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花の唄が聴こえる  作者: FRIDAY
序:ひとりと一匹は旅に出た
8/63

8 「私、旅に出ます」

 のぼせたハルカは、ソファで伸びていた。額から目にかけて濡れタオルを置いている。

「……大丈夫? ハルカちゃん」

「はい……大丈夫です。すみません」

 うわ、とわずかにタオルをずらして、ハルカはエリシアへ視線を向けた。

「御免なさい、仕事の邪魔してしまって……」

「いいのよ。そんなに忙しいこともないし」

「ハルカはねえ、ここに来るまでに相当やられてたからねえ。ほんと、ガクブルだったんだよ」

「……猫」

「え、あ、ちょ、失言、フォウッ!!」

 猫は派手に宙を舞ったが、そこはエリシアが優しく受け止めた。

「そんなになってまで、本当に、何かあったの?」

「それは……その」

 まだ、ハルカは逡巡している。それを言う心づもりで来たのに、最後の一歩を踏み出せないようだった。だから、猫は、

「ハルカ。ハルカが言わないんならボクが言っちゃうけど、いいの?」

「…………」

「自分で言わなきゃ。そういうことは」

「……わかった。わかってるわ」

 声は弱々しいままだ。だがハルカは、ゆっくりと身を起こした。そして、心配そうにふたりを見やるエリシアに、ハルカは言う。

「その……エリシア館長」

「うん、なに?」

「私……その、決めたんです」

「うん」

 まだ視線が虚空を彷徨う。口許が震えている。けれど、大きく深呼吸をひとつおくと、顔を上げた。

 エリシアの顔を、正面から見つめた。

「――私、旅に出ます」

 


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