第八話 転生者?
第一章: 剣技大会
第八話
転生者?
ふと目が覚めると、知らない天井だった。
どれくらい寝ていたのだろうか。
上半身を起こし辺りを見渡すと控え室のような部屋で簡易ベッドに寝かされていた。
ガシガシと頭をかきながら、記憶を思い起こしていく。
ダルい体で会場を後にして控え室に向かい、控え室のドアノブに手を掛けた瞬間、緊張の糸が切れたのか、急に眠くなりそのまま意識を手放したのだった。
「ん? だったら何でここで寝てるんだ俺?」
ノックもなしにドアが開く音がして案内役が入ってきた。
「キースさん、目が覚めたのですね」
「ああ、少しボーとするが、それよりあんたが俺を運んでくれたのか?」
「はい、控え室の前を通ろうしたら倒れている方がいましたので、ここに運びました」
「そうか、ありがとう」
「俺はどれくらい寝てた?」
「そうですね、先程お目覚めになられたのであれば、半刻ほどでしょうか」
(そうか、俺は30分も気を失ってたのか。 これが外での戦いだったら確実に詰んでたな)
「あなたを運んだ後、少ししてザンギーニ伯爵家の方が見えて伝言されていきましたので、お伝えします」
「ザンギーニ伯爵家・・・?」
(カーラか? マイエンジェルからの神託かwww(嬉))
瞬時に覚醒し、だらしなく鼻の下を伸ばし、無い尻尾を千切れんばかりに振りながら、案内役によるマイエンジェルの神託を今か今かと待った。
案内役は”スッ”と軽く息を吸いーー
「3回戦進出おめでとうございます。 もっと早くに潰れるかと思いましたが、ゴキブリ並にしぶとい戦い感服いたしました。 次は流石に無理でしょうけど楽しみにしています(笑)」
「・・・・・・・・」
(・・・・・・・・オイ それお前の考え入ってるだろ!)
「ハハ、随分と毒の効いた伝言だな・・・ そうか、あのカーラがな、ハハハ」
俺のカーラ像(ナイスバディにシルクのキラキラしたシースルーを纏い、少し首を傾げながら甘えたように両手を前に伸ばし、大きな純白な羽を広げた、マイエンジェル)が音を立てて崩れていく。
「カーラ? いえ、言付けされていったのは、カーラ様お付きの方でしたよ」
頭の中で何かが切れた音がした。
(・・・そうか、なるほど。 なるほど、そういうことね・・・)
(あんの、ク・ソ・メ・ガ・ネがァァァァァァ!!)
(どこまでも人の恋路を邪魔しくさりよってえ! 邪悪な悪魔めがァァァァァァ!!)
今世でアトラクションのフリーフォールもかくやと言うほどの上げ下げを初めて経験した。
血がしたたり落ちるかのように拳や歯をギリギリと噛み締め、体からは嫉妬に塗れたドス黒く醜いオーラを無遠慮に撒き散らす。
「・・・・・」
案内役は自分が伝えた伝言に対する反応に苦笑するしかなかったようだ。
ーーーーーーーー
心を落ち着かせ、改めて案内役に礼を言い、控え室を出る。
その足で、少し気になったことがあったので、反対側の出場者控室に足を運ぶ。
軽く深呼吸した後、ドアをノックし控室に入る。
「失礼します」
控室には数人おり、ハゲは椅子に座って、うな垂れていた。
室内の明かりが魔道具のためか、ハゲの正面に来ても光撃は鳴りを潜め、ただテカっているだけだった。
どうやら魔法やスキルの類ではなかったようだ。
「お疲れさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「・・・・」
上げた顔は疲労感が滲み出ていた。
「日本を知ってるか?」
「天○飯を知っているか?」
「前田○次は知っているか?」
「捨丸と岩は元気か?」
「おふうと松風はどこだ?」
「?????」
後半は俺も何を言っているのかわからなかったが、つい勢いで出てしまった。
ハゲはキョトンとした顔で、頭を囲うようにハテナを飛ばしていた。
俺の質問に一言も発せず、反応も皆無。 これでハゲは転生者ではないことがわかった。
「邪魔したな」
「・・・・・」
控室を出て会場入り口に向かい、人集りにいる中心人物に声をかける。
「コレ交換してくれ」
玉を受け取り、ジッと玉を見た後ーー
「おお! また兄さんか! すげーな、おめでとう!」
玉と交換で2つに分けたズッシリ重い皮袋を受け取る。
(ん? これだけ??)
少々気になったが、中身も確認せずに懐に仕舞い、その場を離れる。
皮袋を開けて中身を数えると、一袋50枚ともう一袋50枚の計100枚の金貨だった。
「かー、あんなに苦戦したのにオッズが2倍かよ!」
初戦でひでぶを瞬殺した印象が強いかも知れないが、あのハゲの光撃で苦戦したことを考えると、2倍のオッズはガッカリしてしまう。
いつか、マイエンジェルとの王都デートで恥ずかしい思いをしないように、できるだけ金は持っておきたい。
(ようやくリア充の起爆剤を見つけたからな、何が何でも爆発させてみせる(炎))
会場を後にし、宿に向かって歩きながら今回の戦いを振り返る。
予想外の光撃に思いのほか苦戦した。
「・・・槍に魔法が乗った感じは無かったな」
あの光撃に加え、槍にエンチャントが付与されていたら負けていたかも知れない。
途中、カーラの地雷から鬼神の如く長続きしていたパワーが身体強化系の魔法かスキルだったかも知れない。
もともとの筋肉がさらに膨れ上がり、果てが見えない男優顔負けの絶倫男に化けたからな。
となると、あの身体強化系はスッポンやマムシ、オットセイもビックリの長続きなのか?
あのハゲを酒漬けにして飲んだら、超時空絶倫のスキルを入手でき、勃つの子も真っ青かもしれないな(ニヤ)
まあ、推測の域は出ないが、次も似たようなハゲが相手になったら、速攻で相撲手形を頭に付けてやるけどなw
これでハゲ対策は完ぺきである。