第四話 本選1回戦
第一章:剣技大会
第四話
本選1回戦
ひでぶがモーニングスターのトゲ鉄球をブン回しながらエンチャントを付与した。
「火纏!」
トゲ鉄球が火を纏い、ゴオゥと音と熱を伴って顔面の位置に飛んできた。
そのまま素直に受けるわけもなく、体の位置を変え、難なく躱しながら、こちらも剣にエンチャントする。
「風纏」
体の位置を変えた勢いのまま、反撃としてひでぶの首に一閃。
ギィンと高い金属音が響き、バックステップで距離を置く。
ひでぶは、モーニングスターの持ち手である柄で斬撃を防ぎ、ニヤリと口端をつり上げる。
「ククッ、なんかやったかクソガキ」
なるほど、ひでぶはチビであるため、柄を使えば多くの急所をガードしやすい。
「オラ! 脳味噌ブチまけて死にやがれ!」
トゲ鉄球は、100km/h近い速さで直線的な攻撃をしたかと思えば、ぐるんと遠心力を乗せて猛スピードで迫ってくる。
何気に打ち返してストレス解消したい衝動に駆られるが、デッドボールコースだし俺の剣では無理。
必然的に避けるしか選択肢は無く、忙しく体の位置を変えて、ひでぶの様子を伺う。
「・・・・ふーん、チビデブの体格を生かしてトゲ鉄球の砲台となってるわけか」
ひでぶを中心とした火の竜巻のような攻撃が第3会場を埋め尽くす。
正に攻防一体といった感じの攻撃を体術で避けつつ、こちらもギアを上げることにした。
「腐っても本選出場者か・・・ ならッ」
身体強化を発動し、トゲ鉄球が直線的に顔面に迫る刹那、ひでぶの懐に入り込む。
と同時に足場が窪むほどの急制動を掛け、そのエネルギーを利用して下段から手首めがけて上段に剣を走らせる。
急制動と上段に斬り上げた反動を利用してバックステップで距離を取る。
モーニングスターは、火を纏ったままの勢いで会場の外に落下し、隕石の如く地響きと猛烈な土煙を上げた。
一瞬、コロシアム内に静寂が訪れ
「おわっ!? なんだぁ?」
ひでぶは、窪んだ足場に足を取られよろめき、土煙が上がったことに、何が起きたのか理解できていない。
「お大事にw」
そう告げ会場外に向かって歩き出すと、ひでぶの両手首からおびただしい血が噴きあがり、両膝をつき、無い手を見ながら叫ぶ。
「なんじゃこりゃーーーー!!! ワッ、ワシの、、ワシの手がーーーー!!!!」
会場横に待機していた治癒部隊の一人が、急いでモーニングスターを握っている手を回収しそのまま、叫びを上げているひでぶの腕にあてがい、ハイヒールの魔法を浴びせていた。
「第3会場の勝者は、キーーーッス!」
大会の司会は、第3会場のの勝者であるキースの勝ち名乗りを上げた。
同時に、怒号のような地響きのような歓声に、片手をヒラヒラと振り会場を後にした。
頼むからキッスのような言い方やめて。
彼女いない歴=累計年齢40歳の俺には酷だから。。。