様は私が調整しておきますので」




「はいはい、あんたは調整とか言わないの」




 ぺしっ、と頭をはたかれる。

 振り返ると、エレノーラによく似た、しかし若干穏やかな雰囲気を漂わせた女性が、あきれたようにこちらを見つめていた。


「あら、ちぃ姉さま」

「まったく、あんたはまたエレノーラ姉さんをこんなにしちゃって」


 彼女は、灰かぶり(シンデレラ)の末の義姉であるアリエノーラといった。灰かぶりとは血のつながりはないが、歳は一番近く、灰かぶりの三歳上だった。


「アリエノーラぁぁぁっ! シンデレラが、またこのシンデレラが!」

「はいはい、泣かないの、エレノーラ姉さん」


 縋りついてくるエレノーラを、アリエノーラはめんどうくさそうに抱き留める。

 次いで、シンデレラのほうに視線を移すと、


灰かぶり(シンデレラ)、お母様がお呼びよ」

「お義母様が?」

「そうよ。ここはいいから、あんたはさっさと行きなさい」

「珍しいですね、お義母様が私を呼ぶだなんて」


 首をかしげる。昔はともかく、ここ最近は継母から何か言われるということはほとんどなかった。理由は簡単。煙たがられているからだった。


 ようやく私を追い出す算段でもついたのでしょうか? とぼやきつつ、踵を返す。


「あんたなんか、さっさと追い出されればいいのよ!」


 シンデレラの背中を、涙目で睨み付けるエレノーラ。しかし、シンデレラは全くの無反応だった。ぼさぼさの前髪の奥の瞳は、変わらずに濁っていた。


 アリエノーラは、少しだけ悲しげな表情を浮かべた。



「まあ、私もあなたのことは苦手なのよね。だからごめんね、クララ」



 そのつぶやきは、シンデレラには届かない。






     ※






 クララ・フォルネウス。


 灰かぶり(シンデレラ)と呼ばれる少女の、それが本当の名だった。歳は数えで十六歳。子爵位の貴族家の長女として生まれた彼女は、本来であれば蝶よ花よと愛でられる立場であった。何不自由なく成長し、一定の花嫁修業の期間を経て、フォルネウス子爵家と縁故のある貴族家に嫁ぐ。そして子を産み、血をつなげる。貴族の子女としてはいたって平凡な人生を送るはずだった。


 しかし、運命の三女神はクララに微笑まなかった。


 転機が訪れたのは彼女が六歳の時。かねてより病弱であった母が亡くなり、後妻として今の継母が嫁いできたことに端を発する。


 フォルネウス家とは親戚筋であった継母は、若くして三人の女の子を産み、そしてこちらもまた早くに夫を亡くしていた。どういう思惑と政治が働いたのか、まだ幼かったクララにはわからない。しかし継母はクララの義母となり、一人っ子であったクララに三人の姉ができた。



 クララ・フォルネウスの受難はここからだった。



 最初はちょっとした意地悪だった。大切にしていたおもちゃを取り上げられるといった、かわいいものだった。しかし継母と姉たちの虐めは次第にエスカレートしていった。王宮勤めで、あまり父親が領地にいなかったことも要因ではあっただろう。とにかく継母たちは幼いクララをいびりにいびった。


 そして父が事故で亡くなると、いよいよイジメは虐待となった。来る日も来る日も罵倒され、召使のように働かされる。私物はすべて取り上げられ、埃まみれの屋根裏部屋に押し込まれた。


 灰かぶり(シンデレラ)と呼ばれるようになったのは、このころだっただろうか。


 クララは泣いた。辛くて、苦しくて、けれど逃げ場所はどこにもない。おとぎ話のように、自分を助けてくれる王子さまは現れない。


 そしてクララはある日、ふいに悟ったのだった。




 ――ああ、この世界は……クソなんだ……!




 そうして彼女は笑わなくなり、ドロリとした濁った目をするようになったのだった。






     ※






 フォルネウス家の屋敷の最奥。そこに、クララの継母である女性の部屋があった。


 ノックを四回。入室許可の声を待ち、クララはしずしずと部屋に足を踏み入れた。


 果たして長椅子に気だるげに寝そべっていたのは、ブルネットの髪の女性だった。見た目はまだまだ若く、美しい。とても三人の子を産んだとは思えないほどだ。とはいえ、その顔は頭痛をこらえるかのように歪んでいた。


 彼女の名は、ジスティカ・クロード・フォルネウス。クララの継母であり、今や没落しつつあるフォルネウス子爵家の女当主を務める女傑だった。


「ごきげんよう、お義母さま」

「まったく、いつまで待たせるんだ」


 ジスティカはクララのほうを見ようともせず、そっけなく答えた。ローテーブルの上には、蒸留酒の入ったグラスと、手紙と思しき書類がおかれていた。どうやらこの女領主は、まだ日も高いうちから飲んだくれているようだった。


 クララはチラとテーブルの上の手紙を見た。上等な紙が使われていた。とても今の貧乏なフォルネウス家では手が出せないものだ。


 ジスティカはグラスに残っていた蒸留酒を一息にあおった。


「安酒だな。まずいったらない」

「それで、御用とはなんですか、お義母さま?」

「お前の奉公先が決まった」


「……奉公? この私が、ですか?」


 ジトっとした目を少し見開く。


「てっきり、場末の娼館に売られるか、遺産目当てにどこぞのご老体に嫁がされるかだと思っていたのですが……よくもまあ、こんなみすぼらしい小娘を受け入れてくださるところがありましたね?」

「お前がそんなだから、いらん苦労をする羽目になったんだ」


 ジスティカは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


「それで、いったんどんな酔狂な奉公先ですか?」

「アンフィリア公爵家だ」

「……は?」


 いったい、この継母は何と言ったのだ? 公爵家?


「アンフィリア公爵家の名前くらい、お前でも知っているだろう?」

「はい、まあ。この国の中でも一、二を争う大貴族ということくらいは」

「その大貴族様のお姫様が、専属の侍女を探しているという話があったんだ。なかなかなり手がいないらしい」

「普通、公爵家の侍女ともなれば、引く手あまたのはずではないのですか?」


 王族を除けば、公爵家は最も位の高い貴族だった。そもそも高位貴族の侍女というのは、その辺の召使とは全く違う存在だった。まず、貴族の子女しかその職に就くことができない。たいていは、縁のある下位の貴族家の子女が、行儀見習いや顔をつなぐために就くものだった。そういう意味では、公爵家とお近づきになりたい者など、吐いて捨てるほどいるはずだ。


 普通に考えれば、こんな没落した子爵家の、こんなみすぼらしい小娘に話が来るはずがないのだが――


「……そのお姫様に、何かあるということですね?」

「おおかたそんなところだろうが、私の知ったことじゃない」


 十分な支度金はもらっている、とジスティカはテーブルの上の手紙をつついた。

 小切手でも入っていたのだろうと、クララは小さく溜息を吐いた。


 どのみち、自分には拒否権はないのだ。娼館に売り飛ばされなかっただけ、まだマシというものだった。


「四日後には迎えが来る。それまでに準備を整えておけ」


 わかったなら出ていけ、と継母。クララは小さく一礼すると、継母の部屋を出た。

 廊下に出たところで、ドアのほうを肩越しに見つめる。


「そういえば、この部屋、もとは私の部屋でしたね」


 だからどうした、とクララは自嘲した。いまさら浸るような思い出など何もない。

 


 四日後、クララは迎えに来た公爵家の馬車に乗り、生まれ育った生家を後にした。

 見送りは、誰もいなかった。






     ※






 馬車での旅路は、思っていたよりクララの心を慰めてくれた。


 まずもって、クララは今までほとんど生家の屋敷を出たことがなかった。召使か、ともすれば奴隷のように働かされていたのだから当然だった。遠出したことなど、数えるほどしかない。そんなクララにしてみれば、流れる景色を眺めるだけでも新鮮だった。


 寡黙な御者の操る馬車は、途中で馬を変えつつ、ひた走った。クララの生まれ育ったフォルネウス子爵領を抜け、街道を進む。最初は振動がひどく、クララの薄い臀部に多大な痛みを生じさせていたが、次第に揺れも少なくなってきた。


 それだけ道にかけられるお金が違うんだな、とクララ。王都が近い証拠だった。


 クララが奉公に出されるのは、アンフィリア公爵領の本邸ではなく、王都にほど近い別邸とのことだった。クララが仕えることになる件のお姫様は、こちらに居を構えているのだという。王都内に屋敷を構えているのではなく、王都近郊に別邸を構えている。これだけで、アンフィリア公爵家の力がわかるというものだった。


 そうして走ること一昼夜。ついにクララは、新たな職場であるアンフィリア公爵家別邸に到着したのだった。





「はあ、財産というのはあるところにはあるんですねえ……」



 馬車を降りたクララは、思わず目の前のお屋敷を見上げた。とかくに大きく、そして美しい屋敷だった。これで別邸というのだから、公爵領にある本邸はどれほどのものだろうかと、感心するばかりだった。


 脇にある使用人用の玄関に向かうよう言われ、クララは歩みを進めた。庭もよく手入れが行き届いていた。


 しばらく進むと、妙齢の侍女服の女性が、クララを待ち構えていた。腰に鍵束を結わえているところを見ると、どうやら彼女がメイド長らしかった。


 クララは小さく膝を曲げ、


「フォルネウス子爵家より参りました、クララ・フォルネ……」

「あいさつはいりません」


 ぴしゃり、とメイド長。


「早く支度して、お嬢様のお召し替えの手伝いをなさい。あなたも来て早々、暇を出されたくはないでしょう」

「はあ……」


 とりつく島もない、とはまさにこのことだった。

 メイド長にせかされるまま、クララは屋敷内に足を踏み入れた。使用人部屋の隅で、押し付けられたメイド服に着替える。手櫛でボサボサの髪の毛を整え、髪留めでおさえる。こんなものだろう。


「……公爵家ともなれば、侍女用のメイド服でも上等なんですねえ」


 クララはスカートの生地をなでながら、ぽつりとつぶやいた。姉たちのお古以外着たことのないクララにとって、過去最高の手触りと言っても過言ではないものだった。布地はふんだんに使われているのに、手足の動きは阻害されない。きちんと仕立てられている証拠だった。


「少しは見られる格好になりましたね」


 メイド長はクララの頭のてっぺんからつま先までを一瞥し、そう言った。やや眉根がよっているのは、クララのみすぼらしさのせいだろうか。メイド服に着られている感がすごいのだった。


「こちらです。ついてきなさい」


 メイド長に連れられ、クララは廊下を進む。ふと横を見ると、廊下の向こう側で幾人かのメイドたちがこちらを伺っているのがわかった。ひそひそと何かを囁いている。耳を澄ますと、「今度は何日持つだろうか」などと言っているようだった。


 嫌な感じだ、とクララ。どうやらこれから仕えることになるお姫様とやらは、なかなかのものらしかった。お義母様や姉様たちより強烈だったらさすがにキツイな、と他人事のように思う。なるべく目立たないようにやり過ごしてゆくしかない。


「お嬢様は、少々、感情豊かなお方です」


 メイド長の言葉に、絶対に少々ではないな、と確信するクララだった。


「いろいろありまして、お嬢様は今、難しい状態です。あなたもお嬢様の機嫌を損ねないようにすること。よいですね?」

「…………」


 メイド長の言葉に、クララの瞳がドロリと濁った。


 妙だなと、クララは思った。メイド長は、クララに機嫌を損ねないようにと言ったが、本当に機嫌を損ねさせたくないのならば、何かしらの注意事項や気を付けるべきことを言うはずだった。


 しかし、このメイド長は具体的なことは何も言わない。これではまるで、言っても意味がないと思っているのか、あるいは――


「……逆に機嫌を損ねさせたいか」

「何か言いましたか?」

「いえ、何も」


 しばらくして、大きな扉の前に着く。ドアの取っ手は銀だろうか。磨き上げられ、鈍く光っていた。


 ここです、とメイド長が促す。クララは目を濁らせつつ、小さく溜息をついた。どうやら、紹介すらしてもらえないらしい。


 腹をくくり、ノックを四回。

 数秒後、入りなさい、と氷のように冷たい声が響いた。


 クララはしずしずと部屋に足を踏み入れた。とたんにクララの目に飛び込んできたのは、目が眩むばかりの『黄金』だった。


 キレイ、と思わずクララはつぶやく。果たしてそこにいたのは、腰まで届く美しい金髪の少女だった。こちらに背を向けているため、顔立ちまでは分からない。しかし、その立ち姿だけで、見るものを魅了する気品をたたえていた。メリハリのある肢体を包むのは、薄手の下着用のドレスだった。肌が抜けるように白かった。


「遅いわ、すぐに手伝いなさい!」

「は、はひ」


 ピリピリとした苛立たし気な声。思わず変な声が出てしまうクララだった。


 金髪の少女は振り返ろうともせず、両手で後ろ髪をかきあげた。見れば、ちょうどコルセットを締めようとしていたらしい。


 要するに締めろということか、とクララ。すすっと部屋に足を踏み入れると、失礼しますと声をかけ、少女の背後に近寄った。近くで見ると、その金髪の見事さが本当によくわかった。


 どれだけの手間とお金をかければこうなるのだろうか。心の中だけで嘆息すると、クララは慣れた手つきでコルセットの紐を締め始めた。しっかりとクビレを出しつつ、しかしキツかったり息苦しかったりしないよう、締め上げる。


「あら? 上手ですわね、あなた?」


 金髪の少女は、意外そうな声を上げた。


「今までの侍女ときたら、とにかくキツイばかりで、ほとんど初日で首にしてやりましたわ」

「……締めればよい、というものではございませんので」


 ちなみにクララがこんなにコルセットを締めるのが上手いのは、義姉たちのコルセットを毎日毎日締めさせられていたからだった。ちょっとでも息苦しければ文句を言われ、さりとて形が悪くても文句を言われ、その中で磨かれた腕前だった。全くうれしくはない技術だった。


 コルセットを締め終えると、次いでクララは慣れた手つきでドレスの着付けを行ってゆく。刺繍をあしらった薄紅色の見事なドレスだった。少女の美しい金色の髪がよく映えた。


 最後にスカートを整え、完成。クララはすすっと後ろに下がった。


「ふん、悪くはなかったですわね」


 少女は姿見の前で自分の格好を確認し、鼻を鳴らした。ここにきてようやく振り返ると、クララのほうを見る。


 とたんに、金髪の少女は、うげっ、と眉根を寄せた。


「な、なんですのこの貧相でみすぼらしい娘はっ!」


 貧層でみすぼらしい。なかなか的確かつ適切な表現だなと、クララは他人事のように思った。

 クララはひざを曲げ、お辞儀をすると、


「本日よりお世話を務めさせていただきます、フォルネウス子爵家の……」


 そこまで言いかけ、クララは言葉を切った。理由は簡単。自己紹介をするクララを無視し、金髪の少女が踵を返したからだ。そのままズカズカズカとドアに近づいてゆく。


「ナタリア! あなた、どういうつもりですの!」


 ドアを開け、控えていたらしいメイド長に文句を言いまくる金髪の少女。その様子を濁った目で眺めつつ、嫌な予感がするなあ、とクララは心の中でぼやいた。


 そして十数秒後、金髪の少女がもどってくる。

 予感は的中だった。



「あなた、クビですわ」



 そう告げる美しい金髪の少女を眺めつつ、本当に世界はクソだな、とクララは独り言ちる。

 奉公一日目にして、無職となったクララだった。





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