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その後の話

「え? そうだったの?」


「あの人、ダンナ様じゃなかったの?」


何も知らなかった課長と係長と牧村先輩は、青くなった。


「そ、それはすまなかった」


「いえ、突然のことで、うまく説明できなくて……」


あの男さえ来なければ、もう、彼氏がチェンジになって、新しい方と結婚した件の説明なんて、もうどうでもいいかなー?と考えていたんだけど。


だって、めんどくさいんだもん。


彼氏の名前なんか誰にも教えていないし、七年越しの恋の行方だろうが、一ヶ月のスピード婚だろうが、ホントーにどうでもいいでしょう?本人以外。


だから、いっそすげ替えて……と思っていたが、本人登場で、それも水の泡になった。



階段室絶叫事件は、しかしながら、牧村先輩のおかげで、究極のザマァ案件として社内に浸透しつつある。


(いろいろあったけど、牧村先輩、ありがとう。心の中で拝んでおきます)


「七年も付き合っときながら、結婚はまだ早いとか抜かしたらしいのよ」


「なんなの? 遊び宣言?」


「勝手なことばっかり言ってんじゃないわよって思うわよね」


「ふふん。そして別の男に取られたと。ま、結婚は焦らないんだし、いいんじゃないのお?」


「それが焦って元さや目指してここまで来たんですって。それがあの階段室絶叫事件」


キャッキャッと笑う声を聞いて、私はラインとか全部切っといて本当によかったと思った。


なんかの拍子に漏れ聞こえたら、ものすごい恨みつらみになってそうだ。


当然、藤堂氏は自宅へも来たらしいが、ジュンくんが在宅していたらしく、瞬殺されたと言う。一緒に住んでてよかった。



課長と係長は、二人とも嫁に怯えつつも自分たちの判断が正しかったことを再認識している。


「俺たちって、もしかして人生の勝ち組なんじゃ……?」



その後、高瀬邸に招かれて、藤堂邸に勝るとも劣らぬ大邸宅(お父上は自営だった)だったり、ちっちゃなお祖母様がちょまっと現れて、「これ、結婚祝」とかおっしゃって現金で五百万ほどいただいたところでお姑さんが「税務署!」と一声叫んで取り上げて、「早くお家を建てなさいな。その時なら、やりようもありますからね」などとにっこり笑ってご教示下すった話など、バクロ話の枚挙にいとまはないが、とりあえず二人の収入でどうにかなる家を借りられたのでよしとする。


「ね? あとは子どもだよね?」


ジュンくんは実は一つ年下だ。


ちょっとだけ高圧的な感じがする藤堂さんとは訳が違う。ずっと甘え上手だ。


「瑠衣ちゃん、お姉さんなんだから、いろいろ教えてくれないと」


甘え上手なのか?エロスケベなのか?


「家族になるんだから、それなりの努力が必要だよね」


膝枕が必要なんですか?


「フフっ……」


満足そう。


背が高いのに、こうやって寝転ぶと、茶色のくせ毛がかわいい。


だが、かわいいなとか思ってはいけない。



携帯には不法侵入されて、周平の名前や履歴は全部消されていた。


両親の元には、婚姻届を出した翌日には何やら立派な(おそろしく高そうな)デパートの包装が送られてきたらしい。

中身はお菓子とかもあったらしいが、カタログギフトだったらしく、添えられた手紙を読んだ両親が慌てふためいて電話してきた。


「結婚決まったそうだけど」


「うん」


「十万円のカタログギフトって、世の中にあったんだね? どうしたらいいの?」


「…………」


それに、どう考えても届いた日がおかしい。


婚姻届を出した日に手配して、翌日に届くわけがない。


問いただしてみると、機嫌良くジュンくんは答えた。


「だって、もしかして、婚姻届、出せないかも知れないじゃん、誰かの反対とかで」


「誰の? 藤堂さんの?」


ジュンくんの顔にあからさまな軽蔑が浮かんだ。


「あ、あんなのどうでもいいよ。一番困るのが瑠衣ちゃんの意見だよね」


「わ、私?」


ジュンくんはちょっと悲しそうな顔になった。


「嫌って言われたら、困るよね。まずはご両親からってことで」


ご両親から? ウチの両親に何するつもりだったの?


「それは、まあナイショ。僕はこう見えても努力の人なんだ」


膝の上の彼は、ニコッと笑う。


「あと、割と執着心があるねって褒められるんだよ」


………それ、本当に誉められてますか?


「フフフ。まずは一人目目指して努力しようよ。かわいい赤ちゃん。ね?」


じっと見つめるジュンくん、目が怖い。



あの、私、今、藤堂さんの気持ちがすごく理解できる気がしてきました。


あと課長と係長の。今更ながらですが。


逃げれば追う。追えば逃げる?それが恋?


「藤堂なんか許さないよ」



えーと、えーと、私の人生、これで正解だったんでしょうか?


「正解だとも。他の人生ないからね。もう、離さないよ」

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