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26 マルグリット家のお茶会②



「あっ、もうすぐシモンが来る頃ね」


時計を見るとそろそろ約束の時間だ。


シモンを出迎えようと思いエントランスまで行くと執事のロニーが誰かを見送ったようで扉を閉め、その手には手紙を持ってこちらへ歩いてくる。


「ロニー誰だったの?」


「はい、王家からの使いの方でアルフレッド様から伯爵へお手紙のようです」


「アルフレッド様から?そう…何か進展があったのかしら」


その内容が気になるところだが、ちょうどその時リリアンからシモンが到着したと知らされてエントランスから外へ出る。


シモンは馬に乗ってくるかと思っていたらどうやら馬車で来たようだ。

珍しいと思いつつ降りてくるのを待っていると、シモンが降りそれに続いてなんとアルフレッドが降りてきた。


(えっ?!どうしてアルフレッド様が?!)


困惑しているセリーヌの顔を見るなりニヤリとシモンが笑う。してやったりという顔だ。


(シモン?!ちょっと…どうしたらいいの…)


「やぁ、セリーヌ。今日はお茶会に招待してくれてありがとう」


「いえっ、ア、アルフレッド様こそお忙しいのに来てくださってありがとうございます」


ただの挨拶でさえ顔が赤くなっている。今までどんな風に接していたのかわからなくなってしまうようだ。


「賑やかな方が楽しいですから。ね、セリーヌ」


余裕の笑みでシモンがアルフレッドの後についている。


「はっははい」


セリーヌはしどろもどろになりながらも、できるだけ冷静を装っている。つもりだ…


「これはアルフレッド殿下、お待ちしておりました」


そこへロナウドが登場する。


今度はシモンに落ち着きがなくなり始めた。


「シモンも久しぶりだな」


「えっ…あぁ、あぁ久しぶり」


(ふふふ、シモンのあの慌てぶりを見たら少し落ち着いてきたわ)


この勝負は引き分けというところだろう。


「ロナウドがこんなに騎士団を離れるのも珍しいな。あれから変わりはないか?」


「ええ、騎士団の方は大丈夫です。部下には私の不在時にたくさんの宿題を残してきましたので」


「えっ」

「うわぁ」

「お気の毒」


赤の魔王の息子らしくどうやら密かに鬼教官の呼び名がついているという噂はあながち嘘ではないらしい…


ここでふとセリーヌが気づく


「アルフレッド様、今日いらっしゃるのにわざわざ父宛に手紙を送ってくださったのですか?」


「手紙?僕が?そんなものを送った覚えはない」


「えっ?でも先程執事のロニーが王家からのお使いの方がいらしてお父様宛にアルフレッド様からお手紙だと言っておりましたが…」


一瞬の間があり


三人が同時に動き出した。


「父の書斎はこちらです」


ロナウドが先導する形で三人は駆け出した。


その様子で状況を察したセリーヌも後を追う。


ロナウドは緊急事態のため、伯爵の書斎に着くなりドアを勢いよく開けた


そこには手紙を手にまさにこれから封を切ろうとしているところだった。


「父上!お待ち下さい!」


その声に驚いた伯爵の動きが止まる。


「マルグリット伯爵、僕はその様な手紙を出した覚えはない」


眉間にしわを寄せた伯爵はまさに赤の魔王という名に相応しい。


「では…これは…」


「誰がなんの意図で出したのかわかりませんので一先ずこちらへ」


そう言ってロナウドが手紙を手に取り、アルフレッドを護るようにシモンが前に立つ。


そこへセリーヌも到着したが、アルフレッドに中へ入らないように言われ恐る恐る扉の外から覗き見る。


「何やら魔術が…いや、呪いの類のようなものがかけられているようです」


マルグリット家長男ロナウドはセリーヌほどの魔力はないが、人の魔力量やその種類が見えるのだ。


中でも呪いがかけられている物の鑑別ができる事もあり、騎士団でも重要な存在となっている。


「恐らく、封を開けると開けた者に呪いがかけられるようなものではないかと」


「何という事を…ロニー、これを持ってきたのはどんな者だった?」


「はい、年若い少年でした。14〜15才といったところでしょうか。いつもと違う方でしたので初めは変だと思ったのですが、今日はいつもの方が他に急用を申し付けられたので変わりに来たと。王家の紋章入りのジャケットを着ておりましたので…」


「伝達係に今はそれほど若い者はいなかったはずだ」


アルフレッドの言葉でこの手紙は何らかの悪意を持って送られた可能性が高くなってきた。


「あの…その手紙の呪い私に解かせてもらえませんか?」


セリーヌが扉の外から手を挙げている。


ギョッとした一堂の視線が一斉にセリーヌに注がれる。


「あのっ、前に呪いを解いた時のように解けると思うのです」


それはサンドラを助けた時の事だ。


「いや、あんな事は二度とさせるつもりはない」


ロナウドは強く否定するが、セリーヌは引き下がらない。


「あの時は無我夢中で魔力量の調整が出来ていなかったのですが、今はできます。それに、最初にサンドラ様の呪いを抑えた時には気を失う事はなかったので、調整ができれば良いのです」


「いや…それでもお前に何かあってからでは遅いのだ」


「そうだな、それは僕も同感だ」


「どうか私を信じていただけませんか?このままでは何も進みません。私が呪を解くのが一番手っ取り早いのですから」


伯爵も腕を組みさらに険しい表情で目をつぶって何やら考えているようだ。


「皆さん、お忘れのようですがセリーヌの頑固さは並のものではありませんよ」


シモンがため息を付きながら諦めた方が良いと話す。


「セリーヌを止める事よりも、いざという時に支える事を考えた方がいいかもしれません」


その言葉でアルフレッドはハッとした。


(そうか…シモンのいう通りかもしれない)


「そうだな…セリーヌが倒れないよう僕が援護しよう。幸い僕も魔力量が多い方だからね」


「いやっ、王太子殿下にそんな事はさせられません」


慌てるロナウドを手で制した。


「大丈夫だ、心配ない。それにそんな手紙の封印にそれ程強い呪をかけているとは思えないしな」


「…確かにそうですが…」


ロナウドにもそんなに強い呪いには見えない。


「これで決まりですわね」


そう言うやいなや、セリーヌはつかつかと手紙の前まで来たかと思うと、すぐさま手紙に手を乗せて呪文を唱えた。


伯爵とロナウドの止める間もなくである。


一瞬白く光ったあと、手紙から呪が消えた。


「ほらっ、何ともありませんわ」


両手を広げて見せる。


「っ…はぁぁ…全く…お前を見ていると心臓がいくつあっても足りないよ」


胸を撫で下ろす伯爵とロナウドは未だにセリーヌに振りまわされっぱなしだ。


「本当に変わりはないか?」


アルフレッドも気にしている様子だ。


「はい、何も変わりませんわ」


「そうか、それならいい。では手紙の中身を見てみよう」


そうしてアルフレッドの合図によってロナウドが慎重に手紙を開いていった。


そこには一枚の紙が入っていて、赤い字で大きく


“今夜お前たちが隠している宝物をもらいにいく”


とだけ書かれていた。



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