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11 目覚め


「おーい、そんな所まで行くと波に攫われてしまうよ」


「これくらい平気よ」


キラキラと眩しい水面を背に美しい少女が楽しげに足を水に浸している。


男性の方は気が気ではない様子だけれど、その口調からはとても幸せな様子が伝わってくる。


「海が好きなのはわかったが、そろそろ戻ろう」


「もう戻らなければいけないの…」


名残惜しそうに、遠くの夕陽を目に焼き付けるように眺めゆっくりと上がってきた。


その白く綺麗な足首には赤い痣がくっきりと浮かび上がっていた。





「ミオーネ様!?」


夢から覚めるなりセリーヌは飛び起きた。


が、辺を見回すと見慣れない部屋にいる。


そこへ勢いよく扉が開いたかと思うとアルフレッドが飛び込んできた。


「セリーヌ!!」


と呼ばれたと同時に思い切り抱きつかれた。


「えっ?えっ?!アルフレッド様??」


何が起きたのかわからず混乱するセリーヌをぎゅうぎゅうに抱きしめる。


(ちょ…ちょっとこれは…)


「アルフレッド、そんなに抱きしめたらセリーヌが潰れてしまうわ」


その声にはっとしたアルフレッドは我に返り慌てて体を離した。


「す…すまない…」


「いっ、いえ…」


急に赤くなる二人を微笑ましく見ているのは赤髪が美しいサンドラと執事のサイラスだ。


「サンドラ様!!ご無事だったのですね!!」


「ええ、あなたのお陰で。セリーヌには二度も命を救われました。本当にありがとう」


その声を聞いて呪いを抑えようと必死だった事を思い出した。


サンドラが無事だった事が嬉しくてじわりと涙が浮かんでくる。


「そんな、勿体ないお言葉です。お役に立てて良かった…本当に…良かったです…」


サンドラの顔を見てホッとしたのか涙が止まらない。


そんな様子を見ていたアルフレッドも力が抜けたようにフーっと大きく息を吐いて穏やかな表情になった。


涙を拭いながら、ふとこの現状に疑問が湧いてきた。


「あの…それでここはどこなのでしょうか?」


「ここは僕の部屋の隣の部屋だ。そこの扉で繋がっている」


と先程入ってきた扉を指差す。


(んっ?繋がっている?…ということは…もしかして…)


「そうだ、ここはいずれ王太子妃の部屋になる予定だから特に不自由はしないはずだ」


(なっ、なっ、なんてこと!!!)


王太子妃の部屋と聞いて、しかも扉一枚隔てた所にアルフレッドがいたと思うと今度は冷や汗が止まらない。


(どうかこれが夢だと言って…)


「心配しなくていい、今のところはまだ空室だ」


「そういう問題では…」


「まぁまぁ、そこは心配しなくても大丈夫よ。国王も王妃も承知していて、無理やり連れてきたアルフレッドがお世話をするのは当然の事よ」


(あぁ…国王陛下も王妃様もご存知だなんて…)


また気を失いそうだ。


「あなた倒れてから十日間眠り続けていたのよ。何があったのかきちんと説明するけれど、まずは何か食べないといけないわ」


そう言ってサイラスに食事の用意をするように伝えた。


失礼になるからとベッドから降りようとしたセリーヌだったが、まだ体が心配だからとアルフレッドとサンドラに説得され、渋々上半身を起こしたままの状態でいることにした。


ベッドの横にサンドラが腰掛け、その後ろにアルフレッドが立っている。


そうしてセリーヌが倒れてからの事を話し始めた。


目を開けていられないほどの強い光に覆われたあと、サンドラは元の姿に戻りその傍らにセリーヌが倒れていた。


どれだけ声をかけても、意識がないままのセリーヌをアルフレッドがここまで運んできたのである。


医師や治癒師に診せたが昏睡状態に陥っており、いつ目を覚ますかわからないという診立てだった。


そしてマルグリット伯爵夫妻にも来てもらい、セリーヌの力について話を聞いた。


力を使えば使うほど、その後にはこのように昏睡状態となり自然と起きるのを待つしかないという。


もちろん夫妻はセリーヌを連れ帰ろうとしたが、王太后の気迫に折れた形で渋々帰って行った。


「マルグリット伯爵は納得していなかったと思うわ。でも私としてもこのまま帰すわけにいかないし、それに城にはこの国一の医師も治癒師もいるのだから目が覚めるまでこのままでって押し通したの」


サンドラは目を伏せ申し訳なさそうに話した。


「そんな!返ってご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません」


助けに来たはずなのに、結果的に十日間も城で世話をしてもらった者等他にはいないだろう。


「セリーヌ、今回の事は全て僕の責任だ。何も知らずにこんな危険な目に合わせてしまい本当に申し訳なかった」


「そんな、とんでもありません!謝らないでくださいませ!やると決めたのは私です」


ベッドに座ったままでいるのも落ち着かない上に、王太子に謝罪させてしまい益々申し訳無さでいっぱいになる。


「あなたは本当に真っ直ぐね。お礼に何かあなたの望みを叶えさせて欲しいのだけど、何がいいかしら」


「いえ、お礼だなんて!こんなに良くして頂いて十分です」


「何を言ってるの、あなたの体が万全になるまできちんとお世話をするのは当然のことよ。これではお礼にならないわ」


(そういわれても…うーん、どうしたらいいのかしら)


「ふふっ、困らせるつもりはないのだけど、これでは私の気がすまないわ。すぐに思いつかないなら考えておいてね」


そこへサイラスと共にメイドが食事を運んできた。


スープのいい香りが食欲をかきたてる。そのおかげでセリーヌのお腹の虫が盛大に鳴いた。


「ははっ、十日間も食べてないのだからそれはそうだ。あの日もセリーヌを食事中に連れてきたのだったな」


「たくさん食べてね」


「セリーヌ様、ご無事で何よりです。どうぞお好きなものをお好きなだけお召し上がりください」


(あーーー誰か私を永遠に眠らせてー)


という心の叫びも、三人には耳に聞こえたかの如く伝わっていた。


食事の後にはサイラスから知らせを受けた国王陛下と王妃が部屋を訪れ、王太后を救ってくれたことへの感謝を述べられた。


次から次へと王族の方々に囲まれた緊張からかその夜熱を出してしまい、結果その後も王太子妃の部屋で世話になったのであった。



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