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『救国の乙女』になると預言されて、早二十年経ちました。  作者: 池中織奈
クラレンス・ロードが幸せをつかむまで
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3/1 4話目


「クラレンス様だ」

「……私たちはクラレンス様に」

「……『救国の乙女』様が」




 王城で騎士としての務めをこなしている。




 周りからの視線は煩わしい。申し訳なかったといいながら、俺に近づこうとする女も結構いる。



 そう言う相手は、ジャンナの事を侮っている者が多い。ジャンナのことを侮っていて、自分の方が――なんておもっている愚かな連中だ。ジャンナのよさを告げて、思いっきり脅しつけたら近づかなくなったが。





 腫物を扱うような態度をしてくる連中もいるが、正直そのあたりもどうでもいい。

 ジャンナが望むから俺は此処にいるだけで、ジャンナ以外の者からどう思われていようともどうでもいい。





 ジャンナがどれだけの危険な目にあっても守れるように、もっと強くならなければとは思っている。





 ちなみに俺主導でジャンナのすばらしさを広める活動を進めている。その結果、ジャンナの事が『救国の女神』として広めることが出来て俺は満足している。

 それに今はジャンナと結婚して王都で暮らして居て、騎士として働いている時以外はジャンナとずっと過ごせて幸せだ。




 エレファーも最初は色々言っていたけれど俺の様子を見て、俺が本当にジャンナを愛していることが分かったからか「おめでとう」と口にしていた。そしてジャンナが王都で過ごしやすいように動いていてくれている。

 その点だけは感謝している。




 俺がジャンナに「俺の女神」と笑いかけると、ジャンナは恥ずかしそうにしながら嬉しそうに微笑んでくれる。その笑みが本当に愛おしかった。

 俺とジャンナに対する本も出版されて、俺はジャンナのすばらしさが広まる事、そしてジャンナが俺のものだということが広まることが嬉しかった。





 俺は許さなくてもいいのではないかと思うが、ジャンナは心優しくて、『救国の乙女』として王城にいた頃親しくしていた人たちとまた仲良くしている。その心の広さが流石ジャンナだと思う。






 騎士としての仕事が終われば、周りにどんなに誘われてもジャンナの元へ真っ直ぐに帰る。




 歩いていても話しかけられたりするが、ほぼ返事はしない。

 そして俺とジャンナの新居へと帰った。





「ジャンナ!!」




 帰宅してジャンナの名を呼ぶ。ジャンナは俺の声に気づいてこちらにやってきた。




「クロ、おかえり」

「ただいま、ジャンナ」





 おかえりとジャンナが微笑んでくれるだけで、どうしようもないほどに幸せだった。





 ジャンナの笑みを見ているだけで俺は、穏やかな気持ちになれる。ジャンナがこうして俺の側で笑ってくれているだけで温かい気持ちがわいてくる。





 そういえばジャンナを金食い虫にしたてあげ、そのお金を横領していた連中はしっかり処罰してもらった。俺が重い刑を望んだから、陛下がその通りにしてくれた。もう二度と俺とジャンナの前に現れることはないだろう。

 本当にこれだけ優しくて、美しい心を持つジャンナをそういう風に思わせただけでも許せない。





 『救国の女神』として有名になったジャンナは少し照れくさそうにしながらも、幸せそうに微笑んでいる。

 その笑みを見つめられるだけで嬉しい。






「クロ、明日は何をしようか?」

「ジャンナと一緒なら何でもいい」





 ただジャンナと一緒に何気ない会話をすることが楽しくて、幸せだった。

 俺はこれからもジャンナの隣で、ジャンナの事を守り続ける。




 ――ジャンナだけが傍にいれば俺はそれでいい。






 周りがどれだけ変わっていったとしても、俺がジャンナの傍にいる。

 俺はこれからもずっと、ジャンナの側で生きていくのだ。























 あるところに一人の青年がいました。

 その青年は『魔王』を倒した英雄で、誰よりも有名な青年でした。







 『魔王』を倒した青年は、婚約者と結婚し、幸せになりました。

 と、本来ならめでたしめでたしで終わるはずでした。





 だけど青年は呪術をかけられてしまいました。

 ある時、青年の世界はガラリと変わってしまったのです。





 誰もが英雄であった青年のことを忘れ、青年を『魔王』の側近と思い込みました。

 『魔王』の側近とされた青年は、婚約者や仲間であった人々に捕まりました。

 逃げ出した先で、青年はまた絶望します。






 その絶望の最中、青年は一人の女性に会いました。





 『魔王』の側近だと青年の事を思っているのにも関わらず、女性は青年に優しかったのです。

 疑っていた心も、女性と過ごし、女性の過去を知り、青年はその心の美しさに惹かれていきます。






 心の傷が癒された青年は、他でもない愛しい女性のために旅に出ました。

 そして元凶を倒し、青年は英雄として女性の元へ舞い戻りました。




 青年を求める者は沢山います。けれども青年は女性だけを求めます。





「彼女は俺の女神だ」




 青年はそう言って笑いました。






 『英雄騎士』である青年は、『救国の女神』に救われました。

 そして『英雄騎士』は『救国の女神』の側で、『救国の女神』を守り続けるのです。

 『英雄騎士』と『救国の女神』は幸せに暮らしました。






 めでたし、めでたし。



 ―完―

というわけで時間がかかりましたが、クロ視点を書き終えました。

これで完結になります。

クロ視点も書いていて楽しかったです。書いていて難しかったですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。



結局の所、偏見などがあればどうしてもそういう目で見てしまうものだと思います。

ジャンナはそういう悪い面を知った上で自分の目で見たものを信じる女性です。だからこそクロはジャンナに救われたのです。

その真っ直ぐさがあったからクロは、こうして幸せになれたのです。


では少しでも楽しんでもらえて感想などもらえたら嬉しいです。



2021年3月2日 池中織奈

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― 新着の感想 ―
[良い点] クロ視点の完結おめでとうございます! クロさん、ジャンナに出会えてホント良かったね…。
[良い点] 本編から読ませていただきました。クロ視点も完結まで読めてよかったです。更新されるのを今か今かと待つ、毎朝の楽しみでした。ありがとうございました。
[良い点] ジャイナ編が終わった時に満点評価付けたけど、もう一度満点評価を付けたい位にクロ編も面白かったです!
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