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31 あの時②

二人を連れて王太子の執務室へと移動したアルフレッドは、着くなりすぐさま国王に面会に行った。


執務室に取り残された二人はその場にいるよう言われアルフレッドを待つのみなのだが、ソワソワと落ち着かない。


そこへ執事のサイラスが二人にお茶を運んでくる。


「落ち着かないでしょうがもう少しお待ち下さい」


「サイラス殿、アルフレッド殿下は一体何をなさるおつもりなのですか?」


ロナウドはあまり気が長い方ではない。


「私からは申し上げられませんが…しかしセリーヌ様の為に動かれている事は間違いありません」


「そうですか…」


そう言われてしまっては黙って待つしかなさそうだ。


お茶を飲む気にもなれないが、飲まないわけにもいかずカップを持ち口をつける。


実際にはそんなに待たされていないのだろうけれど、とても長い時間のように感じていた。


カップのお茶が半分程度に減ったところで突然目の前に国王とサンドラを連れたアルフレッドが現れた。


執事のサイラスは慣れたものでさっと二人をソファに案内し、いつの間にかお茶も用意されていた。


慣れていない伯爵とロナウドが声を出す間もなく目を丸くしている間に全てが整っていた。


そんな二人に構わずアルフレッドが話しを進める。


「待たせてすまない。今は緊急だから挨拶はいらない。北山の山頂にある湖の畔に小さな宮殿があるのだが、そこにある鏡とこの城にある鏡で繋がることができるんだ」


突然現れたかと思うと、挨拶もできないままさっさと話しを進めるアルフレッドに普通の者なら目を回すところだろう。


しかしマルグリット家の男二人は非常事態には慣れている。セリーヌのお陰で、というと当の本人は拗ねるだろうが。


一瞬驚きで固まっていたが、挨拶はいらないと言われたので言葉にはしないが、左胸に手を当て国王と王太后に頭を下げアルフレッドに向き直る。


「鏡ですか…しかし母はそのことを知っているのかわかりません」


「それは心配ないわ」


王太后サンドラが口を開く。


「アルフレッドがどんどん話しを進めてしまってごめんなさいね。あなたは少し落ち着きなさい」


サンドラに嗜められたアルフレッドは心なしか小さくなっているように見える。


「あなた達北の魔女一族の長であるクリスティアとは古くからお付き合いがあるの。それで、クリスティアが湖に行くときは宮殿の鏡を通して時々話をしているのよ」


伯爵は母親が王太后と交流があると初めて知る事だったので内心は物凄く驚いていたが、セリーヌとは真逆で顔には一切出ていなかった。


「そうでしたか、ではその鏡を使えば母と話ができると言う事ですね。ですが、それは我々などが使わせて頂いても宜しいものなのでしょうか」


「あぁ、本来は貴族といえども存在すら明かさないこの国の秘宝と呼ばれるものだが、セリーヌは王太后を二度も救ってくれた命の恩人だ。そのセリーヌを救う為なら惜しまない」


静かに話しを聞いていた国王が口を開いた。


「国王陛下にそのようなお言葉を頂けるとは、我が娘も幸せです」


深々と頭を垂れる伯爵とロナウドに頭を上げるよう国王の声が低く腹に響く。


「今はとにかくセリーヌを救う事に集中してくれ。アルフレッド、鏡の間に二人をお連れしろ」


「はい。では一緒についてきてくれ」


「わかっているとは思うが、この事はもちろん内密に。私は二人の事を信じているぞ」


国王陛下に言われなくてもそのつもりだが、あえて念を押してくるところがそれほど重要な事なのだと思わされる。


万が一にもない事ではあるが、もし裏切った時にはこの国王は淡々とした表情で切り刻むのだろうかと思うと赤の魔王と呼ばれる男でもゾクリとする。


「ご心配には及びません。セリーヌを助けてくださるご恩を仇で返すような情けない我々ではございません」


「ふっ、そうだな」


そう呟いて国王は自室へと戻って行った。


そしてサンドラも一緒に4人で鏡の間へと移動し、早速サンドラが鏡の前でクリスティアを呼んだ。


魔法は身近にあるけれど、遠くにいる者が目の前の鏡に映る様はなんとも不思議な光景だった。


感心している間もなく、サンドラから声がかかり、伯爵は母親と鏡越しでの対面となった。


今は山に籠もりそこにしかない貴重な薬草を採取し、特別な薬を作っている時期なのだ。

そのため着ているものはとても簡素なものだけれど、それでも品の良さが滲み出ている。こうして見るとやはりセリーヌに良く似ている。


「母上、お久しぶりです」


「ロンベルク久しぶりね。ここであなたと話すという事は何か余程の事があったのね。」


「はい、急を要するので結論から申し上げます。セリーヌが先程何者かに攫われました。恐らくウォルドナー教会が関係しているかと思われます。数日前にも南の方で全身黒い布で覆われた二人組みに攫われかけた事もあり私達はそう考えております」


「ウォルドナー教会…やはり動き出したのね」


「母上はウォルドナー教会の事を何かご存知かと思い、こうして国王陛下と王太后様にもご協力頂いてるのですが、やはり何かご存知なのですね」


「ええ……わかりました。とにかくセリーヌを助け出すことを最優先に考えましょう。詳しいことはまた改めて話します」


「わかりました」


「まずは黒い布で覆われた二人組みの居場所だけれど、私の千里眼で探してみます」


そう言って意識をセリーヌに集中し居場所を探す。

そう、クリスティアの魔法は千里眼なのだ。

ウォルドナーについての情報もあるが一番はこの力を借りる事が目的であった。


この力の事を知る者はごく僅かだ。


やり取りを見ていて一人驚いているアルフレッドだったが、今は一秒でも惜しいので何も聞かずにいた。


「わかりました、セリーヌは王都の南端にある廃墟となった教会でウォルドナー教会が所有する場所にいます。そこは昔孤児院でもありました」


アルフレッドには覚えがあった。王都の南側に位置し、この国の北の山から南へと流れる大きな川沿いにある教会だ。

まだアルフレッドが幼い頃、孤児院の視察で行ったことを思い出した。


「失礼、もしかして入り口に大きな魔女の像がある教会ですか?」


「そのお声は王太子殿下でいらっしゃいますね。いつもセリーヌと仲良くして頂いているようでありがとうございます」


「いや、仲良くしてもらっているのは僕の方だ」


このような状況でもロナウドの目が殺気立つのは勘弁して欲しいところだ。


「王太子殿下の仰る通りです。その教会をご存知なのですか?」


「ええ、昔孤児院の視察として行ったことがある。場所はわかっているからこのまま僕が助けに行く」


「いえっ、まさかアルフレッド殿下にそこまでしていただくわけには参りません」


伯爵はすかさず返すがアルフレッドはこうと決めたらてこでも動かない事をサンドラは良く知っている。


「セリーヌは私の命の恩人でもあるのだから遠慮する事ないわ。それにアルフレッドが移動魔法で行くのが一番早いわね」


「ええ、場所もわかりましたしすぐに行ってまいります」


「っでは、私も一緒に…」


ロナウドが着いていこうとするが、一人の方が身軽で動きやすいからとあっという間に姿を消した。


セリーヌの兄であり騎士でもあるロナウドは己の力のなさに打ちひしがれている所へサンドラとクリスティアに慰められ増々落ち込むのであった。



********



廃教会へと移動したアルフレッドは剣を抜きセリーヌのいる部屋を探す。


(クリスティア殿は川が見える方の部屋にいると言っていたな)


気配を殺しながら素早く部屋を見て回る。


階段を上りそろりと覗くと


(いた!あの黒いやつはやはりこの前の…)


見張りとはいえまさかここまで追ってくるとは思っていないのだろう。油断しているすきに制圧する為には音を立てず近付く。


アルフレッドは見張りの目の前に移動魔法で移動し、相手が気づく間もなく気絶させるつもりだったのだが、相手も高度な魔法を使えるだけあり気づくのが早かった。


アルフレッドの剣を交わしながら同時に剣を下から振り上げてきた。

寸でのところでアルフレッドもかわしたが、少し顔を掠ってしまったようだ。


しかし剣の腕はアルフレッドの方が一枚上手だった。峰打ちで気絶させるまで一瞬の出来事であった。


そしてセリーヌの名を呼びながら扉を蹴破り中へ入ると、今にも涙が零れ落ちそうなセリーヌの姿があった。


すぐにでも抱きしめたい気持ちを抑えているというのに、もう一人の黒い男がセリーヌを抱え刃をむけている。


(セリーヌに触るな!)


と男に対して殺意が芽生えるが、冷静さを失えばセリーヌが危険だと言い聞かせ何とか己を落ち着かせる。


その男はなぜか外で気絶している方を気にしているようでセリーヌを諦めた。


(小間使い程度の者かと思ったが、魔力量といいあちら側にとって重要な人物かもしれないな…)


そう思いながらもアルフレッドはセリーヌを抱きかかえてマルグリット邸へと移動したのだった。




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