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9 サンドラの危機


「セリーヌ、食事中に申し訳ない。一緒に来てくれ」


いつものようにシモンと中庭でお昼を食べていると、学園にいるはずのないアルフレッドが突然そこに現れたのだから驚きすぎて食べていたサンドウィッチが喉に詰まる。


「んんっ」


胸をドンドンと叩いて何とかお腹の中へと落とした。


「っはぁ…ア…アルフレッド様、一体どこからいらしたのですか?!」


「驚かせてすまない。だが一刻を争う状況なんだ。悪いが今すぐ僕と一緒に来て欲しい」


「アルフレッド様はとても魔力が高く瞬時に移動ができるのよ」


慌てているアルフレッドとは反対に冷静にシモンが教えてくれる。


「あぁ、そうか説明がなかったな。そう、僕は移動魔法が使える。悪いが詳しいことは後でいくらでも説明する。とにかくすぐに王太后のところへ行かなければ」


「サンドラ様に何かあったのですか?」


「ああ、ついたら説明する。とにかくセリーヌに来て欲しい」


あのいつも飄々としていたアルフレッドがこんなにも慌てているというのはよほどの事なのだろう。


「わかりました。シモン、ごめんなさい後の事をお願い」


「大丈夫よ。アルフレッド様セリーヌは一応女性ですのでできれば丁寧にお願いします」


「わかっている」


「一応っ」


と言い終わらない内に「失礼する」と言って肩を抱き寄せられた瞬間景色が変わった。


「ここは…」


「ここは王太后の部屋だ。この奥に寝室があっておばあ様がいるのだが、呪いが発動してしまって今は意識がない」


「そんなっどうして…お薬はどうされたのですか??」


「どうやら薬がすり替えられていたらしい」


「そんな事が…」


「以前街で苦しんでいる王太后を助けたのは君だろう?」


(どうしてアルフレッド様が…)


「先日呪いの発動を抑えてくれた魔女の子がいたと言う話を聞いていたんだ。その後に、お茶会なんて滅多に開かないあのおばあ様がセリーヌを招待したと聞いてそうだろうと思っていた」


申し訳なさそうにしつつも、真っ直ぐに目を見て助けてほしいと懇願されては何もしないわけにはいかない。


「そうですか…わかりました。私にもう一度呪いの発動を抑えて欲しいという事ですね?」


「ああ、本当にすまない…だがこのままだとおばあ様は…」


「いえ、私に出来るかわかりませんが…出来るだけのことはいたします。サンドラ様に会わせて頂いてもよろしいですか?」


「よろしく頼む」


「はい!」


と決意を固めアルフレッドの後に続いた。


寝室に入ると、何人かがベッドを囲んでおり、その真ん中に寝ている人がいる。姿はまるで別人のように見えるが王太后サンドラなのだろう。


(以前の時よりももっとお年を召したようにみえるわ…これが呪いなのね…)


「それではやってみますので少し離れていて下さい」


「わかった、よろしく頼む。皆も離れてくれ」


誰も何も言わずスッとベッドから離れた。そうして全員が後へ下がったところで、セリーヌはサンドラの胸に手を当てて呪文を唱え始める。


手から白い光が輝き出しその光が段々と大きくなる。


部屋にいる者たちは固唾をのんで見守っていた。


(何だか重々しいわね…この何か引っかかるような感覚の物が呪いの元なのかしら)


呪文を続けながら注ぎ込む魔力量をさらに増やしていく。


段々呪いの元が小さくなっていくような感覚はするけれど中々しぶとく居座っている。



(…っ何?!急にものすごい力で押し返されるっ…)


セリーヌの息も次第に粗くなっている。


「…っ、はぁ…はぁ…はぁ…押されるっ…」


それでも負けじと魔力量をさらに増やす。セリーヌは本来負けず嫌いなのだ。


「セリーヌ!もういい、これ以上続けたら君が危ない!」


とアルフレッドが叫んでいるが、ここで止める訳にはいかないと力を弱める事はしない。


しかしここまで魔力量を全開にしたことはないセリーヌは段々と意識が朦朧としてきた。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


「セリーヌ!」


(サンドラ様…どうか目を覚まして…神よ…)


「…私に…力を…お貸しください…」


無意識にそう呟いた途端、眩い光が部屋を覆い弾けた。


「っく、何だこの光はっ」


光が消えると、そこにはいつもの赤髪の王太后サンドラが眠っている。


そしてその傍らにはセリーヌが倒れ込んでいた。


「大丈夫か!セリーヌ!」


声をかけても揺さぶってもセリーヌの目が開くことはない。


セリーヌはそのまま深い眠り引き込まれて行った。

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