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14 再会②

「シモン!どうしてここに?」


「こっちに向かっていたのだな」


「お前までどうしてここがわかった?」


突然の登場に皆が困惑し同時に声を出す。


「皆同時に話さないで、驚いてるのはこっちも同じよ」


それはそうだろう。


「セリーヌの夢の話を聞いてこの海のことを思い出して調べさせたら、兄上とミオーネ様らしき人物がいると情報が入ってきたので確認しようと思って馬を走らせて来たのです」


シモンはどうやら独自で調べて動いていたらしい。



「そうか、僕もセリーヌの夢の話を聞いてまさかと思ってここに来た。セリーヌにも場所を確認してもらおうと一緒に連れてきたんだ」


ダニエルは黙って話を聞いている。


「それで、実際にダニエルがいたわけだが、ひとまずどこか話ができるところに移動しよう。このままではセリーヌがまた具合を悪くしてしまう」


忘れていたようだが、アルフレッドとセリーヌは海に落ちて下半分がびしょ濡れなのだ。


そして更にセリーヌは病み上がりだ。


「それでいいなダニエル」


「…わかりました。ではこちらへ」


そうしてダニエルの案内で歩いていると小さな木の小屋が見えてきた。


そしてその先には岬も見える。


(あっ、ここは夢で見た場所だわ。そっか、ここが海なのね)


初めての海を目にしたセリーヌだったが、海を鑑賞している場合ではないのが残念。


馬を引きながら後ろを歩くシモンから、ここは昔、兄弟の父であるランドール侯爵の図らいでこの国一の剣の使い手に戦い方を教わったのだと聞いた。


つまり三人にとっての師匠である。

そして総督であるランドール侯爵は昔からとても厳しい人で未だに二人の息子は頭が上がらない。


特にシモンの事は認めていないようだが、当の本人はあっけらかんとしている。



「シモン、その顔の怪我どうしたの?」


「これね…これはここに来る途中でちょっと一悶着あってね…」


「そう、そんなに深くはなさそうだから良かったけど、私が治してあげるわ」


片手をシモンの顔の前でかざすとあっという間に傷が治っていった。


「ありがとう。ここに来るまでの三日間肌のお手入れが出来なくて…」


そう言いながら頬に手を当てる仕草は可愛らしいが、それどころではない。


「ここまで三日もかかるの!?」


「そうよ?あぁ、アルフレッド様の移動魔法で来たなら一瞬よね」


一緒に連れてきて貰いたかったとブツブツ愚痴をこぼしながら馬を引き歩いている。


「ええ、でも途中別の場所に一度降りてここへ来たの」


「あらそうだったの」


「昔騎士団の方たちと一緒に行かれた事があると言っていたわ。討伐にも参加したって」


「あぁ、たぶん初めてここに来る前に寄った森ね。騎士団はそのまましばらく森で過ごしていて、あたし達三人はここへ送られたのよ」


「そうだったの、三人ともそんなに大変な訓練をしていたのね」


「そうだったわね…あたしはとにかくそんな傷だらけになるような事をしたくなくてよく逃げ回っていたわね」


「ふふっ、何だかその光景が目に浮かぶわ」


そうしてしばらく歩いてる間に目指していた小屋についた。


ダニエルが小屋の戸を叩く。


中から低く腹に響くような声で「入れ」と一言聞こえダニエルが扉を開けた。


そこには、小柄だけれど威圧的で殺気が漂う白髭の男性が、椅子に腰かけたままこちらを見ずに突然ナイフを投げてきた。



あまりに突然すぎて声を出す暇もなかったが、アルフレッドがそれを素手で受け止めた。器用に指で挟んでいる。


「ふんっ、常に気を抜くなよ」


「お久しぶりです師匠」


受け止めたナイフをテーブルの上に置いて挨拶するがそれに対する返事はない。


「そこの女、北の魔女だな」


「はっ、はい!北の魔女をご存知なのですか?」


「まあな。その顔、クリスティアの娘か?」


「いえ、クリスティアは祖母です。祖母の事もご存知なのですね」


「孫か…」


何となく複雑な表情を見せる。


改めて自己紹介をし、突然の訪問にお詫びをした。


「いや構わない。クリスティアの孫ならいつでも歓迎しよう」


先程の鋭い眼光から一変して優しく微笑んでいる。こうしてみると、どこにでもいる優しいおじいさんだ。


「ありがとうございます!」


「師匠、急で申し訳ありません。少しアルフレッド様達と話をさせて頂きたいのでここを使わせて頂いても良いでしょうか…」


「好きにしろ」


弟子3人には厳しいようだ。


「シモン、お前は毎日の鍛錬をさぼっていたようだから後で手合わせをする。いいな」


「昨日散々手合わせ頂きましたので結構です」


「口ごたえするな」


そう一言残して小屋を出て行った。


シモンの傷はどうやら師匠によるものだったらしい。


「はぁ…会わずにそのまま帰りたかった…」


項垂れてるシモンの肩にアルフレッドが手をポンと乗せ、無言で頷いた。


「それで、ミオーネはどこにいる?」


皆で椅子にかけながらアルフレッドが話を初めに戻す。


「それは…お教えできません」


「ではどうしてこうなったのか、それは聞いてもいいだろう?」


本来ならば王太子に問われれば答えなければいけないはずで、断わるのであれば命がけだ。


もちろんダニエルはそのつもりだろう。


しかしアルフレッドは無闇やたらに人を切るのを良しとしない。


さらに幼馴染で同じ師匠の元で鍛えられてきた同志でもあるのだから。


険しい表情のダニエルがチラリとセリーヌを見る。


「ダニエルお兄様、私も知りたいのです。やはり…私のお守りが辛くなったのでしょうか…」


「いや、セリーヌの事が嫌になった訳では無い。あんな手紙を残していなくなった事は申し訳ないと思っている。だがミオーネ…ミオーネ様を護りたい」


「とても…大切にされているのですね…ミオーネ様の事」


「あぁ」


「お気持ちはわかりました。ですが、どうしてこのような事になったのですか?ミオーネ様のご事情はアルフレッド様から聞いておりますが…こんな大変な事をダニエルお兄様が何も考えずに行動するとは思えません」


「僕も同感だ。常に冷静沈着で家の事、国の事を常に考えているお前が…」


それまで黙って聞いてきたシモンが口を開いた。


「兄上、アルフレッド様にも話せない何か重要な秘密でもあるのではないですか?」


ダニエルの眉間の皺がさらに深くなった。


「僕が調べた所によると、ミオーネ様はいなくなる少し前から城の書庫でこの国の歴史を綴った本があるところで良く読書をされていたと。書庫の管理をしている者が最近のミオーネ様はいつもと様子が違ったと言っていました」


「シモン、その話は初めて聞いたぞ」


「はい、ここに来て所在を確かめてもう少し情報が纏まってからと思っておりました。報告が遅くなり申し訳ありません」


「まぁいい。それで、ミオーネが城の書庫で何かを見つけて、そのせいで二人で姿を消したと?」


「何を見つけたのかまではわかりませんが、女神に関する書籍もあったとか」


ダニエルがシモンの言葉をすぐさま否定する。


「いえ、それは関係ありません。ただ、私がミオーネ様に気持ちを寄せてしまったせいで…このままではミオーネ様はアルフレッド様と結婚し王妃となってしまわれる。その前にと…」


先程まで目を閉じて歯を食いしばっていたが、今は前のめりで必死に訴えている。


(やっぱり…何かよほどの事があるのね…)


ダニエルの必至の様子が、何かを隠していると思えてならない。


その時、静かに奥の扉が開いた。


そこには夢で見たあの美しい女性がこちらを見据えて静かに立っていた。


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