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24 恋というもの


いつもの場所で侍女が届けてくれたランチボックスを広げ、今日もセリーヌはサンドウィッチにかぶりつく。


シモンには帰ってきてから一連の事を話して聞かせた。


「そう…兄上は覚悟を決めたのね」


「本当に素敵なお二人よ。私はお二人に幸せになって欲しい」


「そう、それじゃあ応援するしかないわね。でもこれからが大変よ。特に兄上はね…」


「侯爵様お怒りよね…」


「まあね、アルフレッド様は何と報告するのか…」


「シモンは平気なの?」


「ええ、心配しなくても大丈夫よ。それにしてもロナウドは容赦ないわね」


話しを変えてくる辺あまり大丈夫な状況ではなさそうだが、シモンにそう言われたらそれ以上聞くことはできない。


「ええ、まさかいきなりダニエルお兄様をぶっ飛ばしてしまうなんて思わなかったから…」


「あんなにクールなのに妹を溺愛してるものね」


大事にしてくれているのは嬉しいが行き過ぎも困るというもの。


だが、かわいい妹が傷つけられたのだから当然といえば当然だ。


「それに、一番聞きたかったのはアルフレッド様とのことよ!二人で師匠の所に行ったりして、あれからどうなったの?!」


「どうって、何もないわよっ」


「何もないわけないでしょ?だってあなた襲われたときアルフレッド様の名前を呼んでたし、アルフレッド様も当たり前のようにあなたを守っていたじゃない」


あの時は咄嗟のことで無意識だったけれど、よく思い返してみると確かにアルフレッドの名を呼んでいた。


「だって、あの時は咄嗟に…それにダニエルお兄様はミオーネ様がいるじゃない」


「忘れているようだけど、あたしもその場にいたわよ。こんなに付き合いの長いあたしじゃなくアルフレッド様を呼んだのはどうして?」


(どうしてって…アルフレッド様のお顔が浮かんだから…)


「アルフレッド様の顔が真っ先に思い浮かんだのでしょ?どうしてかしらね。自分でよく考えてみることね」


「そんな…だって…」


急に恥ずかしくなって顔が熱い。


「あのね、ヴィクトリアじゃないけどアルフレッド様の婚約者候補に何人も名乗りを上げているのは事実よ。そこにきて滅多にお茶会を開かないサンドラ様がお茶会に招待したお気に入りのご令嬢がいるって貴族の間で噂になってるの」


ミオーネがいなくなり、ここぞとばかりに自分の娘をアルフレッドの婚約者に据えたいと思い画策している者がどれ程いる事だろう。

その者達にとってセリーヌは邪魔な存在でしかない。


ヴィクトリアを婚約者に強く勧めているベネディクト侯爵家はその筆頭といえる。



「あなた、アルフレッド様に婚約者ができてもいいの?」


その言葉で想像してしまった。

アルフレッドの横に素敵なご令嬢が並んで微笑んでいる様子を。


ズキリと胸の真ん中をえぐられたような痛みがはしる。


(あぁ、これが恋というものなのね…)


想像しただけで涙がでそうになる。

いつの間にかセリーヌの中でアルフレッドの存在がとても大きくなっていたことに気付かされた。


「シモン…私はどうしたらいいの」


「ふふっ、やっと気付いたのね。もちろん応援するわよ」


(どうしてそんなにシモンが嬉しそうなのかしら)


「兄上のことであなたを傷付けてしまったし、親友としてあなたには本当に好きな人と幸せになって欲しいの」


「ありがとうシモン。シモンにはいつも助けられてばかりね。お礼と言えるかわからないけれど、今度ロナウドお兄様も誘ってお茶会しましょう」


唐突にロナウドの名前を出されてシモンは困惑する。


「なっ、えっ、どうして急にロナウドの名前が出てくるのよ」


「え?だってシモンはロナウドお兄様の事が…」


「キャー!何を言おうとしてるの!そんな大きな声でっ」


急いでセリーヌの口を抑えた。

こんなに慌てるシモンを見たことがあっただろうか。


「ちょっ、どうして、なんで…誰にも気付かれないようにしていたはずなのに…」


いつも自信たっぷりなシモンが小声になり恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。


(ふふっ、こんなに可愛いシモンが見れるなんて)


抑えている手を離すように指を差して訴えるとそろそろとシモンが手を離した。


「そんなに驚かせるつもりはなかったのだけど、シモン昔からロナウドお兄様の事嬉しそうに見ていたからそうかなと思って」


「……そんなに分かりやすかった?」


「私が気付いたのは最近よ」


「そう…ロナウドにも気づかれたかしら」


「それはわからないわ。お兄様鈍感なところがあるから」


確かに、騎士として強くある事と妹以外に興味はなさそうだが…


「お茶会お兄様は誘わない方がいいかしら?」


「えっ、それは誘っても…いいと…思うわよ…」


両手で赤い顔を隠し指の隙間から目だけが見えている。

冷静さを取り戻そうと必死のようだ。


「わかったわ!せっかくだからダニエルお兄様もミオーネ様もお誘いして今度のお休みに家の屋敷でどうかしら」


張り切ってお茶会の計画を立て始める。


「じゃあ、何か手土産を持っていくわね」


「ありがとう、楽しみにしてるわ!」


(ええ、ええ楽しみにしてなさい…フフフ)


お茶会のことで頭がいっぱいのセリーヌはニヤリと笑うシモンに気付かないでいた。




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