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五行の剣 ~再会は異世界で~  作者: 三ケ月 九音
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第七話 本選2回戦

第一章: 剣技大会


第七話

本選2回戦



 挑発することも無く始まってしまった。

 とりあえずバックステップでハゲから距離を取る。


  「風纏」


 剣に風属性のエンチャントを付与し攻撃態勢を整える。


 相変わらず相手を直視できず、常に太陽拳を喰らっているかのような感じだ。


 今更だが、相手の槍は朱槍で、前田○次が持っている槍を連想させる。

 (・・・ひょっとしてコイツも転生者か? 太陽拳といい朱槍といい妙に前世に共通しているものがあるが・・・)


  「ほら ほら ほら ほら どうした!」


 太陽拳を放ち、漢○を口ずさみながら、遠慮なく朱槍で突いてくる傾奇者ハゲ


 「くッそッ!」


 (こっちは伊達じゃあ(心眼なんて持って)ねえんだよ! 視線を上げたら撤退確実(即終了)じゃねえか!)


 何とか躱かわせているのは、ハゲの下半身と腕を見ているからだが、下半身の動きと腕の動きで突きなのか払いなのかは、ほぼ判別がつく。

 とにかくギアを上げながら反撃のチャンスを伺うしかない。



  「ハァハァハァハァハァハァハァハァ」



  (・・・やばいな、このままじゃジリ貧だ)


 体感時間だと20分程度と思うが、なかなか決定打が打てない。


 おそらく大会の進行者は、魔道具による時計があるのだろう。

 でなければ、1時間の枠を設けることができない。


 このままヒットアンドウェイを繰り返せば判定になる。

 そうなるとハゲの攻撃主体に分があり、守りに特化した俺は分が悪い。


 (なら、ここは一か八か・・)


 「キース様ああああ! 頑張ってくださーーーーーーい!!!!」


 (ん? この声は、まさか天使? マイエンジェル?)



 正面から額の血管がブチ切れたような、歯軋りのような音がする。



 (ん? 何の音?)



 「ギリッ!! 貴様はッ貴様はッッ! 我を・・・怒らせたあああああ!! ふんぬー!!!」



 どうやらマイエンジェルの声援はハゲの地雷を踏んだらしく、ハゲの腕や胸の筋肉が1.5倍(当社比)に膨れ上がった。

 ついでに口と目から血が出てるらしいが、決して俺が与えたダメージではない。


 ハゲのこれまでの甚振るような槍術の動きから一転、今度は鬼神のような暴力的な攻撃となり明らかに冷静さを失っていた。


 「くっ これがチャンスとなるか?」


 身体強化で上げたギアのまま更に神経を集中しハゲの腕や下半身を見ながら先読みをして攻撃を避けていく。

 ギリギリの攻防となり剣に纏わせた風量を上げてハゲの朱槍の軌道をずらしていく。

 それでもハゲはお構いなしに力技で攻撃してくるため、腕や足、顔に少しずつ切り傷が増えていく。



  (おかしい・・・)


 ハゲの暴力的な攻撃が始まってから体感時間で5分程続いているが、一向に攻撃のパワー、スピード、輝きの衰えが見えない。・・・頭の輝きはいまさらか。


 「ええぃ! この世界のハゲはバケモノか!」


 思わず、赤好きなメット兄さんのようなセリフが出てしまった。

 バカなことを口走った瞬間、左腕に深傷を負ってしまった。


 「チッ!」


 「グハハハハハハ! オラオラオラオラアアアアアア!!!」



 血飛沫が舞う中ハゲの攻撃を避け続ける中、ふと輝きに陰りが差した気がした。


  (? 目が慣れてきたのか? それとも・・・)



 攻撃を避け続ける中、少し上半身に視線を向けると頭部に血が付いていた。


 !!!


 (これか! 陰りの原因は!)


 俺の左腕の血がハゲの頭に付着したおかげで、忌々しい輝きが鈍ったのである。


 (ククク・・・ てめぇの忌々しい輝きを血に染めてやる!)


 もう悪のセリフそのものである。



 左腕から滴る血をできる限り左手に集め、迫るハゲの攻撃を紙一重で潜り抜け、目を細めながら頭部と思わしき光源に突っ込む。



  ペタっ



 (ヨシッ、手応えあり!)


 左手でハゲ頭に触れたあと、すぐさまバックステップで距離を取り、そーと視線を上方へと向ける。



 ーー見える・・・ 見えるぞ!!!


 ーー回りの風景が!

 ーーハゲの上半身が!

 ーーハゲのド頭が! ツラがぁ!



 「よっしゃー!!」



 勝負がついた訳ではないのに思わず剣を上げて叫んでしまった。

 それほどまでに、この光撃は卑怯で凶力、陰湿で忌々しい攻撃だった。


 ハゲから光を奪った

 それだけで頑張れる! それだけで勝てる! それだけで確信が持てる!


 「キャー! キース様あああ!!」


 俺の活力源となるマイエンジェルの声援(潤滑油)が、ハゲの中の豪炎に容赦ない油として注がれる。


 「おのれええええ それが何だというのだ! そんなことで我は止まらんぞ 死ねえええええ!」


 ハゲが頭に手形を付けて叫びながら朱槍の突き攻撃を再開する。

 しかし、光撃がないハゲは最早ハゲに非ず。

 おまけに傾奇者でもない。

 ただの筋肉バカの脳筋クソ野郎である。


 ハゲ(便宜上ハゲで通す)の突き攻撃に合わせ突進する。

 突きを紙一重で躱し、すれ違い様に首に一閃を入れる。


 「ぐおっ」


 「チッ浅いか」


 (やはり、ハゲの筋肉は伊達政宗・・ゲフン、伊達じゃなくタイヤを叩いたような感触だ)


 「ならば!」


 着地する前に風魔法を操り、体前面にスラスターを設置する。

 姿勢を崩さないようにスラスターの噴射量を調整しながら大きく息を吸う。

 着地の反動と同時にスラスターを噴射し、振り向きざま急所めがけて剣を走らせる。


 「ぐああ!!!」


 ハゲが苦悶の表情を浮かべる。

 そんなのお構い無しに、顔、首、脇腹、金的、膝に的を絞り、ハゲの攻撃を薄皮一枚で躱しながら、思考するよりも速く、スラスターの移動と噴射を繰り返し、ただひたすらに反射速度を上げて剣を走らせる。


 「ぐううう・・・・・ く、くそ・・・」


 体感時間にして約3分くらいだろうか



 大木が倒れたような音がし、ハゲは白目を剥き両膝をついてうつ伏せに倒れ込んだ。

 ハゲの全身からは夥しい血を流れ、ピクリとも動かない。


 「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」


 身体強化も魔法も全て切れ、息も絶え絶えに、剣を石畳に突き刺し、剣にもたれ掛かりながら片膝をつく。


 会場横に待機していた治癒部隊の2人が急いでハゲの下に向かった。顔を覗き込み両手を大きく交差し続行不能を示した。



 「第2会場の勝者は、キーーース!」


 大会の司会から大きな声でキースの勝ち名乗りを上げ、大歓声が会場を包むのだった。



 大歓声の中、ハゲはどうやら2人がかりで治癒されているようだ。


 俺の下には1人だが、ハイヒールを掛けてくれ、ポーションとMPポーションをくれた。

 その場で2本飲み干し少し回復したおかげで、ようやく状況が飲み込め始めた。


 「ハアハアハア、な、何とか城門突破は防げたか・・・」


 勝負には勝ったが素直には喜べない。

 出来れば奥の手は出したくなかった。


 出せば対策される。

 使える幅が狭まるし使い所が限られる。

 大会期間が短くとも、ここまで勝ち上がってくるヤツらは対策できる力を持っているだろう。


 しかも俺のは諸刃の剣。

 稼動時間が短く、その後はまともに動けたもんじゃない。


 重要なのは奥の手に至るまでのプロセス。

 そのプロセスの幅を広げる剣術を身に付けないと先がない。


  「あーあ、また考えないとなあ」


 空を見上げると、どこまでも澄んだ青空で日差しが眩しい。



 スキンヘッドにして磨いてみるかな。

 光撃は凶力だったし。。。



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