後編
「……まっず」
空腹とのどの渇きが余りにも酷い。
なんとかしようと探すと、ヤシのような木の実を見つけた。
木の実自体は茶色く、バスケットボール程の大きさ。
しかし硬い皮もなんとか剥ける程で、入手もしやすい位置だった。
が、不味い。
「地味な苦みの後に、不快なタイプの甘みを感じる……」
しかし喉の渇きは潤せる。
我慢して、もう二口ほど追加してギブアップした。
非常に気持ちが萎えるが、進むしかない。
結局村にたどり着くまでに一時間以上かかってしまった。
服は泥だらけ、ところどころ虫に刺されている。
お風呂に入りたい。泥のように眠りたい。
でもそれ以上に、ご飯が食べたい。
「……うぇ、なんだこれ」
食堂に入って、文字も言葉も分からないが注文をした。
一応お金はあの金貨が使えた。
出てきたのはパンと肉料理とデザートだった。
しかし、パンが滅茶苦茶に硬い。そして焦げている。
肉料理も肉が硬い。そもそも何の肉なのか全く分からない。
味付けも日本人好みするものではなく、塩味が全然足りない。
極め付けはデザートだ。
小さい桃みたいな果実がデザートとして添えてあった。
先ほどの木の実よりは圧倒的にマシではあった。
しかし、徹底的に味が無い。
甘みが一切感じられない。
強いて言えば、青臭さだけを感じる。
サービスで出てきたお水すらなんか美味しくなかった。
飢餓状態一歩手前になるほど空腹だったはずなのに、半分ぐらい残して店を後にした。
大通りで、何やら騒ぎが起きていた。
馬車が横転している。事故が起きたようだ。
何を言ってるかさっぱりわからないが、酷い怪我をした少女が倒れているのが分かった。
母親らしき人が助けを求めているのは分かる。
流血が酷い。このままでは命にかかわる。
俺は駆け寄って、魔法を唱えた。
「ヒール!」
少し痛みが引いたのか、ちょっとだけ少女の顔が安らぐ。
しかし、足からの出血がまだ止まらない。
回復量に制限があるのだろうか。
「ヒール! ヒール! ヒール!」
追加で3回唱えると、ようやく出血が止まった。
母親にお礼を言われ、ちょっと嬉しい気持ちになる。
しかしそんな気持ちは、すぐ後に後悔へと変わった。
「……なんだ?」
急激な立ちくらみを感じた。
疲れだろうか、宿を取って、シャワーでも浴びて寝たい。
そう思い、ふと自分の体を見て驚愕した。
明らかに痩せている。
出ていた腹が減っ込み始め、触ってみると二重顎もすこしスッキリしている。
嬉しい。
嬉しい反面、こんな急激な痩せ方に不安を覚えた。
そして原因に思い当たる。
確か、食堂から出た時は体系はそこまで変わっていなかった。
しかし、今は目に見えて違う。
その間にあった出来事は一つ、魔法を使った事だ。
魔法を使うとカロリーを消費する。
消費しただけ痩せる。
なるほどとても便利だ。
さっき食事をしたばかりなのに、もうすでに空腹感を感じる。
……嫌な予感がした。
「やっぱり不味い……」
出店でフランクフルトのようなものを買った。
しかし美味しくない。
ジューシーなソーセージではなく、ビーフジャーキーに近かった。
しかもビーフジャーキーと違い、噛んでも噛んでも味がしない。
そもそもこの世界の料理は、美味しくないのかもしれない。
もしかしたら食材も美味しくないし、水まで美味しくない可能性が高い。
そんな世界で、カロリーを代償に魔法が使えても困る。
調味料も充実して無さそうだ。
もし自分がコックのように腕があったら、これは絶好の腕の見せ所だろう。
だが実際の自分はどうだ。
蕎麦を茹でても、鍋の外に出た蕎麦が燃えたり、茹で加減を間違えて柔らかかったり芯が残ってたりする。
餅を焼いても、何回かに一回は失敗をして、半焼けのまま食べている。
魚を貰った時は鱗を上手く取れず、骨の処理にも困り、少し食べて捨ててしまった。
カップラーメンを作る時でさえ、お湯の温度が低くてなんかこうイマイチになったりするのに。
カロリーこそが力であるこの世界。
でも料理がマズ過ぎて、量を食べる事が出来ない。
一体俺はこの後、どうなってしまうのだろうか……。
なんとなく設定を思いついた小説の冒頭だけを書いたものです
続きに関しては全く思いつかないので書かないです
「反ハーレムの歩む道 ~異性をフる程パワーアップ!?~」という連載をしています
そちらもよろしくお願いします